第420話 再会と恨み
side イロリ
円卓騎士の宴亭で妙なことが起きていると耳にした。店に突然入れなくなり騒ぐ声を聞いたという。
胸騒ぎがし俺は円卓騎士の宴亭に戻ることにした。店主のグルラスはあの事件の関係者だ。だからこそ俺はあの男に話を聞きにいったのだが――もしファインが狙ってるとしたら。
色々な考えが頭で交差する。そして思う、ファインを見つけたとして俺はどんな顔でアイツと向き合えば良いのか、と。
俺が駆け足で路地を進むと、奥から黒いローブに身を包まれた人物が姿を見せた。こっちに近づいてくるその姿を見て、俺は確信した。
「お前、ファインか?」
自然と声をかけていた。それに答えず無言で黒ローブが近づいてきて、すれ違いざまに耳元で囁いた。
「お前は後だ、首を洗っって待っているんだな――」
俺の体が強張るのを感じた。無力な俺が想起された。あの時、俺はファインに何もしてやれなかった。後悔だけが残り、俺は――
「待て! ファイン!」
俺の叫びはむなしく、黒ローブの男は跳躍し姿を消した。そして俺は一人残された路地で立ちすくんでいた。ファイン、お前はやはり俺を恨んでいるんだな――
「そなたはイロリであるな。なぜここに?」
声が聞こえ振り向くと、そこにフェングの姿があった。魔導師団のフェングがいる。そしてファインがここにいたということは――
「――この先のレストランに行こうとしていた。何かあったのか?」
「そうか。それであるなら諦めた方が良いであろう。あの店はもう営業出来ないであろうからな」
それを聞いて、俺は何が起きたか察することが出来た。
「ところでここに怪しい人物が通らなかったであるか?」
「……さぁな」
言って俺は踵を返した。アイツのことを話すつもりはなかった。俺が魔導師団の事を信じる事が出来ないからだ。
「そうであるか。しかし魔狩教団の一味がこの辺りに潜伏している可能性がある。十分に気をつけるのだな」
「あぁ……肝に銘じておくよ」
そして俺はその場から離れた。しかし魔狩教団か。まさかファインお前――
side ドミルトン
「魔狩教団でも時には役立つ事があるものだねぇ」
建物の上から俯瞰しつつ、そう呟いた。ここまでやってきたのは場合によってはグルラスを始末する必要があったからだ。
結局その役目は魔狩教団の男がやってしまったがな。魔狩教団は大魔の蒼月とは対極にある組織でけっして相容れない存在ではあるが、奴らのおかげで魔導師団らの意識を二分に出来ているという一面もある。
「それにしてもブルームーンも随分と軽々しく使われている物だねぇ」
本来あの薬はそんな安いものではない。料理に混ぜて振る舞うなんて真似していたら金なんてすぐに尽きてしまうだろう。だが、それが出来ているということは――
そういえば、グルラスからの発注数も減っていたんだったな。そうなるとやはりアイツが一枚噛んでいると見るべきか。仕方ない。面倒だが折角手駒にした連中がいるわけだし、利用して探りを入れるとするかな――




