第403話 魔力0の大賢者、ガッツと戦う
「僕からいくッスよ! 滾る熱血! 熱くなれ心臓! 熱い拳と燃え盛る蹴り――熱血魔法・熱血拳!」
試合が始まってガッツが詠唱を行使、するとガッツの両手と両足が炎に包まれた。これが彼の魔法、熱血魔法って初めて聞くね。学園に来てからはそういう魔法もよく見るよ。
「行くッス!」
そしてガッツが地面を蹴って加速した。足の炎が噴射して推進力を上げているんだ。纏わせた炎で強化してる感じなんだろうね。
「ハァアァアアァアア!」
ガッツが炎を纏わせた拳を連打してきた。拳も炎の噴射で速度と威力が増しているってことだね。
「あの魔法ってフレイムナックルみたいなもの?」
「チッ、似てるようでちげ~よ。俺の魔法は一回殴ったらそれで終わりだからな」
メドーサとアズールの会話が聞こえてきた。確かにアズールの魔法は火魔法でそれぞれが単発で終わるからね。
「全然当たらないッス! 流石ムスケル先輩が認めただけあるッスね!」
攻撃速度は速い、だけど対応できない速度ではない。上手くフェイントを織り交ぜて攻撃してくるのは流石だけどね。
「ハッ!」
「わわッス!」
掛け声を発するとガッツが後方に飛んでいった。リングを滑りながらも踏ん張って動きを止める。
「相変わらずマゼルの奴、無詠唱かよ」
「ウムッ。あれは衝撃系の魔法か」
「本当マゼルって多才よね」
皆の声が聞こえてきたけど、その、気合いを込めただけなんだけどね……。
「やるッスね! ならばこれッス!」
声を上げガッツが低く長い跳躍で僕の前まで飛び込んできた。
「熱血旋風脚!」
そしてガッツが炎を帯びた蹴りを回転しながら放ってきた。炎の推進力と相まって高速回転の連続攻撃になっている。
「捉えたッス! て、あれ?」
「マゼルが消えたよ!」
「い、いえ、後ろに、い、います!」
ガッツとドクトルの驚く声が聞こえた。それにアニマが補足してくれていた。そう、ガッツが蹴ったのは僕の残像だったんだよね。
「無詠唱でミラージュの魔法まで使えるなんて、どれだけ引き出しが豊富なのマゼル!」
リミットが興奮気味に叫んでいたけど、その、残像なんです。
「ここまでとは思わなかったッスよ! それなら熱血乱舞!」
ガッツが更に加速して肉薄、そこからの拳と蹴りの息もつかせぬ連続攻撃。魔法だけじゃない体術的にも優れているからこそ出来る技だね。
「ハァアアァアア!」
僕も対抗して乱舞に応戦した。お互いの拳と蹴りがぶつかり合い――
「グゥッ!」
打ち合いの末に後方に飛ばされたのはガッツだった。
「すげぇな。だけどこれ魔法戦だったよな?」
「ハハッ、ガッツは事前に魔法を使ってるしマゼルも強化魔法を使ってるようだからね。問題ないよ」
「うむ。俺も強化魔法で戦ったわけだからな」
アズールの疑問にゲシュタル教授とガロンが答えていた。ま、まぁ気を込めたりはしてるんだけどね。
「凄いッス。こうなったら僕もとっておきを見せるッスよ!」
言ってガッツが腰溜めの体勢になった。そして――
「百歩熱血拳!」
気合いの声を上げガッツが右手を突き出すと、巨大な炎の拳が僕に向かって飛んできた。これって――




