第358話 魔力0の大賢者は、魔導球のルールを把握する?
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「とりあえずこのあたりでいいか」
イロリ先生についていった先は山の中で比較的開けた一画だった。旧校舎からもそこまで離れていないし確かに丁度いいのかも。
というよりも何かあらかじめある程度準備されていたような、そんな気がする場所だよ。地面もしっかり均されているし。
「こんな何もないところで出来るのかよ?」
「文句をいうな。ほら、その的をそっちの端に立てておけ」
いいつつイロリ先生が片方の的を持っていた。アズールも言われた通りもう片方の的を持って行く。
「置くって適当でいいのかよ」
「そこじゃない。こっちの的から向き合うように設置するんだよ」
「……このあたりか?」
「こっちだと思うよアズール」
位置合わせに苦労するアズールを補助して二人で位置を合わせた。
「面倒くさそうにしていたわりに意外と細かいのね」
「め、メドーサそういうこと、あ、あまり言ってはダメですよぉ~」
メドーサが呟いたのを聞いていたアニマが慌ててフォローしていたよ。折角先生が教えてくれているのに考えを変えられたらまずいと思ったのかも。
先生は途中で投げ出したりはしないと思うけどね。
「しかし思ったより準備は簡単なのだな」
「おい。まだ終わってないぞ。立てた的からみて半径六メートルの半円をつくるんだよ。塗りにはこれを使え」
先生がそういって足元の缶を指さした。あれは先生が持ってきてたようだね。
「は、はんけ、い、六メートル、てことは……?」
「全く。そこは私がやるから下がってていいわよ」
小首を捻るアズールを見ながら呆れたようにリミットが言った。先生が持ってきのは魔法の塗料のようだね。これで地面に半円を描くようだよ。
先生側の方ではメイリアが半円を描いていたよ。
「先生他に何かありますか?」
「マゼルか。だったらこれを読んでおけ。基本的なルールぐらい知っておいてもらわないと面倒だからな」
最初に先生が見せてきた一枚の紙に目を通す。裏にも書いてあってよく見ると結構わかりやすくまとめられているね。
「準備は出来たがこのあとどうしたらいいんだ?」
「えっとそうだね。全員一本ずつこの魔導球用の杖を手にしてもらえるかな?」
「これだね」
ガロンに答える形で説明すると、ドクトルが先ず一本手に取り他に皆も杖を一本づつ持っていた。僕も一本もたないとね。
「…………」
「え? シアン持ってきてくれたの?」
僕が取りに行こうとするとシアンがやってきて杖を差し出してくれた。念の為確認するとコクリと頷いてくれた。
「ありがとうシアン」
お礼を言ってシアンから杖を受け取ろうとして、軽く僕の手がシアンの腕に触れたのだけど。
「――ッ!?」
ビクッと肩が震えシアンが慌てて腕を引っ込めた。その拍子に手を放してしまったのか杖が地面に落ちた。
「あ、ごめん! 大丈夫?」
「……なんでもない」
シアンの反応に僕も謝罪の言葉を述べる。だけどシアンは無表情に一言応えただけだった。地面に落ちた杖を拾うとシアンはそのまま僕から離れていったよ。
シアンは全身に包帯を巻いている。もしかして触れられると痛みがあるとかなんだろうか。だとしたら悪いことしちゃったかな――
「とりあえず集まれ」
イロリ先生の呼びかけに合わせてクラスメート全員が集まった。シアンの様子を見てみたけどいつもと変化はない。とりあえずは大丈夫だったんだろうか。
「シアン。もし痛みとかあったら言ってね」
「……大丈夫」
気になって改めて確認したけど一言で返されて話は終わった。見る限りは痛みもなさそうだしとりあえずは様子見かな。
「シアンちゃんもしかして怪我でもした? 大丈夫!」
するとリミットにも聞こえていたのか慌ててシアンの様子を見に寄ってきたよ。リミットはシアンと仲が良いからね。
「お前らうるさいぞ」
「でもシアンが」
「本人が大丈夫だっていってんだから大丈夫なんだよ。それとも授業止めるか?」
「いやいや! しっかり聞くから続けてくれ!」
「シアン何かあったら僕も手伝うからね!」
「こ、困ったことがあったら言ってね!」
「ピィ~」
「ガウ」
皆でシアンに心配ないことを告げた後、改めて僕たちは聞く体勢になった。
「じゃあ先ず基本的なルールからだな」
そう言った後、先生が僕を見た。
「えっと……」
「どうした。さっき見せただろう」
あ、やっぱり僕が説明しろってことなんだ。
「えっとそれじゃあわかってる限りで」
「何で俺等と一緒で初めてプレイするマゼルが説明役やってるんだよ」
「本当どうなってるのよ」
「あはは……」
アズールとメドーサが不満そうに言った。き、きっと先生にも考えがあるんだよ。そう思ってイロリ先生を見たら欠伸をしていた。えっとあるんだよねぇ?
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