第359話 魔力0の大賢者、試合をしたくても出来ない?
とにかくイロリ先生に指名されたので知ってる限りのルールを説明した。魔導球について基本的には――
・ゲームは5VS5で行う。
・試合は前半40分後半40分で途中でハーフタイムが15分とられる。
・相手チームの的に魔導球を当てると得点。
「――というのが基本でボールは用意された専用の杖を使って操るらしいんだよね」
僕の説明を聞いた後、全員が杖を手にとってまじまじと眺めていた。
「これでこのボールをどうするんだ?」
「魔力を込めて操るんだよ」
イロリ先生が杖をボールに近づけるとボールが杖に引き寄せられた。ボールは杖と一定の距離を保ったまま浮遊し続けている。
「魔力の込め方でシュートの起動も変わる。この杖を使って魔導球を操る分にはどんなやり方でも問題ない」
「だとしてこの球を持ってる間、魔法はどうしたらいいんだ?」
「魔導球を保持している間は他の魔法は使えない。それがルールだ。その分他の奴でボールを持ったアタッカーをサポートするんだよ」
「サポートする役目の選手はサポーターと呼ぶようだよ」
先生の説明に合わせて僕も補足した。攻める側はアタッカーとサポーターの連携が大事になるみたいだね。
「ついでに言えば守る側はディフェンダーだ。基本だから覚えとけよ二度と言わないからな」
最初は面倒くさそうにしていたイロリ先生だけど結局は教えてくれているよね。
「よっしゃ! だったら俺が誰よりも前に出て全員蹴散らすぜ!」
「言っておくがサポーターがアタッカーより前に出るのは反則だからな」
張り切るアズールにイロリ先生が釘を差した。そうこの競技はアタッカーは常に先頭でないといけない。
「アタッカーになったらずっとそのままってこと?」
「パスは後方にのみ認められている」
「それだとパスしたアタッカーが先頭になってしまうが?」
先生の話にガロンが疑問を呈した。
「パスした場合は五秒以内に後方に下がれば反則を取られないんだよ」
「それって逆に言えば五秒以内に下がらないと反則を取られるってことなんだね」
ハッとした顔でリミットが述べた。
「そうだな。そしてパスをした相手をディフェンダーが魔法で妨害することだってある。当然相手もボールを奪おうとしてくるからな」
ディフェンダー側はアタッカーやサポーターに対して魔法で妨害したりして守ってくる。特にアタッカーは集中砲火されやすい。サポーターはディフェンダーの守りを崩したり妨害を封じたりするのに魔法を使うわけだね。
「なんだかよくわからねぇけどよぉ。とりあえずやってみようぜ」
アズールがウズウズした顔で言った。確かにこういうのはやって慣れたほうがいいのかもね。
「ちょっと待って。やるにしても私たち全員で九人しかいないじゃない」
「うむ。これでは一人足りないな」
そう言ってメドーサが眉を寄せた。ガロンも確かにといった顔を見せる。
「先生一緒にプレイしてもらえませんか?」
「なんで俺が。大体得点係や審判を務めるのも必要だろう」
言われてみれば……そうなるとちょっと足りないかもね。
「メイちゃん! 何かいい手は無いかな?」
「私の名前はメイリ――」
「メイちゃんどうかな?」
「…………」
リミットの呼び方に何かいいたげなメイリアだったけどリミットがニコニコ顔でフレンドリーに接するからちょっと戸惑ってそうだね。
「……とりあえず三対三でプレイしてみることを提案いたします」
そしてメイリアが考えを述べた。確かにとりあえずは今できる人数でやってみるのがいいかもね。
「なるほどな。それならいけそうか」
「先生に審判お願いしていいですか?」
「ふざけるな。そんな面倒なのはごめんだ。メイリアお前がやっておけ」
「わかりましたとお伝えします」
「だったら先生は何をするんだよ」
「寝てる」
「答えになってないわよ」
そして話し合いの結果イロリ先生は得点係となった。
「全くなんて俺が……」
先生は不満そうにしていたけどしっかり得点係をやってくれるみたいだね。僕たちもルールを確認しながらプレイする。
「すごいマゼル。杖にボールがピタッとついてるよ」
「あれそんなに難しいのか?」
「それをずっと続けているのが凄いのよ」
「魔力制御が完璧なんだね」
「あはは……」
皆に感心されてるけど、細かくバランス取って落ちないようにしてるだけなんだよね……。
「てかさ。マゼルなら直接こっから的を狙えるんじゃね?」
「それはルールで禁止されていますとお答え致します」
アズールが的を指さして言ったけどそれはメイリアが否定したね。
「そうなのか?」
「的を囲むようにラインを作ってあるだろう。そこがシュートエリアだ。的を狙えるのはそのシュートエリアに入ってからだ」
イロリ先生が補足してくれた。つまりアタッカーはシュートエリアまではなんとかして進まないといけないわけだね。
「なんで直接狙えねぇんだよ。面倒クセェなぁ」
「その場合、互いに直接的を狙い合うだけの試合になりかねない為、ルール上禁止されているとお答えいたします」
不満そうにしているアズールにメイリアが答えた。色々と考えられているんだね。
「あはは。なんだか懐かしいねぇ」
「ヤッホー~なんだか面白そうなことしてるねぇ」
僕たちが三対三で魔導球をしているところに突然の来訪者。それはゲシュタル教授と師匠だった。




