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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第419話 黒い炎

side ウィンガル

 

 妙な人形を通してフェングから連絡を受けた私は、何人かの魔導師と共に円卓騎士の宴亭に向かった。


 そこには既に倒れた元魔導騎士のグルラスの姿があった。その場に居合わせたマゼルを含めた生徒の話も聞き、この店で行われた事はわかった。


 もっとも、ある程度予想はついていた部分もある。だからこそフェングもこの店に来ていたわけだからな。


「クソ! こんな筈ではなかったのに!」


 意識を取り戻したグルラスとその仲間に枷を嵌めて私たちは店を出た。グルラスは悔しそうにしているが、こんな筈ではなかったか。


「おいお前たち、こうなったら俺に協力しろ。そうすれば今よりもいい思いをさせてやるぞ。金だって今よりずっと」

「黙れ。我々を買収しようと思っているなら無駄なことだ。それよりも覚悟しておくのだな。お前に協力していた内通者についても白状してもらうからな」

「なッ!?」


 グルラスの顔色が変わった。この様子を見るに内通者がいるのは間違いないと思って良いのだろう。信じたくはないが、このグルラスに協力している者が魔導師団の中にいる――


 だからこそグルラスはこんなにも堂々と店を開き、違法行為に手を染められたのだろう。これまで問題視されなかったのは魔導師団の中にいる協力者が手を回していたからと考えられる。

 

 しかし、それだけの真似が出来るということは魔導師団の中でもそれなりの立場にいる者と考えるべきだろう――


「ふふふっ、そういう話であれば|僕《やつがれの出番であるな。口を割らせる方法であれば幾らでも用意できるぞ」

「くっ、お、おい! こいつを近づかせるな!」

「ほう、随分と焦っておるな。まさかであるが、さっきの痛みが効いているのか? あの程度で弱音を吐く程度では、これからの尋問には耐えきれそうにないであるなぁ」

「――フェング。どちらにしても戻ってからだ。尋問するにしろ団長の決断を仰ぐ必要があるのだから――」

「見つけたぞ」


 フェングと話しながらも移動していると、路地の奥から黒ローブを纏った何者かが近づいてきているのがわかった。顔はフードによって隠されている。声は男の者だ。


「何者だ?」

「――俺は復讐者だ。ソイツを始末しに来た」


 私の問いかけに答えた男が右手を上げると、黒い炎が腕全体を覆った。明らかな敵意を感じる。


「全く次から次へと。学園都市を何だと思っているんだ!」

「知るかよ。お前らにようはない」

「――創生の風、形成の翠、風狼の怒り――創風魔法・フェンリルテンペスト!」


 ようはないと言われて黙って見過ごすわけにはいかない。私の魔法によって風が一点に集まり、巨大な狼の姿と変化した。黒ローブの男に向けて風の巨狼が襲いかかる。


「――こんなもの効くかよ」


 男がそう呟いた瞬間、飛びかかった風の狼が消え失せた。これは魔法を消した? いや、切ったのか。つまりこいつは――


「魔狩教団か!」

「知るかよ。俺の獲物はそいつだけだ」

「フェング!」

「わかっているであるぞ――陰と陽、二つの(ことわり)をいま一つに」


 フェングが詠唱を始めると、その周囲に黒と白の光が渦巻いた。大気が震え、詠唱が続くにつれ渦の勢いも強まっていく。


「臨・兵・闇・冥・陽・陰・護・結・守──」

 

 一つ唱えるごとに奇妙な文字が浮かんでは消えていく。相変わらずフェングの詠唱は独特だ。


「――万象の悪意を退(しりぞ)けよ。陰陽魔法・陰陽太極盾」


 詠唱を終えると同時に周囲の景色が歪み、黒と白が螺旋を描くように絡み合い回転した状態で形成された。巨大な円盾はあらゆる厄災を退けるような、そんな気配を感じさせる。


「――悪いが、このような下劣な男でも、色々話を聞く必要があるのでな。守らせてもらうであるぞ」

「そうかよ。影炎!」


 ローブの男が右手を振ると、漆黒の炎が右手から伸び、フェングに向かっていった。だが、炎などフェングの魔法なら通さないはず。そう思っていたのだが――


「ぐ、グワァアアァアアァアアア! 熱い、あづいぃぃいいいい!」


 その声に驚き私はグルラスを見た。気持ちはフェングも一緒だったようであり、黒い炎に包まれるグルラスの姿を信じられないような目で見ていた。


「馬鹿な、(やつがれ)の魔法をすり抜け、グルラスだけを燃やしたというのであるか――」


 黒い炎に包まれ藻掻き苦しむグルラスの姿を呆然と眺めるフェング。それだけ信じられないことだったのだろう。


「お前たちも何をボーっとしている! 消すんだ!」


 私たちはなんとかグルラスの炎を消そうと試みたがどうしようもなかった。水魔法で水を掛けようが風を吹かそうが何をしても黒い炎は消えない。しかもこの黒い炎はグルラス以外には燃え移ることなく、ピンポイントでこの男だけを燃やし続けた。


「これでそいつも終わりだ。苦しみ続けて死ね」

 

 そう言い残して男が踵を返した。不味い、このまま見逃すわけにはいかない。


「フェング! お前はあの男を捕まえろ!」

「ハッ、そ、そうであるな」


 私の声でようやく正気に戻ったのか、フェングが走り出した。


「あ、づ、い、どう、じ、で、おで、がッ――」


 そして漆黒の炎に蝕まれたグルラスは苦しみながら炭化していき、最終的には影すらも残さずその場から消え失せた。くそっ、結局何も出来ずみすみすグルラスを死なせてしまったか。後はフェングがあの男を捕まえられているといいが――

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