第386話 魔力0の大賢者、再び司教の教義を聞く
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Cクラスとの魔導球の試合が終わって数日が経った。今日は午後からが試合になるのだけど、午前中には教会の授業がある。
そしてその時間が来たのだけど――
「で、つまり我が聖魔教会の歴史は――であるからして」
「ふぁ~あ――」
ゼミラル司教の教義(?)を聞きながらアズールが欠伸をかいていた。メドーサもウトウトしているよ。
「むぅ、貴様ら! 話を聞いているのか!」
そんな二人に気がついたゼミラル司教が怒鳴り声を上げた。顔つきも険しいよ。
「んなこと言われてもよ。さっきからあんた教会の話しかしてねぇじゃねぇか」
「本当それ。前から思ってたけど、どうせならそろそろ治療魔法の事とか教えて欲しいわよ」
アズールとメドーサが文句を言った。う~ん、二人の気持ちもわからなくもないけどね。学園の授業としてみると聖魔教会のことだけ延々と話されるのには疑問が残るし。
「治療魔法だと? フンッ。Zクラスの分際で生意気な。大体貴様らにそんなもの教えたところで馬の耳に神言、兎に祭文、牛に教典だ」
そう言って司教がフンッと鼻を鳴らした。ちょっとそれは酷いと思うんだけど。
「元々は、より専門的に治療魔法を学ぶ為に来てくれたという話だった筈ですよね?」
思わず僕は指摘した。入学式では確かにそういう話になっていた筈だ。
「何だ貴様は? 治療魔法のなんたるかも知らない分際で生意気な」
「アハハッ、司教ってば冗談が上手いよね。マゼルが治療魔法を知らないなんて」
「うむ。あれだけの魔法が使えるマゼルが知らないわけがないからな」
リミットとガロンが僕を擁護するように反論してくれた。それは嬉しいけど、ま、魔法じゃないんだよねぇ……。
「黙れ。前にも言ったはずだ。魔力が0の落ちこぼれに魔法など使えるものかとな! 最近になって上手いこと功績をでっち上げているようだが私の目はごまかされんぞ」
ゼミラル司教がギロリと僕を睨んできた。何か敵対視されてるような――
「大体何が大賢者だ。何でも大賢者教会などというインチキ臭い団体もいるようだが、あんなものはすべてまやかしだ!」
ゼミラル司教がドンッ! と机を強く叩きつけた。ガルル~と歯牙を顕にしているよ。
「――フンッ。とはいえだ、そんな志の低いお前たちでも役に立てることはある。お前たち」
「「はい」」
ゼミラル司教が声を掛けると両脇に立っていた司祭二人が箱を持って一歩前に出た。これって?
「知っての通り教会は人々の善意で成り立っている。故にお前たちに僅かでもその気持ちがあるなら。二人の持つ箱のどちらかにお前たちの気持ちを入れるが良い。そうすることで神の御心に触れ僅かとは言え奇跡を得られるかもしれぬぞ」
えっと、これって色々回りくどい言い方しているけど、ようはお布施を寄越せってことだよね? 前も寄付のことを話していたけど結局そこに行き着くんだね……
皆も顔を見合わせて何か考えているようだけど――あ、アズールとメドーサが立って箱に向かったね。
「ふむ。Zクラスの中にも信心深い者がいるではないか。その気持ちを今後も大事にって! 貴様ら何をいれとるか!」
「紙くず」
「石ころ」
「帰れ!」
ゼミラル司教に怒鳴られて二人とも席に戻っていくね。
「んだよ。入れろっていうから手持ちの入れたってのによ」
「理不尽よね」
「黙れ! 貴様らオツムが弱そうだからハッキリ言ってやる! ここにお布施をしろと言ってるんだ!」
あ、言っちゃった。
「あの、まだ学生である僕たちにお布施を要求するというのはどうなんでしょうか?」
「貴様らは本当にわかっとらんな。学生だからこそ世の中の常識を知っておく必要があるのだ!」
「お布施は善意で行うものであり強制的に行うような常識は存在しませんとお答えします」
反論した僕に倣うようにメイリアも指摘してくれたよ。実際そのとおりだと思う。
「クッ、こいつら揃いも揃って小憎たらしい。これだからZクラスは底辺なのだ!」
不機嫌な顔を見せる司教だけど、僕たちがZクラスなことと、お布施をしないことと直接は関係ないよね。
「ハハッ、そちらの教会は相変わらずですね。お布施や貢物を重視させそれに背けば蔑ろにする。本当に立派な考えをお持ちのようで逆に感心しますよ」
「何だと?」
ゼミラル司教の視線がドクトルを射抜いた。だけどドクトル自身は顔では笑っているけど目が笑っていなかった。
「チッ、神の有り難さもわからぬとは不埒な連中だ。貴様らなどに治療魔法が使えるわけがない。こんな連中まで相手しなければいけないとは、これから先が思いやられる」
結局最後はそんな文句だけを口にして司教たちは帰っていったよ。ん~少なくともこの時間は授業とは言えなかった気もするんだけどね――
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