第379話 魔力0の大賢者、叱責を受ける
「まさかタイムとはな。今更何をしたところで無駄だろうに」
レッド先生が小馬鹿にしたように言ってきた。アニマの得点があり逆転はしているけどもう僕たちにCクラスが負けるわけ無いと考えているようだね――
「……無様だな」
イロリ先生の前に揃った僕たちを見るなり先生が呟いた。試合を見ていた先生からしても僕たちの試合ぶりは褒められたものではなかったようだ。
「僕が悪いんです。もっと注意して挑んでいればイエローカードなんてもらわずに済んだのに」
「別にマゼルが悪いわけじゃねぇだろうが。イエローカードなら俺だって貰ってるし」
「俺だって貰ってしまった。結局一枚も貰ってないのはアニマだけだな」
「わ、私は運がよかっただけで……」
ガロンの言葉にアニマが手を左右に振って答えたよ。
「ま、確かにこの中で一番情けないのはマゼル。お前だな」
そんな僕たちの会話を聞いていたイロリ先生が断言した。やっぱり僕が不甲斐なかったよね……。
「わ、わかってます。だからもう反則を取られないように注意して」
「馬鹿かお前は」
先生に指摘され考えを伝えるとそれを一蹴するように先生が言い放った。
「えっと、それは……」
「俺が情けないと言ってるのはその姿勢だ。イエローカード二枚貰ったぐらいでビビって萎縮しやがって、とんだ腰抜けだなお前は」
「腰抜け……」
イロリ先生に言われて心にズシッと重りを乗せられたような気持ちになった。だけど先生の言うとおりだ。イエローカードを後一枚貰えば退場になってしまう。そんなことばかり考えてしまって思い切った動きができなかった。
「マゼルよ、お前はこれまで散々非常識な真似しておいて今更なに常識人ぶってんだ阿呆が」
「え? 僕、非常識でした!?」
先生のその一言が割とショックで皆を見たけど何故か目を逸らされたよ!
「ま、マゼルだけじゃねぇがな。アズールお前もだ。お前は大賢者を超えるなんて大層なこと言ってる割にこんなところで何日和ってんだ」
「グッ!」
先生の指摘にアズールが喉を詰まらせた。その大賢者と呼ばれていたのが今叱られてる僕なんだけどね……。
「いいかテメェらよく覚えておけ。お前らはZクラスなんだよ。学園の最底辺。いつだって崖っぷちなんだ。そんなテメェ等が後ろ向きで何か変わんのか? 一歩でも後ろに引いたらテメェらなんざ真っ逆さまに落ちてくだけなんだよ」
「さ、最底辺……」
「崖っぷちか……」
「……チッ」
先生がハッキリと口にし僕も思い知らされた。あのリカルドのことだ。この学年対抗戦でも結果を振るわなければ退学を言い渡してくるかもしれない。
「ま、この中で唯一評価出来るとしたらアニマか。お前だけがこの状況を打破するために動いていたからな。だがそれ以外は駄目駄目だ。このままやっても無様に負けるだけだろうよ。なんならもうやめるかお前ら? 俺はそれでも構わないぞ。面倒が減るしな」
「――いえ、やります! やらせてください! このまま皆に迷惑を掛けたまま終われない!」
先生の厳しい叱責、それを聞いておめおめと引き下がるわけにはいかない。それに――先生がここまで僕たちの為にはっきり言ってくれたのは初めてだ。ならそれに答えないと。
「マゼルの言うとおりだぜ。俺も情けねぇぜ。自分で自分に火をつけてやりたいぐらいだ!」
「いや、それはさっきやったと思うが、だが先生の言うとおりだ」
「う、うんそうだね! でも反則に気をつけないといけないは確かだよね」
「クゥ~ン……」
「ピィ~……」
皆がやる気になっている。だけど確かにそれも問題ではある。でもだからって遠慮していられない。
「……お前らが本気で勝つつもりなら次は多少はフォローしてやるよ」
そんな僕たちの心を見透かしたようにイロリ先生が言った。それは今の僕たちにとって何よりも頼りになる言葉だった。
「イロリ先生ありがとうございます! 先生がそう言ってくれるなら百人力です!」
「チッ、多少だって言ってんだろうが。過剰な期待しているんじゃ……」
「よっしゃ! こうなったら相手をぶっ飛ばす気持ちで行くぞ!」
「本当にぶっ飛ばしたら駄目だからね」
「だがこれで遠慮はいらないな」
「話聞けお前ら」
やれやれと言った様子で先生が言っていたけどそれでも僕たちはイロリ先生を信じているんだ。
こうして試合は再開された。Cクラスからの攻撃。だけど僕はすぐに相手のボールを取り返した。
「おい! イエローカード野郎! 随分と張り切ってるようだがいいのか? 次食らったら――」
「もうそんな言葉に惑わされないよ」
男子生徒が囁いてきたけどもう耳を貸さない。僕はCクラスの生徒を抜き去りシュートエリアに向かった。
「行かせない!」
「注意をこっちに向けすぎだよ」
言って僕は後ろにパス――猛ダッシュで近づいてきていたアズールがパスを受け取りそのままシュートエリアに入り見事得点を決めた。
「ヨッシャアアァアアアアアァアアアアァアアアア!」
アズールが全身で喜びを表現していた。それだけ嬉しかったんだろうね。そしてアズールも完全に吹っ切れた様子だったよ。
「こいつら……」
「調子乗りすぎよね」
「あぁ、そうだな」
Cクラスの生徒の恨みがましい視線が降り注ぐ。だけど関係ないよ。そしてCクラスの攻撃。僕の近くでボールのやり取りが繰り広げられ女生徒がそのまま突っ込んできて僕の眼の前に来たのだけど――
「キャァアアアァア!」
「え?」
突如女の子が悲鳴を上げて派手に転んでみせた。そして頬に手をやったまま涙目で僕を睨んでくる。頬は赤く腫れていた。
「こいつ私を殴った! 殴ったんだ!」
そんなことを女の子が言ってきた。当然僕はそんなことをしていない。だけど女の子は目に涙を浮かべて僕がやったと叫び続けている。
「テメェ女を殴るなんて最低だな!」
「先生これはどうみても反則ですよね」
「勝てそうにないからって暴力に訴えるなんて流石ゴミクラスだな。この卑怯者!」
「ひでぇぜZクラス!」
「こんなの大問題よ!」
話を聞いていた他の生徒も僕を見て非難してきた。そしてレッド先生がポケットに手をいれる。
「これは決定的だな。三枚目など関係なくレッドカード――退場だマゼル・ローラン!」
上に掲げられたレッドカード――先生は退場だと言っている。そんな、こんなことで――
「やれやれ。言った側からこれか。ま、約束した以上仕方ねぇな」
その時、イロリ先生が静かにこっちに近づいてきた。そしてレッド先生を前にして髪を擦りながら口を開く。
「その判定、異議ありだレッド――」




