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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第479話 魔力0の大賢者、それでも信じたい

 イロリ先生が僕たちを裏切るような真似をしたらどうするか――


 その問いを投げかけたフィン先輩の言葉に、場の空気が一瞬で張り詰めた。


 誰もすぐには口を開けない。


 冗談にしては刺が強い。だけど本気なのかどうかも分からない。

 僕を含めて皆、視線を交わしながら答えを探していた。


 ――これは試されている。そんな感覚だけは確かにあった。


 真意は分からない。それでもハッキリしているのは――


「僕は……それでも先生を信じたい」


 沈黙を破ったのは自分自身の声だった。

 フィン先輩の眉がわずかに揺れる。


「信じる? 裏切られてもかい?」

「その時は、本当に先生が望んだことなのか――まずそこを考えます」

「随分と甘い考えだね」

「そうかもしれません。でも、まだ付き合いは長いとは言えなくても……僕はイロリ先生がそんな真似をする人だとは思えません。だから裏切りだと決めつける前に、その理由を知るために動こうと思います」


 言葉にすると、自分でも意外なほど迷いはなかった。

 僕の答えを聞いたフィン先輩の眉間には、深い皺が刻まれていった。


「てかよぉ、あの先生にそんな器用な真似できるわけねぇだろ」


 アズールが肩を竦めながら割り込む。その気楽な調子に、場の重さが少し和らぐ。


「確かにね。裏切りって裏と表があるってことでしょ?」

「うむ。だがあの先生は、普段から本音を隠そうともしない。裏の顔なんて似合わんだろう」


 メドーサとガロンが相次いで頷く。


「とても裏の顔があるようには見えないよねぇ」

「裏切るなんて真似、きっと精神的にお腹減りそうだし、先生は絶対やらないと思うなぁ」


 ドクトルとリミットの言葉に、思わず苦笑する。


「わ、私も! イロリ先生が裏切るなんて絶対ないと思います!」

「全くだ! だったらよ、今から本人に直撃して確かめようぜ!」

「皆少し落ち着く。この話はあくまで例え話なんだから」


 アニマが真剣に声を上げ、モブマンは今にも飛び出して行きそうな勢いだったけど、アイラが宥めてくれた。


「確かにそうですね。ただ、私も……あのイロリ先生に限っては心配いらないと思います」

「教師が生徒を裏切るなんてとんでもない話だ。それでももし本当に裏切ったなら――切る!」


 クイスの物騒な一言に、イスナが目を丸くする。けれど、それも仲間を想う真剣さの裏返しなのだろう。


「そうか……ハハッ、ごめんね。変な質問をして。少し意地が悪かったかな?」


 フィン先輩はそう言って、朗らかな笑みを浮かべた。

 さっきの鋭い眼差しとの落差に、僕は戸惑いを覚える。


「あの、フィン先輩。もしかしてイロリ先生と何か――」

「おっと。そういえば大事な用事を思い出したよ。飛び入りなのに招いてくれてありがとう。料理もとても美味しかった。じゃあ、そろそろ失礼するよ」


 僕の問いかけが終わる前に、フィン先輩は軽く手を振り、去ってしまった。


「行っちゃいましたねぇ」

「え? 追加でケーキを用意したのに……帰っちゃったの?」


 眼鏡を押し上げながら呟くネガメ。ハニーが皿を抱えて出てきたけど、残念そうに首を傾げていた。


「それなら、私が追加分を――」

「リミット、涎が垂れてるわよ」


 喜色満面のリミットに、メドーサが目を細める。


「……先程の“フィン”という先輩について過去の記録を調べましたが、卒業生の名簿に該当者はいませんでしたと報告します」

「は? おいおい、じゃああの先輩、一体何者だったんだよ」

「そんなこと……ありえるんですか?」

「ちゅ~?」


 唐突なメイリアの発言に、僕たちは顔を見合わせた。

 卒業生の中にいなかったとしたら――あの“先輩”は一体……?






◆◇◆


「戻りましたか」

「あぁ」

「それで、どうでした?」

「どうもこうもない。甘っちょろい連中だったさ。特にあのマゼルって奴がな」

「そうですか……ですが貴方が短気を起こさなくて何よりです。ここで暴れられたら計画が台無しですから」

「分かってる。俺だって、ここでやっても意味がないことぐらい理解してる」

「フフフ……期待してますよ、ファイン(・・・・)

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