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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第475話 より黒く染まる闇

side ファイン


「き、貴様……自分が何をしているのか分かっているのか!」

「分かってるさ。燃やしてるんだよ。黒く……もっと黒くな」


 目の前で司教を守ろうと立ちはだかった神官どもは、俺の影炎に包まれ、次々と呻き声をあげて地に転がった。

 炎は皮膚を焦がし、骨に染み込むように広がっていく。焦げた肉の臭いが鼻を突き、悲鳴と焼ける音が混じり合う。実に耳障りで、心地良い。


「どういうつもりだ! 何故こんな真似を……教会に恨みでもあるというのか!」

「教会? ……まぁ糞だと思ってるが、俺が恨んでるのはあんただよ」

「わ、私に恨み……だと?」

「そうだ。この顔を見て“覚えがない”なんて言わせないぜ」


 俺はゆっくりと、目深に被っていたフードを捲った。

 司教の顔色が見る見る青ざめていく。


「お、お前は……まさか、あの時の――」

「覚えていたか。……ああ、俺も妹も(・・)、テメェには“世話”になったからな」


 吐き捨てるように言い、右手に黒い炎を灯す。その炎はまるで俺の憎悪そのものだ。


「待て! 話せば分かる! あの時は……私も仕方なく!」

「仕方なく……? あの野郎(・・・・)の薬を認めたってのか? そのせいで、俺たち家族がどうなったか――お前の証言で、俺に“家族殺し”の罪を被せられた俺の気持ちが分かるか?」


 司教の瞳が揺れる。その反応が、むしろ俺の怒りを煽った。


「わ、悪かったと思っている! だが聞いてくれ! 仕方なかったんだ! 私はあの男……ギャノンに弱みを握られていた! だから従うしかなかった! 悪いのは全てあの男だ!」

「……ハハッ、ア~ハッハッハッハッ!」


 俺は額を押さえ、笑いながら俯いた。

 ああ、そうだろうな……そういう言い訳しかできないだろうさ。自分の保身の為ならなりふり構わないってか。本当にお前は、あの時から何も変わってねぇクズだ。


「は、はは……そうだ、分かってくれたか? そうだ。必要なら全て話してやる! だから私だけは――ヒィッ!」


 俺の黒炎が、司教の腕に吸い込まれるように燃え移る。次の瞬間、炎は彼の全身へと走り、衣も肉も一緒に喰らい尽くしていく。


 その炎は決して消えない。影すらも燃やし尽くすまで、こいつに苦しみを与え続ける。


「やめろ! こんな真似をして……貴様は聖魔教会を敵に回すことになるのだぞ!」

「知ったことか。それと、お前が今言ったことは――とっくに知ってた。だが……貴様の口から聞けたおかげで、確信に変わったぜ」


 燃えながら絶叫する声は、鎮魂歌(レクイエム)と呼ぶにも値しないほど下劣で耳障りだった。

 これじゃあ妹も浮かばれねぇ……やはり、全てを俺の炎で焼き尽くさなければならない。


 俺は背を向け、教会の出口へと歩き出した。


「ご苦労様です、ファイン。神に背きながら神を称える……そんな矛盾だらけの連中には、まさに相応しい最期でしたね。見ていて実に心地良かった」

「別に、あんたらのためにやったわけじゃない」

「分かってますとも。……そんな貴方に朗報があります」

「朗報?」


 一部始終を黙って見ていた魔狩教団の一人が、不気味な笑みを浮かべて言った。その声音に、俺は自然と耳を傾けてしまう。


「学園で開かれる親睦会。そこで“大罪人”マゼルと、今の話にも出たギャノンが試合をするそうです。全校生徒や教師が見守る中でね。愚かな連中に力を見せつけるには……これ以上ない舞台だと思いませんか?」

「――それは……確かにいい情報だな」


 ちょうど残る標的は、あの野郎(ギャノン)とイロリだけだった。


「貴方の恨みを晴らすのはもちろんですが、マゼル抹殺も忘れずにお願いしますよ」

「分かってる。イロリの目の前で……俺が全て、燃やし尽くしてやるさ」

「お願いしますよ。審判の日には、我々も同行しますので」

「俺だけで十分だと思うがな」

「まぁそう言わずに。……ハハッ、今から愉しみですねぇ」


 男の含み笑いを無視し、俺はただ炎の余韻を纏ったまま、その場を去った――。

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