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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第464話 魔力0の大賢者、大将戦でラクナと戦う

いつも感想や誤字脱字報告をいただきありがとうございます!

 Sクラス対Zクラス、大将戦――石張りのリングを取り巻く観客席がざわついている。


 僕が階段を上がった瞬間、四方から嘲声が浴びせられた。


「マゼルもここまで!」

「ラクナ様がトドメだ!」

「落ちこぼれに現実を思い知らせろ!」


 さっきまでアズールの熱戦に沸いていた空気が、いっきに敵意へ転じる。胸の奥がざらつくが、顔を上げたまま中央へ進むしかない。


 対面に立つラクナ・ワグナー――茶髪をかき上げ、黒い瞳で僕を射抜く。少年期の丸みは影もなく、研ぎ澄まされた細身の体から大地そのものの重圧が滲んでいた。


 ラクナは観客席を一瞥もしない。 


「……応えろ、大地」


 低く短い詠唱。次の瞬間、ゴウン――石畳が隆起し、砂礫が渦を巻く。土塊は瞬く間に背丈の数倍――およそ十メートルほどの巨人へと姿を変えた。


 悲鳴と椅子の軋む音。ラクナは氷の声で吐き捨てる。


「さえずるな。黙って見ていろ」


 巨人の拳がドンとリングを叩き、嘲声は潮を引くように途切れた。

 

――ひと振りで空気を沈黙させる魔法。ラクナの努力が確かに結実している、と胸の内で認めざるを得ない。


「ラクナ・ワグナー! 試合開始前の魔法行使は規定違反だ!」


 ウィンガル先生の叱責が鋭く飛ぶ。ルールに厳しい先生だけに見逃すはずがない。


「……フン」


 ラクナは肩をすくめ、指を鳴らす。土の巨人は砂礫へ崩れ落ち、リングに戻った。観客は息をのんだまま、誰一人声を上げられない。


「双方、準備はよいか?」

「問題ない」


 ラクナが短く返し、僕も頷く。


 ウィンガル先生の手刀が振り下ろされた。


「――大将戦、始め!」

「応えろ、大地」


 ラクナは号令と同時、石床に掌を当てた。詠唱は先ほどと同じワンフレーズ。詠唱省略が可能になった証だろう。


 リングがうねり、拳大の礫が雨あられと飛来――しかし軌道は読める。石の雨の隙間を縫うようにステップで回避する。


 土煙の向こうでラクナの黒い瞳が細まる。わずかな焦りを含む空気が伝わり、胸がざらりとした。


「俺の魔法は、まだ序の口だ」


 回避した礫が空中で形を変え、槍となって再加速。迫る石槍を拳で砕くと、ラクナの唇がわずかに歪んだ。


「ならば拘束してやる。応えろ、大地――クェイグマイア・フィールド」


 足元の石畳が瞬時に泥へと化け、膝まで沈み込む。泥は粘り、動くほど脚を噛み締めていく。


「固まれ」


 ラクナの指示と同時に泥が石へと反転――リングに縛り付けられた。体を傾け逃れる間もない。鋭い。


「身動きさえ封じれば俺のものだ。応えろ、大地――アース・タイラント!」


 リング全体が震え、再び巨大な土巨人が隆起する。先ほどより密度が濃い。

 

――ラクナ、前に戦ったときとは比べ物にならない。一つ一つの魔法の練度が高い。


 だけど、僕だってここで負けるわけにはいかない。


 そして、巨人の足が唸りを上げ、僕めがけ振り下ろされた――。

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