第463話 魔力0の大賢者、Sクラス相手の大将戦に挑む
いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!
アズールとフレイザがリング中央で倒れている。これは先に立ち上がったほうが勝利だろうか?
──そう思った直後、ふたりの身体が淡く輝いた。
『――重度の負傷を確認。保険魔法を適用いたします』
アズールとフレイザ、同時に保険魔法が発動。規定では保険魔法が適用された時点で敗北になる。となれば、この場合は――。
「アズール・ブレイズ、フレイザ・アイスヒートの保険魔法を確認。よって副将戦は引き分け――」
「ふざけるな! 俺はまだ戦える! 勝手に保険なんて適用するな! 俺は負けてない! 凍れ! 凍れぇええ!」
フレイザが氷魔法を展開するが、治癒の光を凍りつかせることはできない。アズールとフレイザの傷はみるみる塞がっていく。
「見ろ! 俺を見ろ! あんな奴より俺は元気だ! まだ戦えたんだ!」
「勝手なこと言ってんじゃねぇよ」
アズールが立ち上がり、不機嫌そうに言葉をぶつける。
「悔しいのは俺も一緒なんだよ。しかも、わけのわかんねぇ声まで聞こえてきて実感がねぇ。おまけに引き分けなんて不完全燃焼もいいところだ」
“声”? どうやらアズールにも何か変化があったらしい。
「――お前たちがどう思おうがルールはルールだ。保険魔法が同時に適用された以上、結果は覆らん」
「くそ! こんな奴に、こんな奴に!」
「見苦しいぞフレイザ。お前は引き分けだ。勝ちでも負けでもない、中途半端――それが今の実力ってことだ」
「なッ! き、貴様にだけは言われたくない!」
ラクナの言葉に、眉を逆立てたフレイザが詰め寄る。結果的にこれで彼はリングを降りてくれた。
「すまねぇ、みんな……」
アズールもリングを下り、僕たちに頭を下げた。だが仲間はすぐに彼の健闘を讃える。
「何を言ってるんだ。Sクラス相手に引き分けだぞ。よくやったよ」
「うん。それに、これで負けはなくなったからね」
「は、はい! お互い引けを取らない試合だったと思うよ!」
称賛に、アズールは照れくさそうに頬を掻いた。
「マゼルもありがとうな。お前の言葉があったから戦えたんだ」
「そんな、大したことはしてないよ。全部アズールの力さ」
「俺の力、ね。ま、とりあえずマゼルも“謎の寄生虫”もサンキューってとこか」
「寄生虫?」
アズールの言葉が気になる。さっきも“声”がしたと言っていた。
「あぁ、頭の中でな。でも、もう聞こえねぇし……幻聴だったのかもな」
そう言い終える前に、アズールがぐらりと前のめりに。あわてて支えると、安らかな寝息を立てている。
「何寝てるの? 呑気ね」
「きっと疲れたんだろうね」
「ま、保険魔法で傷は治っても疲労までは取れんからな」
イロリ先生の補足にうなずき、アズールをベンチへ寝かせた。
気持ちよさそうに眠る横顔を見ていると、胸の奥が温かくなる。ほんとうに頑張ってくれた。
「でも、これで引き分けだと、マゼルが勝っても……」
「――現在、一勝二敗一分。マゼルが勝利しても二勝二敗一分。ZクラスとSクラスは同率になります、とお答えします」
メドーサの不安にメイリアが淡々と数字を述べる。
「逆に言えば、マゼルが勝てなければ敗北が決定するわけか」
ガロンが腕を組んだ。そう、次は負けはもちろん、引き分けでも終わりだ。
「次の試合を始める。双方、準備ができ次第リングに上がるように」
ウィンガル先生の声を合図に、僕はリングへ目を向ける。
「責任重大、だね」
「大丈夫だよ、マゼルなら」
「あぁ。色々言ったが、お前が出るなら安心だ」
「うん。きっとマゼルなら勝てるよ!」
「油断しないで勝ってきなよ!」
「が、頑張って!」
「ガウ!」
「ピィ~!」
「……頑張って」
「――マゼルの勝率は高いと判断します。期待しています」
皆の声援が背中を押す。右拳を高く突き上げ、深呼吸。
大将として、恥ずかしくない試合をしよう。
本作のコミカライズ版単行本第10巻が好評発売中です!




