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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第一章 幼年編

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第48話 魔力0の大賢者、横取りされかける

前回のあらすじ

マゼルが鼻をやられた。


 1匹目のゴールデンスカラベを見事捕まえた僕たちはそのまま2匹目も探すことにした。最初のは雄だったから出来れば雌がいいかな。


 そう思っていたら雌を発見した。ゴロゴロと玉を転がしながら進んでる。今度は僕が捕まえることにした。


 地面を足で強めに踏むと、地面が凹んでその中に見事ゴールデンスカラベが嵌った。


「やりましたねお兄様」

「……これは伝説の大地魔法、やはり大賢者は凄い」

「いやぁ~やっぱ兄貴は捕まえ方もダイナミックですね」


 物理だけどね。やり方は1匹目にやった局地的に震わせるのを強めにやっただけだよ。大地魔法扱いはちょっと大げさだよね。


 さて、捕まえるとしようかな。1匹目と同じで時空に穴を開けて一旦そこに入ってもらう形にはなると思うけど。


「よっしゃ~ラッキーラッキー」

「まさかゴールデンスカラベがこんな簡単に手に入るとはな」


 すると突如脇から出てきた二人組の男が僕があけた穴に近づいて妙なことを言い出した。


「うん? なんだ生きてるのか?」

「チッ、面倒だな。まぁいいやトドメさすぞ」

「ちょっと待って。それは僕が捕まえたゴールデンスカラベだよ」


 何か不穏なことを言い出したよ。折角生け捕りにしているのに、殺されたんじゃたまったものじゃない。


「あん? なんだお前ら?」

「なんだはこっちのセリフだ! それは兄貴が捕まえたんだよ。勝手なことしてるんじゃねぇ!」

「は? 兄貴? そのガキが? はは、何いってんだこいつ」

「頭イカれてんのか? 大体これをお前らが捕ったという証拠があるのかよ?」

「お兄様の偉業は、私がしっかりこの目で見てました」

「勿論俺もだ。お前らなんざ何もしてないだろうが。ちゃっかり横取りしようなんざふてぇ連中だ」

「おいおい、酷い言い草だな」

「大体この落とし穴は俺たちが掘っておいたもんだ。お前らこそたまたま落ちたゴールデンスカラベをちゃっかり手に入れようとした口だろ?」


 なんて奴らだ。自分たちの方が横取りしようとしている癖に、僕たちが悪いみたいに転換させるなんて。


「……いい加減にしろ。マゼルが魔法でそのゴールデンスカラベを捕まえたところならこの私も見ている」


 すると、アイラが一歩前に出て二人組に断言してくれた。これほど説得力のある証人もいないなと僕は思う。


「だから、ガキが何を言おうが……」

「おい、ちょっと待て。何かこのガキ、見覚えがあるぞ?」

「……もう一度いう。アイラ・ナムライの名に誓って、マゼルの行為に間違いはない。マゼルの魔法でそのゴールデンスカラベは捕まえられた。お前たちはそれを横から出てきて卑怯にも自分たちの物にしようとした。恥を知れ」

「な、ナムライだって!?」

「お、思い出した! このガキ、領主の娘だぜ!」

「マジかよ……」


 途端に二人組の男が狼狽えだした。おそらくは冒険者なんだろうけど、正直冒険者としてはあるまじき行為だし、それは本人たちも理解しているのだろう。


「何か今すごくアイラさんが頼もしく思えました」

「うん、ありがとうアイラ。でも何かもうしわけなかったね。名前を出させるような事になって」

「……問題ない。それにマゼルの偉業を汚そうとするものは誰だろうと許さない」


 そう言ってもらえるのは光栄だけど、偉業はちょっと大げさな気も……。


「おら、どうだ? 少しは自分たちがどれだけ身の程知らずか思い知ったか? 大体人様のものを掠め取ろうなんざ冒険者の風上にもおけない行為だ! そうでしょう兄貴?」

「え? あ、うん。そうだね」


 ここぞとばかりに強気に出るムスタッシュ。何か髭の具合といい生き生きしているようにも見えるよ。


「お、おい、不味いぞ、流石に領主の娘にバレるのは……どうするよ?」

「どうする? 決まってる。やっちまうしかねぇ!」


 ……え? いやいや何言ってるの? 確かにアイラには見られたけど、だからって武器まで抜き出してさ。


「おじさん達何しようとしているか判ってる? 辺境伯のご息女の前でそんなの抜いたら、もう冗談でしたじゃ済まないんだよ?」

「だからだよ。そんなのに見られたら俺たちはもう冒険者じゃいられねぇ」

「だったらここで証拠隠滅しておかないとな!」


 いや、証拠隠滅って、全然隠滅じゃないし、ただの罪の上塗りじゃないの?


「所詮はガキ3人と大した事のなさそうな男が一人だ」

「運が悪かったな。ちゃんとした護衛を付けずに出歩いている嬢ちゃんが悪いんだぜ」

「……お前らの目は節穴? ちゃんとしたどころじゃない。今お前たちの目の前にいるのは下手な護衛よりずっと頼りになる」

「は? そこの髭以外特徴のなさそうな男がか?」

「は、ムカつく連中だが、まぁ俺が大したことないかどうかはともかく、それは俺のことじゃねぇしお前らが詰んでいるのは確かだぜ」

「何いってんだコイツ?」

「言っておくが俺らはこのあたりじゃちょっとは名のしれた冒険者なんだぜ?」

 

 名のしれた冒険者のやることじゃないよね、これ。正直行動的にはそこらのチンピラレベルだよ。


「正直、何を言われてもお兄様を前にしては負け犬の遠吠えにしか感じられません」

「なんだと! ガキだからっておとなしくしてやってればつけ上がりやがって!」


 うん、全然おとなしくしてないよね。それどころか武器まで取り出して大人げないどころの話じゃないよ。


「全く子ども相手に武器を振りかざすなんざ冒険者の風上にもおけない連中ですぜ」

「あ、うん」

「……お前たちは、マゼルの名前に聞き覚えはないのか?」


 アイラが二人組に尋ねた。すると、片方の男が何かを思い出すように視線を上げて。


「マゼルと言えば、伝説とされる大賢者のことだろう?」

「あぁ、そうだな。そういえば、最近大賢者の再来と言われてる奴が現れて、盗賊をやっつけたりトンネルを一晩で掘ったりとんでもない真似してるって話だったな」

「しかも、それがまだ小さなガキだって言うんだから信じられない話だぜ」

「そうそう、マゼルって名前で、まだ、まだ、え~と、ガキなのに、凄い魔法を使い、こなす?」


 二人組の視線が僕に向けられた。


「……そういえばお前の名は?」

「マゼルだよ」

「「……え?」」

「はい」

――ドンッ!

「「ぎ、ギヤァアアァアアアアア」」

 

 僕がその場で地面を踏むと、ゴールデンスカラベを捕まえたときと同じ要領で穴が出来上がり、二人組が悲鳴を残して落ちていった。


 ちょっと深めにしたからか、覗き込んだら完全に気絶してたよ。


「……マゼルならやってくれると信じていた」

「お兄様相手に武器を抜くなんて恐れ多いにも程があります」

「ま、兄貴に喧嘩を売った時点で奴らの運命なんて決まってたようなもんだよな」

 

 う~んでもこの程度で気を失う程度なら皆も楽に倒せた気もするけどね。

 さて、妙な邪魔は入ったけど、ゴールデンスカラベを時空の穴に一旦入れて、ついでにこの二人組も入れた後、街に戻り冒険者ギルドへ報告ついでに二人組を突き出した。


「くせぇ! くせぇよくせぇよ!」

「鼻がまがる~~~~!」


 うん、ゴールデンスカラベと一緒にしてたわけだしそれは仕方ないよね。勿論身動き取れないように、とりあえず適当な関節を外しておいたから、おとなしく臭いを嗅いでる他なかったんだろうけど。


「噂には聞いていたが、ゴールデンスカラベを生け捕りにし、更に不届き者とは言え、それなりに腕の立つ冒険者をあっさり返り討ちにしてしまうとは……流石大賢者様だ」


 何かわざわざマスターが出てきて感謝されてしまったよ。ちなみにこの2人は既に一度問題を起こしていたようで後一回何か問題を起こしたら冒険者の資格を剥奪するところだったとか。名のしれたって問題を起こしてって意味だったんだ。


 それであんな凶行に走ったんだね。でも流石にアイラを手に掛けようとしたことは洒落になってないから、冒険者の資格剥奪どころか罪人として裁かれることになるようだ。


 その後、一応生け捕りでも討伐報酬は出るという話になったけど、僕たちは冒険者じゃないからムスタッシュが受け取ることになった。彼も一役買ってくれてるし、本当は素材目的で来てたのに何もないのはかわいそうだからね。

 

 生け捕りにしたゴールデンスカラベは領内でまた放すような真似をしない限り自由と言われたから予定通りローラン領まで連れ帰って、父様に事情を話したんだけど。


「素晴らしいアイディアだ! やはりマゼルは大賢者。魔法だけではなく、内政にも長けるとは!」

「いや、内政なんてそんな大げさなものじゃないよ~」

 

 米作りに最適と思われる肥料とその作成に役立つ魔物を捕まえてきただけだし、ちょっと喜びすぎだと思うよ。


 とにかく僕はそのまま西の森へ向かい、ゴールデンスカラベを放してあげた。この辺りの魔物でゴールデンスカラベの天敵になるようなのはいないけど、栄養豊富な魔物や動物が多いから肥料に役立つ玉を作るのには最適だと思う。


 ゴールデンスカラベは玉を作る時に魔力の込められた粘液を利用する。これが組み合わさることで畑の肥料に最適な玉が出来上がるってわけだ。


 しかも番にしたから、ある程度経てば子どもも生まれる。そうすれば今後も畑の良質な肥料は保たれるってわけ。


「う~ん、流石兄貴。まさかゴールデンスカラベの糞にこんな使いみちがあるなんて。いやぁ~糞も馬鹿にできないもんでさぁ」


 うん、わりと僕はそのあたりレディーの前だし表現に気をつけていたつもりなんだけど、ムスタッシュは全くお構い無しで連呼してるね。


 おかげで、アイラとラーサのムスタッシュへの視線が恐ろしく冷たいよ。


 こうして無事肥料の問題は解決した。アイラのおかげでもあるし、その夜は自慢の米と料理でおもてなしをさせてもらったよ。


 アイラも喜んでくれてよかった。さて、あとはこのまま順調にイナ麦が育ってくれればいいんだけどね。

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