第362話 白熱した試合?
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「行きます!」
僕はフェイントを交えながら師匠の隙をつき脇から抜き去った。
「よし!」
「甘いよんマゼル♪ こちょこちょこちょこちょ――」
「ふぇ、ひゅ、ちょ、あははは! ま、し、せんせい、それはあははははは!」
突如脇腹に訪れるくすぐったい感触。師匠に使役された風の精霊が僕の脇腹をくすぐっていたんだ。
「ひぅぅぅうううぅぅう――」
――ピイィイィィイイ!
僕が倒れると同時に笛の音がなった。ならしたのはゲシュタル教授のゴーレムだった。
「ボールアウトです。攻守交代」
それがゴーレムの判断だった。そう師匠にくすぐられたことで思わず僕はボールを落としてしまった。このゲームは攻撃側は常に杖を利用してボールを保持していなければいけない。
その為、ボールを落としてしまうと一旦ゲームが止まり攻守交代となってプレイ再開となるんだ。
「まさかマゼルがボールを落とすとはな」
「はは、ごめんごめん」
「ま、仕方ないぜ。とにかくディフェンスだ」
ボールアウト後は三十秒以内に各自準備をしてからの再開となる。攻撃側は攻撃に有利になるよう動くだろうしディフェンス側も守り切るためにフォーメーションを考える必要がある。
「マゼル。お前はもっと下がれ」
イロリ先生が僕に指示を出した。言われた通り僕は更に下がる。
「先生、マゼルをそんなに下げるんですか?」
「そうだ。マゼルならそっからで狙えるだろうからな」
ドクトルの疑問にイロリ先生が答えた。狙える――それってもしかして。イロリ先生の言っている意味を考えるとほぼ同時に笛が鳴りゲームが再開する。
ボール保持者がメドーサに変わってのプレイ再開だった。
「パスよ!」
メドーサがすぐに後ろにパスを出した。パスを受け取ろうとしていたのはメイリアだったのだけど――
「よっ!」
「マゼル!?」
「う、うそ、あんなに離れていたのに――」
メドーサとアニマの驚きの声。そうイロリ先生は僕に離れろと指示していた。だからゲシュタル教授のチームも僕にパスを取られると思ってなかったんだろうね。
「しまった僕としたことが。マゼルは瞬間移動の魔法も可能だったね」
ゲシュタル教授の感心したような声が聞こえた。いや、それは本当に急いでボールに向かっただけなんだけどね。
さて、直接ボールを取ったことで試合も止まらないで済んだ。後はそのままボールを保持してシュートエリアに向かったのだけど。
「させない――」
僕の後ろからメイリアが迫ってきた。流石に対応が早いね。だけど――僕は更に加速して見せた。メイリアは以前見せてくれた球体を使い僕のボールを奪おうとしてきたけどそれも躱して、よしシュートエリアだ!
「シュート!」
的目掛けて杖を振ると飛んでいったボールが的に命中した。
「ゴール! イロリ先生チームに一点」
ゴーレムが得点を知らせるとシアンがボードに一点を加えた。これで一対〇だね。それからも試合が続いた。時には師匠の精霊に脇腹をくすぐられ時には師匠に脇腹をくすぐられ、いや何かくすぐらればっかりだよ僕! そして――
――ピイイィイィィイイ!
試合終了の笛の音がなった。結果は三対三――引き分けだった。
「あ~あ、今回は勝てると思ったんだけどね。残念。でも楽しかったよ」
「ふん。俺は疲れ損だ」
試合が終わりイロリ先生に笑いかけるゲシュタル教授。イロリ先生はそっけない態度にも思えるけど、どこか爽やかさも感じさせるよ。
「はぁ、疲れた。それにしてもアニマのペットがボールとってもオッケーだとは思わなかったぜ」
地面で仰向けになりながらアズールが言った。そう試合中はシグルとメーテルもディフェンスに参加していた。
それに最初アズールもルール上問題ないか指摘していたけど――
『アニマは魔法で動物を使役している。だからシグルとメーテルも魔法と変わらない扱いになるからな。問題ないんだよ』
それがイロリ先生の答えだった。今回の試合では対戦相手だったけどクラス対抗の試合になればこの要素はプラスに働くね。勿論それは相手側に似たような魔法を扱う人がいても一緒なんだけどね。
「てかマゼルもパスカットは上手いけどよ。もっと魔法でガンガン守って良かったんじゃねぇか?」
「あはは……」
アズールに不満そうに言われたけど仕方ないんだよね。そもそも僕のは魔法じゃないから魔法で妨害ということが出来ない。パスカットなら杖で取ればいいから問題ないんだけどね。
まぁでも終わってみれば楽しかったね。こういう競技もいいものだね――
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