第473話 魔力0の大賢者、その結果を受け入れる?
「残念ということは、駄目だったのか――」
イロリ先生の話を聞いたガロンが、肩を落としてため息をついた。その顔には、無念さが色濃く滲んでいる。
教室の空気も重くなり、他のみんなも悔しさを隠しきれない様子だった。
「クソッ! やっぱりSクラスが優先されるのかよ!」
アズールが拳を握りしめ、思いきり机を叩いた。手元で小さく震える音が、静かな教室に響く。
「先生! 理由を聞いてもいいですか? どうしてこんな結果になったんですか?」
「あん? そんなの俺が聞きたいぐらいだ。全く……何だってこんな面倒なことになってんだか」
イロリ先生は頭をガシガシとかきながら、やや不機嫌そうに答えた。
「ちょ、面倒って……そんな言い方ないじゃないですか!」
「そうだよ先生! 私たちは必死に対抗戦に取り組んできたのに」
メドーサが抗議するように身を乗り出し、リミットも強い目で先生を見つめている。
そんな皆のやり取りを聞きながら、俺はどこか引っかかるものを感じていた。先生の話し方というか、雰囲気というか……。
「えっと、先生が面倒くさいって言うのは、一体どういう意味なんですか?」
思い切って質問してみると、イロリ先生は大きくため息をついてから、肩をすくめてこう答えた。
「――んなの決まってるだろうが。やっと面倒事から解放されると思ってたら、よりによってお前らが親睦会のメンバーに選ばれちまったんだからな」
先生は頬杖をついて、やれやれといった顔でこちらを見てくる。その一言に、教室中が一瞬静まり返る。
「ちょっと待ってくれ。残念な知らせって、俺たちが選ばれたことなのか?」
「それ以外に何があるんだよ」
アズールが呆れ混じりに問いかけると、イロリ先生は当然だと言わんばかりの表情で答えた。
「いやいや、さすがに紛らわしいでしょ!」
「本当だぞ! こっちは本気で落ち込みそうになったんだからな!」
ドクトルが溜息をつき、ガロンもほっとしたように苦笑いを浮かべる。
「そんなの知るか。勝手に勘違いしたお前らが悪いんだろ」
「何よそれぇ~」
メドーサが額を押さえて、ちょっと疲れたような声を漏らす。
「で、でも凄い! 私たちの力が認められたってことですよね?」
「ガウガウ」
「ピィ~♪」
アニマが高揚した声を上げ、それにシグルとメーテルも元気よく応える。自分のことのように嬉しそうな顔だ。
先生の言い方は確かにややこしかったかもしれないけど――
「うん。ここは素直に喜ぼうよ、みんな?」
そう声をかけると、さっきまで漂っていたどんよりした空気が嘘みたいに晴れた。
「よっしゃぁああああぁあ! 俺たちが一年代表だぜ!」
アズールが椅子を蹴って立ち上がり、大きく両手を掲げて叫んだ。その勢いに引っ張られるように、みんなの顔にも次々と笑顔が咲いていく。
「全く、お前らはそんなに嬉しいかね……。分かってるんだろうな? 親睦会じゃ三年の代表と魔法戦で戦うんだぞ?」
「――はい。それはもちろんです」
イロリ先生の言葉を聞いて、自然とギャノンの顔が頭に浮かんだ。
「そういえば、三年の代表はもう決まってるんですよね?」
「――あぁ。三年からはDクラスが代表に決まった」
Dクラス――宣言通り、ギャノンのクラスが勝ち上がってきたというわけだ。
「一応言っておくが、Dクラスだからといって舐めてかかるなよ。あのクラスは曲者揃いだ――特にギャノンはな……」
イロリ先生がギャノンの名前を口にした瞬間、その表情にかすかな陰りが差した。ほんの一瞬のことだけど、俺はなんとなく違和感を覚えた。もしかして、イロリ先生とギャノンの間に何かあったんだろうか……。




