第490話 魔力0の大賢者、バトルロイヤルに挑む
「お前ら、やると決めたんだからさっさと五人決めろよ」
イロリ先生が面倒くさそうに言いながらも、眼差しからは真剣さも感じられる。
バトルロイヤル方式になったとはいえ、出場できるのは五人――その選抜は重要だ。
「マゼルは決まりね。だけど私はパス。正直、足を引っ張るだけになりそうだし」
「マゼルに関しては絶対だな」
「ライバルとしては癪だが、マゼルがいないと話にならないな」
メドーサの発言にアズールとガロンが頷く。
うん、もう当然みたいな空気だ。まあ、ギャノンも僕のことを狙ってるみたいだし、出ないわけにはいかないよね。
「僕も本格的な戦闘では力になれないと思う。それならメイリアの方が最適だ」
ドクトルが冷静に言った。
確かにメイリアの分析力と戦闘能力があれば、三年生相手でも心強い。
「俺は出るぞ。あのギャノンって奴、マゼルしか見てねぇのが気に入らねぇ」
「俺も出たい。上級生相手に、力を試してみたいんだ」
アズールとガロンが名乗りを上げる。二人とも頼もしい。誰も異論はなかった。
「リミットはどうする?」
「出てみたいけど、一発しか魔法を撃てないしね~。だから私は……シアンちゃんがいいと思うな」
リミットが隣のシアンの肩に手を置く。けれど、シアンは目を伏せて首を横に振った。
「ごめんなさい……。私、役に立てそうにない――」
小さな声。でもはっきりとした拒絶。
リミットは一瞬だけ驚いたけど、すぐに笑って首を振った。
「ううん、無理にとは言わないよ。得意不得意はあるもんね。ごめんね、無茶言っちゃって」
優しくそう言えるのが、リミットらしい。
気まずい空気を作らないのも、Zクラスらしいなと思った。
「そうなると、あと一人は――」
アズールの視線が自然とアニマに向かう。
その隣では、シグルとメーテルがじっとこちらを見ていた。
「なぁウィンガル先生。アニマの飼ってるシグルとメーテルも“あり”だよな?」
「使役しているなら、魔法の一種として認められるだろう」
先生の言葉に、ガロンがうなずいてアニマに声をかける。
「アニマ、いけるか?」
「う、うん! 私もZクラスの一員だもん! 頑張るよ!」
「ガウガウ!」
「ピィ~!」
アニマの決意に、シグルとメーテルが鳴き声で応える。
これで五人が決まった。マゼル、アズール、ガロン、メイリア、アニマ――Zクラスの主力だ。
「よし行くぜ、お前ら! Zクラスの力を見せつけてやる!」
「なんであんたが仕切ってんのよ……」
拳を突き上げて叫ぶアズールに、メドーサがジト目を向ける。
でも、こうして盛り上げてくれるのも悪くない。空気が一気に締まった。
僕たちは互いに頷き合い、三年生の待つリングへ向かった。
「待ちわびたぜ。この時をな」
ギャノンを中心に、五人の三年生が横一列に並んでいた。
眼鏡を掛けた白髪の男子。金髪の女子。無表情な茶髪の男子。
そして一際体格のいい、坊主頭の男。全員一筋縄ではいかなそうだ。
「まったく、急にルールを変えるなんて……何を考えているんだ」
ウィンガル先生がため息をつきつつも、両手を広げて宣言した。
「これよりバトルロイヤル方式での試合を始める! 三年Dクラス、一年Zクラス――どちらかが残り続けた方の勝利とする! 試合開始!」
その合図と同時に、空気が一気に張り詰めた。
最初に動いたのは――メイリアだ。
「おいおい、一人で全部片付ける気じゃないだろうな!」
「否定はできませんとお答えします」
アズールのツッコミにも表情を崩さず、メイリアは一直線に前進した。
その姿勢はまるで歴戦の騎士のように凛々しく速い。
「メイリア――」
「え?」
だけど、次の瞬間、メイリアの動きがぴたりと止まる。
その前に立っていたのは――ゲシュタル教授。
あまりにも突拍子もない光景に、僕たちは息を呑んだ。




