第366話 魔力0の大賢者は責任が取れる?
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「お前たちが中途半端に刺激した結果、魔獣どもが更に暴れるリスクだってある。その時に死傷者が出たとしてお前たちは責任が取れるのか?」
次にウィンガル先生が話した内容は一瞬ドキッとさせられるものだった。魔導遊園地の内での魔獣騒動――当然僕たちも避難を優先させ少しでも被害が大きくならないよう務めたつもりだけど結局今の僕たちは一学生に過ぎない。
何かあった時に責任取れるかと言えばそれは否だ。
「先生の言っていることもわかりますが、だからといって何もせず見過ごすことなんて出来なかった。僕はかつて父と災害現場に同行し医療の手伝いをしていたことがあります。勿論場所によっては未だに危険な場合もありましたがだからといって今そこで命の危機にさらされてる被害者を放置なんて出来なかった」
そこで口を開いたのがドクトルだった。それにしてもまさかドクトルにそんな過去があったなんてね――
「話にならんな。貴様の話は責任ある父親がいたことが前提だ。逆に聞くが貴様が一人でその場に居合わせたとしても自分一人だけで解決しようとしたのか?」
「え? あ、それは……」
ウィンガル先生の問いかけにドクトルが口ごもった。それを言われてしまうとドクトルも言い返す言葉がないようだね……。
「そういうことだ。所詮お前らはまだまだ未熟な子どもでしかない。マゼルお前もだ。高々十数年生きてきた程度の子どもが出来ることなど高が知れてるのだからな」
ウィンガル先生が僕に指を突きつけて指摘した。だけどごめんなさい。転生前を含めれば二百年以上生きてたりします……。
「とにかくだ」
「まぁまぁ、もうその辺でいいのではないかい? まだ初日なのだから」
まだまだいい足りなそうなウィンガル先生を制したのはシェリー先生だった。
「それに今回は挨拶程度で済ます予定であっただろう。そろそろ戻らねば総団長にどやされてしまうのではないか?」
「ムッ、言われてみれば」
シェリー先生に指摘されウィンガル先生が懐中時計を取り出して時間を確認したね。
「しまった! 私としたことがつい長々と。このままでは予定時刻を3.12秒過ぎてしまう」
「な、何かすごく細かい数字が出てきたわね……」
メドーサが疲れた顔で言った。ウィンガル先生は自分に厳しい人みたいだね。
「とにかく私が教える以上! 今後は徹底的に規則を叩き込むからな覚悟しておけ!」
最後にそう言い残してウィンガル先生が出ていこうとしたのだけど。
「て、シェリーお前も早く来い!」
「僕はまだ刻に余裕があるのでな。彼らともう少し話してみたいのだ。そんなに手間は掛けないのである。先に戻っていてくれまいか」
「むぅ、何を勝手な」
「良いのか予定を過ぎてしまうぞ?」
「ムッ、仕方ない。早く戻れよ!」
こうしてウィンガル先生は一足先に教室を出ていった。残されたシェリー先生は妙にニコニコしている。
「済まなかったのである。もうわかったと思うが彼は頭が固くてな。僕はそこまで小煩いことは言わないつもりであるから安心して良いぞ」
そこまで話した後、シェリー先生がイロリ先生を見た。
「さて、もう少しだけ話してみたいのだが宜しいであろうか?」
「構わないさ。俺が授業する手間が省けるだけだからな」
イロリ先生が許可したけど、皆の顔が、いや授業しないのかよ! と突っ込んでるようでもあったよ。
「でもよぉ。俺たちと話って何があるんだよ。あんたらからしたら俺等は厄介物の問題児なんだろう?」
「アズールってばやさぐれてるわねぇ」
不機嫌そうに話すアズールを見てリミットが呆れ顔で言った。アズールはさっきのウィンガル先生の話を気にしているようだよ。
「安心するが良い。僕はあそこまで口うるさい事を言うつもりはないのである。寧ろあの堅物が相手だからこそ選ばれたと言えるほどだからな」
顎を擦りながらシェリー先生が答えた。どことなく親しみやすそうな感じはあるかもしれない。
「さて、何か質問などあれば受け付けるがどうであるかな?」
そしてシェリー先生が僕たちに問いかけてきた。本当に僕たちと話したくて残ったということだろうか。
「いきなり質問と言われてもな」
「なんでも良いぞ。どんな質問でも僕が風水的に答えて見せようぞ。それに若さ故の悩みもあるのではないか? 恋愛や勉強や、もしくはそれ以上に何か秘めた悩み――とかのう」
シェリー先生が口にした最後の言葉、秘めた悩み――それを聞いた瞬間クラスの皆の様子が変わった――気がした。
「ふむ、質問はなしか」
「あの、ウィンガル先生に絡むことでもいいですか?」
気のせいか空気が重くなってきた気がしたので僕から質問することにした。少し気になっていたからね。
「構わぬぞ。僕の答えられることならであるが」
「えっと、実は気になっていたのですがウィンガル先生のキャンベルという家名に聞き覚えがありまして、もしかして風紀委員長と関係が?」
「ふむ。そんなことであるか。マゼルの考え通りであるな。ルル・キャンベルはウィンガルの姪であるぞ」
あ、やっぱり血縁関係があったんだね。そう考えるとお互いに規則に厳しいのもわかる気がするよ――
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