表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

457/503

第455話 魔力0の大賢者、圧倒的アウェイ感を味わう

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 午後も深まり、いよいよ一年対抗戦・最終戦が始まった。最初に魔導人形戦に挑んだZクラスだったのだけど――


「これで初敗北か」

「ごめんね、みんな……」

「うぅ、全勝ストップさせちゃった」

「気にするな。これまで負け知らずだったのが出来すぎだったんだからな」

「そうだよ。魔法戦は残ってる。Sクラスには魔導球で勝っているんだ、まだ五分五分さ」


 アズールの何気ないひと言に、メドーサとドクトルが申し訳なさそうに肩を落とす。ガロンが二人を慰め、僕も励ました。負けたといっても全力を尽くした結果だ。気持ちを切り替え、次に備えなければ。


 魔導人形戦のあとに短い休憩を挟み、僕たちは石畳の回廊を抜けて魔法戦用の試合場(アリーナ)へと向かった。


 そしてアリーナの扉を開けた瞬間、空気が震えるほどの歓声が降り注いだ。


「来たぞ! Sクラスだ!」

「頑張れ、Sクラス!」

「Zクラスなんかに負けるなよ~!」

「きゃ~ライトニング様、素敵~!」


 ほとんどがSクラス贔屓の声。僕たちZクラスは完全に“アウェイ”だ。


「なんだよ、このアウェイ感……」

「一年だけじゃない。上級生もいるみたいね」

「人の波が揺れてる。あれ全部敵意か……」

「見て見て! ハニーが出店でパンケーキ売ってるよ!」

「この状況でも食べ物に目が行くのはさすがだな」

「あはは……」


 リミットが手を振ると、屋台に立つハニーが照れくさそうに応えてくれた。だけどその表情には戸惑いも滲んでいた。  


 僕達に向けられた敵意を感じ取ったからかもしれないね。


 それでも――敵ばかりではない。


「マゼル~~! 俺たちはZクラスを応援してるぞぉお!」

「頑張ってください! きっと皆なら勝てます!」


 正面スタンドからモブマンとネガメが大きく手を振る。その声は雑踏の中でもまっすぐ届いた。


「マゼル、私も応援してる。実力で黙らせて」

「ビロスも見てるよ~! ファイトだよ!」

「Sクラスになんか負けない! ありえるのです!」

「ちゅ~!」

「し、仕方ないから応援してさしあげますわ!」


 別ブロックではアイラ、ビロス、アリエル、ファンファン、魔導人形戦で試合したイスメリアまで――顔ぶれに胸が熱くなる。


「お兄様~! 私はお兄様の勝利を確信しております!」

「主様なら楽勝さね! ゼロの大賢者の凄さを見せてやる時だよ!」

「私も応援してますよ、マゼル様~!」


 上段にはラーサやアネ、フレデリカ、特別学区の仲間たち。


「――全く。我々は勉強のために来ているのだ。偏った応援をするべきではないのだよ」

「そんなこと言いながら、グリンはマゼル先輩のことばかり話していたじゃない」

「僕達は助けられた恩もあるし。先輩を応援しないとね」

「う、うん。ラーサのお兄さんだもんね!」


 グリンが口を尖らせてはいるけれど、視線はまっすぐ僕たちに向けられていた。ブルックとシルバ、アンも僕達に声援を送ってくれている。


「これは、ラーサのためにも負けられない!」

「出たよ、このシスコン」

「でも張り切ってくれるなら助かるわね」


 アズールとメドーサが苦笑い。頬が熱くなったが、気合いも入った。


「Fクラスは全力でZクラスを応援するよ!」

「みんな、上げるわよ!」


 Fクラスが広げた巨大な横断幕――真紅の布に白く染め抜かれた『闘 Z 魂』の文字――が翻る。その迫力に観客席がどよめく。


「あそこまでしてくれるとはな」

「益々負けられないわね」


 ガロンとリミットが旗を見上げる。僕達がアウェイの中、Fクラスも応援してくれているんだ。負けるわけにはいかないよ。


「おい、なんだその旗下げろ!」

「そんなこと言われる筋合いはないわ」

「Fクラスのくせに生意気だ!」


 僕達が感慨深く旗を見上げていると、誰かが放った火球が横断幕を狙う。瞬間――。


「テメェら! それでも漢かァッッ!」


 ムスケル先輩が仁王立ちで火球を背中で受け止めた。筋肉が蒸気を上げ、観客が悲鳴と歓声を上げる。


「この旗は折らせねぇ! それでもやるって言うなら、この俺が相手だッ!」


 先輩の咆哮に、絡んでいた生徒たちは場外まで吹き飛んでいった。


「ありゃもう戻ってこれねぇな」

「流石ムスケル先輩ッス! 一生ついていくッス!」

「うちらも応援してるで~Zクラス気張ってや~」


 生徒の飛んでいった方を見届けるライジ。拳を突き上げるガッツ、そしてマネリアがにこやかに手を振っていた。


 ――味方はいる。負けられない理由が、こんなにもある。


「静粛に!」


 リカルドの声音がアリーナに響き、会場のざわめきが凍る。理事長の隣にはロベール生徒会長とヘンリー、そして三年生が集まる席では、ギャノンが腕を組み、鋭い目つきでこちらを見ていた。


「これより一年対抗戦・最終試合を始める。応援は構わないが、節度を守るように」


 リカルドに睥睨され、ピリリとした緊張が走る。


「それではZクラス対Sクラス、魔法戦を開始する。――先鋒、前へ!」


 ウィンガル先生の合図。僕たちの隊列が動き、リミットが一歩前に出た。白い息を吐き、リミットはギュッと杖を握りしめる。


「頑張れよ、リミット!」

「うん。一撃必殺で勝利してみせる!」

「あぁ、まぁそうなるよね」


 仲間たちが背中を叩く。リミットは軽く跳ねるようにリングへ。


「リミット――ファイト!」

「任せて!」


 彼女の足取りは軽い。無数の視線が交差する檻の中でも、火の精霊のように燃えている。

 そして――魔力が揺らぎ、先鋒戦の幕が上がった。さて、Sクラスの先鋒は果たして――

本作のコミカライズ版最新10巻は6月26日発売です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ