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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第450話 魔力0の大賢者、対抗戦の予定変更を知る

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「お前ら、今日は午後から Sクラスとの試合だ。準備しておけよ」


 この日の朝、イロリ先生は教壇に立つなり、僕たちに午後の試合について告げた。気だるげな口調とは裏腹に、その眼だけは鋭く真剣だったのが印象的だ。


「午後なら学食でお昼が食べられるね♪」

「リミットはほんと、いつも食い気よね」


 午後と聞いてテンションが上がるリミットを見て、メドーサが苦笑する。


「むしろしっかり食っておいた方がいいかもな。なにせリカルドの野郎、今日ですべての試合を終わらせる気だ」

「すべての試合? どういう意味だよ」

「時間割にもそんなことは書いてありませんが……」


 アズールとドクトルが首をかしげる。僕が確認しても、時間割にはSクラスとの試合時間しか載っていない。


「その時間割はもう意味ねぇ。急遽決まったことだからな。お前らは今日、魔導人形戦と魔法戦を連続でやることになる」


 イロリ先生の説明に、皆が教室内で顔を見合わせる。


「まさか連続で試合とはな」

「は、初めてのことで驚きです」

「クゥ~ン……」

「ピィ?」


 ガロンとアニマの声に合わせ、シグルとメーテルも反応した。シグルは声が弱く、メーテルも心配そうだ。


「時間も変わる。魔導人形戦は午後最後の授業に合わせて、魔法戦はその直後だ」

「先生、それじゃ魔法戦は授業が終わったあとに行うんですか?」


 僕が尋ねると、イロリ先生は後頭部を掻いて嘆息した。


「そういうことだ。リカルドの野郎は“その時間しか空いてない”なんてほざいてたが、実際は強さを見せつけたいだけだろうよ」

「見せつけたいとは?」


 ドクトルの問いに、イロリ先生の表情が険しくなる。


「授業後なら誰でも見学できる。あの野郎は学生全員の前でSクラスの力を誇示したいんだ。――つまり、お前らを舐めきってる」


 空気が一変した。Sクラスに負けると決めつけられている――その事実が皆の闘志に火を点けたようだ。


「俺たちも随分と舐められたもんだな」

「魔導球では私たちが勝ったのにね」

「上等じゃない! たっぷり食べてパワー満タンで挑んでやるわ!」

「うむ、逆にこちらの実力を思い知らせてやろう」

「舐められっぱなしなのも癪だもんね」

「…………」


 アズール、メドーサ、ガロン、ドクトルの四人は意気軒昂。一方、シアンとメイリアは静かに状況を見守り、アニマは不安げにシグルの頭を撫でている。


「張り切るのは勝手だが、連続試合ってことでルールが一つ追加だ。魔導人形戦と魔法戦への重複出場は禁止。学生の負担がどうとか建前を言ってたが、要はお前らを分断したいんだ」


 僕たちの誰もが、どちらに出場するか選ばねばならない。


「マジかよ」

「それじゃマゼルも両方は無理ね」

「うーん、どっちを選ぼう」


 悩むクラスメートを見渡し、僕は手を挙げた。


「それなら――イロリ先生に選んでもらいませんか?」

「あん? 何言ってるんだお前は」


 僕の発言にイロリ先生が顔を顰めた。


「そんなの適当に決めて終わるに決まってるだろう」

 

 そうアズールは言うけど、僕は首を振った。


「いいえ。先生は僕たちをいちばん近くで見てくれています。だから先生の決定なら誰も文句を言いません。――僕たちは先生を信じます。先生も、僕たちを信じてください」


 静かな言葉にイロリ先生が目を見開いた。短い沈黙ののち、教壇に視線を落とし、やがて顔を上げる。


「……わかった。そこまで言うなら選んでやる。だが決定にケチはつけるなよ」


 クラスに安堵の笑みが広がったが、アニマだけは眉を曇らせていた。


「せ、先生! 朝からシグルの調子が悪いんです。傍についていてあげたいし、診てくださる方がいると助かります」


 イロリ先生は小さく頷く。


「頭に入れとく。――選抜は午後までに決める。じゃあな」

「じゃあなって、授業はどうするんだよ」

とアズール。


「自習に決まってるだろ。わかりきったことを聞くな」


 捨て台詞を残して退室した先生を見送り、僕たちは顔を見合わせて苦笑した。


「でもシグルが心配ね。あの人じゃあてにならないし、誰か診てくれる人を探しましょう」


 メドーサの提案に、アズールが僕を見た。


「それぐらいマゼルの魔法で何とかなんねぇのか?」

「そうだよ、マゼルなら!」


 みんなの視線を受け、シグルの前にしゃがむ。僕はいつもの手で治癒を施したのだけど――


「どうかな?」

「クゥ~ン……」

「……変化なし、か」


 ガロンが静かに呟いた。どうやら効果がないみたいだね――


「マジかよ! マゼルでも駄目って重症じゃねぇか!」

「あんたデリカシーなさすぎ!」

とメドーサがたしなめる。


 それにしても、このシグルの反応――僕自身、病気とは違う何かを感じていた。


「ごめんね、力になれなくて」

「ううん、ありがとう……。午前の生物学はバローネ先生だから、診てもらえないかなって」

「そうか。確か生物学の権威という話だったよね」


 アニマの話にドクトルが頷いていた。確かに生物学に精通しているなら、僕なんかよりずっと頼りになるかもね。とにかく今はバローネ先生の授業を待つことにしたんだ――

本作のコミカライズ版単行本が今月!6月26日発売となります!

どうぞ宜しくお願い致します!

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