第367話 魔力0の大賢者は注意喚起される
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「確かルルは風紀委員の長をしているのだったな。納得出来るであるぞ」
そう言ってシェリー先生が笑った。ウィンガル先生も規則に厳しそうな人だったからね。
「僕も納得出来ました。教えて頂きありがとうございます」
「これぐらいどうということはないぞ。さて他に何かあるかな?」
僕の質問に答えてから更に皆に問いかけるシェリー先生。するとリミットが口を開く。
「先生。その手に持ってる鏡はなんですか?」
「これであるか? これは八卦鏡と言うてな。僕にとっては杖と同じ、いやそれ以上に大事な導具であるぞ」
僕の質問を皮切りにリミットが質問を重ねてそこからは皆もシェリー先生に質問を投げかけていた。おかげで大分空気が和やかになったかもね。
「おい、そろそろ授業が終わる時間だぞ」
「ほう。もんそんな時間であったか。いやはや随分と有意義な時間を過ごさせてもらったものだ」
イロリ先生が指摘したことでシェリー先生への質問の時間は終わりを告げたよ。確かにもう授業も終わる時間だね。シェリー先生も本校舎に戻らないといけないみたいだからここで一旦お別れとなるみたいだ。
もっともこれからウィンガル先生と合わせて授業でお世話になると思うんだけどね。
「ところでマゼルであったな。一つ手伝ってほしいことがあるのだが良いであるか?」
「はい。勿論です」
シェリー先生に頼まれて僕は一旦一緒に教室を出ることになった。だけど手伝いって何だろう? 廊下に出たけど特に何かありそうに思えないけど。
「えっと何を手伝えば?」
「はは、済まないであるな。あれは方便であるぞ。ちょっと話しておきたかったものでな」
つまりシェリー先生は僕と話がしたいから手伝って欲しいと言って誘い出したってことか。それってつまり他の皆には聞かれたくない話ってことなのだろうか。
「えっと、話というのは?」
「うむ。結論から言えば今のクラスには注意した方がいい。それを先ずは伝えたかったのだ」
「え? その気をつけるって……どういう意味ですか?」
シェリー先生の言っている意味をすぐには理解できなかった。まだ一緒にいる時間こそ短いけど僕にとってクラスメートは大事な仲間だ。
「ふむ。少し不機嫌になったか。言い方が悪かったかもしれないな。僕が言いたいのは陰陽的な意味での注意喚起でな。Zクラスにおいて陰陽のバランスが最も優れているのはお主であったので言っておくべきだと思ったのだ」
どうやらつい顔に出てしまったいたようだね。確かに皆を疑われているように思えてちょっと気にはなったのだけど陰陽的な意味か――
「僕が席替えを優先させたのも陰陽の乱れを感じていたからなのだ」
「乱れですか?」
「うむ。もっともこのクラスはそれぞれの不安定な要素が絶妙なバランスで補い合っている。其の上でお主という優れた存在がいるのでな。すぐにどうということはないだろうが念の為陰陽のバランスを考えて席替えをしておいたわけであるぞ」
確かにその点に関しては席替えをした後も皆に説明していたね。ただ気をつける必要があるとまでは言ってなかったね。これはシェリー先生なりに気を使ってのことだったのかもしれない。
「でも気をつけるって一体何をですか?」
「わからぬ」
「へ?」
い、意外な答えだったよ。まさかシェリー先生にまでわからないなんて。
「僕がわかるのは陰陽の流れ。故に陰陽のバランスを取る為の手段を取ることは出来る。しかしその理由は人それぞれ違うもの。僕の陰陽魔法も人の心魂までは図りきれぬのだ」
それがシェリー先生の答えだった。つまり陰陽的に不安定なのもわかるしある程度それを解消する手段を取ることが出来ても根本的な解決となると難しいということみたいだね。
「とは言え――クラスでも途中で話はしたがそれぞれに何かを抱えているのは確かだと思われる。其の上で敢えて言うならばドクトルという生徒とシアンという生徒、この二人が今のところかなり危ういとも言えるであろう」
シアン先生が言った。危うい――確かドクトルは一番右端の席に、シアンは一番左端の席に移動していたけどそれが何か関係あるのだろうか――
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