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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第一章 幼年編

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第35話 魔力0の大賢者、ダンジョンを探す

前回のあらすじ

姫様に料理を振る舞ったら喜ばれた。


 明朝から僕たちは再びカッター領へと向かった。ヒーゲ男爵とヴァンも帰りは一緒で、トンネルのおかげで町までは午前中にたどり着くことが出来た。


 やっぱりあると便利だけど、トンネルでは賊も魔物も出ないからムスタッシュは不満そうだった。安全で便利になると冒険者の仕事が減るなんて皮肉なものだね。勿論長い目で見れば別な仕事が増えることになるのだけど。


「ところでこれからどうするつもりなのだ?」

「なんかあたいたちも付き合うことになったけどさ」


 町を出てから姫様が聞いてきた。破角の牝牛の冒険者も疑問の声を上げる。昨日冒険者ギルドにローラン家からという形で出した依頼は彼女たちへの指名依頼だった。指名の場合指名料はかかるけど見知った相手のほうがやりやすいしね。


 そして昨晩言っていたように姫様と騎士のタルトも一緒だ。ちなみに他の騎士は朝から父様に稽古をつけてもらっている。飛竜盗賊団を相手した時の父様の剣技に感服したらしい。

 

「はい。実はこれからダンジョン探しをしようかと思ってまして」

「……は、ダンジョン探し?」

「……またとんでもないことをしでかす予感がするよ」

「姉御、その言い方は失礼ですよ。奇跡をその目にできるのだと喜ばないと」

「確かに、それにダンジョンは聞いてるだけでわくわくするよ!」

「流石にアッシュはそういうのに目がないね」


 三者三様の反応を見せているね。あぁ、でも今日はアッシュさんには活躍してもらう必要があるかな。


「え~と、ダンジョンを探索するのではなくてですか?」


 タルトさんが再確認してきたね。うん、確かに普通なら見つかったダンジョンの中を探索して魔物を倒したり宝を見つけたりがセオリーだよね。


 ちなみにここで言うダンジョンは基本、神からの恵みとされているダンジョンのことだ。ダンジョンの出来る原理は解明されておらず、本当にダンジョンは唐突にどこかの場所に現れる。そしてダンジョンの中には魔物やボスと呼ばれる存在もいるけど、お宝も出現するようにできている。また貴重な鉱石がダンジョンに眠っていることもある。


 危険は勿論はらんでいるけどそれ以上にメリットが大きいのがダンジョンだ。ダンジョンから得られる利益だけで小さな村が大きな町に発展したって話もあるぐらいだからね。


 それとは別に魔窟と呼ばれるダンジョンに似た物もある。だけどこっちは悪魔の罠とも呼ばれていて、ダンジョンとは違い宝などは一切なく放っておけばどんどん魔物の数が増え、最終的には外に溢れ出しスタンピードを引き起こしてしまう。ダンジョンと違ってデメリットしかないから魔窟が出た場合はすぐにでも破壊しないといけない。


 そして今から僕が探すのは当然ダンジョンの方だ。ただ、ダンジョンを探すということにあまり馴染みがないのか皆小首をかしげてるね。


「確認ですが、ダンジョンを探すのですか?」

「そのとおりです。これからダンジョンを探し当てます」

「ダンジョンの発生は偶然によるものが大きいと思っていたが……」

「それ自体はそのとおりですね。ただ、ダンジョンが出現したときには特殊な気配を発するのは有名な話だと思いますが」

「「「「「「いや、そんなもの全然聞いたこともないし!」」」」」」


 あれ~? おかしいな~?


「でも盗賊魔法というのがあるんだよね? それがあれば可能では?」

「確かに盗賊に伝わる魔法はありますが……あ、そういえば伝承ではかつての大賢者様は元祖盗賊魔法でダンジョンを見つけたこともあったと残されてるのでしたな」

「そうそう。俺たちの扱う盗賊魔法のルーツがそれだよ」

「はい。なのでお兄様にダンジョンを見つけられない理由がありません」

「そういわれてみるとそんな気がしてきたわ」


 結局僕絡みの話で納得されちゃったよ。大体その盗賊魔法のルーツもあんまり納得できてないんだけどね。


「とにかく、今からダンジョンがありそうなところに行くことになるから、ここからは歩きになるけどミラノ姫は大丈夫ですか?」

 

 そう目的地までは森の中を進むことになるしそれなりに歩く。姫様の体力が心配だ。騎士のタルトさんや破角の牝牛の皆は問題ないと思うし、ラーサは僕に付き合って森に入ることはそれなりにあって、そのための魔法も覚えていたからそこまで心配はしてないんだけどね。


「もしよろしければフットマンの魔法も掛けますが――」


 ラーサが姫様に尋ねた。そう、これがラーサが覚えた魔法。旅魔法になるらしい。これを行使すれば歩く時の疲労が抑えられるのだ。


「ありがとう。でもとりあえず大丈夫だ。これでも城から抜け出して山を駆け回ったりしていたこともあったからな」


 あぁ~何故か納得できる。騎士のタルトさんは苦笑いだけどね。


 フットマンの魔法はラーサが自分自身に掛け、森を突き進んでいく。現れた魔物は適当にあしらっていったけど、途中から面倒になったから威圧しながら歩いていたら出なくなった。


「いやはや、あれだけの魔物があっさりと。大賢者様に恐れをなして遂に魔物もでなくなるとは」

「あぁ~でもこの辺りの魔物ならタルトさんでも楽勝ですよね?」

「確かにこれまでの魔物であれば倒すことは出来ますが……出てきた瞬間にふっとばすのはやはり大賢者様の魔法があってこそですね」

「お兄様にとってはあの程度の風魔法些細なことなのでしょうね」

「あれで風魔法というのだから驚きだがな」

「風魔法は専門外だけど、それでもあれがとんでもない魔法だと言うことは判る。本当勉強になるわ!」


 いや、それ違います。息で吹いて飛ばしていただけで風魔法なんかじゃないんですよ。しっかり物理です。だからこれで勉強しても何も得られませんよフレイさん。

 

 何か色々と誤解を受けながらも皆と一緒に僕は目的の場所に到着。


「うん、この辺りかな」

「この辺り? ただの岩山に見えるのだが……」

「どっからどうみてもただの岩山だな」

「う~ん、これがダンジョンというのは流石に無理があるかな」


 タルトさんや冒険者の皆が不思議そうな顔を見せたね。確かに森から少し離れた位置にあるこの場所はゴツゴツした岩山ばかりだ。一見するとダンジョンなんかさっぱり見受けられない。


 でも僕は確信していた。この場所に、ダンジョンはあります!


「みんな少し離れていてね」

「わかったわ」

「お兄様の頼みであれば!」

「また何か始まるのか?」

「奇跡の魔法がまた!」

「ふむ、一体何が見られるのか……」


 思い思いの言葉を呟きながら皆が距離をとってくれた。一応怪我がないようにはするつもりだけど念の為だね。


「よし、それじゃあ、はぁああぁあ!」


 僕は岩山の一つを殴りつける。すると派手な音が鳴り響き岩山が粉々に砕け散った。


「……今更かもしれませんが、大賢者様の魔法はむちゃくちゃですな」

「全く、見る度に驚きが上書きされていくぞ」

「はぁああぁ、感動です~」

「私などはもうこれが普通といった感じですね。お兄様は偉大ですから」

 

 何かまた色々言われている気がするけど、とりあえず崩れた岩山の先を見る。そこには――


「うん、やっぱりあったよダンジョンの入り口が!」

「うわ! マジだ! 本当にダンジョンが現れたよ!」

「……本当に見つけてしまうのですね」

「もしかして大賢者マゼルが創ったのではないだろうな?」

「お兄様の大魔法なら十分ありえることです」

「いやいやないない! 流石にダンジョンを創ったりは無茶だから!」


 全く。全知全能の神じゃあるまいし。ダンジョンを創るなんて流石に無理だよ


「しかし、一体なぜこんなところにダンジョンが?」

「う~ん、まぁ俗に言う隠しダンジョンみたいな感じだね」

「隠しダンジョン?」

「うん。ダンジョンは世界のどこかに突如出現するわけだけど、その場所は本当に気まぐれなんだ。今回の場合この岩山の断崖にダンジョンが出来たのだけど、その前には別の岩山が密着するようにそびえ立っていて隠れてしまっていた。だからダンジョンが生まれてからも見つかることなくずっとここにあり続けたんだ。そういうのを隠しダンジョンといって、そういった隠しダンジョンを見つけ出す人をダンジョンハンターというのは有名な話だよね?」


「「「「「「いやいや全然有名じゃないし!」」」」」」


 一斉に否定されたよ。あれ~? おかしいな~?

ダンジョンを見つけてしまいました。


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