第353話 操り人形
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「おめでたい頭だねぇ。僕がこうもあっさり正体を明かしたのはね、とっくに準備ができていたからさ。まぁこのタイミングでは考えていなかったけど、もういいかな」
そう言ってドミルトンが不敵に笑った。何だこいつ一体何を考えていやがる?
「――傀儡魔法・ドミネイトドール」
ドミルトンが両手を広げてそんなことを口にした。魔法、だって? 馬鹿なこいつ今詠唱すらしてなかったぞ。
「一体何の冗談――」
そういいかけた俺の言葉は途中で消失し俺はただ口をパクパクさせることしかできなくなっていた。身動きも取れない。指先の一つも動かせない――
「どうだい? 全く動けないだろう? もう君たちは僕の操り人形でしかないんだからね」
そう言ってドミルトンが薄笑いを浮かべた。これは、本当に魔法で――
「う~ん。何かいいたそうだね。わかったよ喋るのは許可してあげるよ」
言ってドミルトンが指をパチンッと鳴らした。
「な、何だこれ! ハッ! 声が」
すると俺の声が出た。こいつが許可したからってことか?
「お、お前、一体何したんだ!」
「魔法だよ。そう言ったよね?」
「いや、魔法って詠唱もしてないだろう!」
俺の横でパウワが叫んだ。そうだ俺もこいつの詠唱を聞いてない。
「詠唱、ねぇ。そんな面倒な真似、大魔の蒼月のメンバーは誰一人しないよ。僕たちの組織は無詠唱ぐらい出来ないと話にならないからね」
ドミルトンがあっさりとそう答えた。無詠唱だって? そんなこと実際に出来るのか? いや、だが実際俺たちは魔法に掛かってしまっている。
「何なんだお前。何でここまで出来るのに俺等に好き勝手させていたんだよ!」
「う~ん。僕の魔法はね執着があったほうが効率がいいんだ。別に魔力でゴリ押ししてもいいけど、それだと壊れやすいからね。だから敢えて君たちに虐められることで執着を持った。おかげで僕も扱いやすい人形を手に入れられたってこと」
そう言ってドミルトンがパウワを指差した。
「とりあえず僕を撮影していたそいつにお仕置きかな」
ドミルトンが声を掛けた途端、パウワがトーマを殴り飛ばした。そのまま馬乗りになりなすすべもないトーマを無言で殴り続ける。
「ま、死なない程度で終わらせるとして、後は君だクラーク」
ドミルトンの人差し指が俺に向けられた。
「お、俺をどうするつもりだ? まさか仕返しに、こ、殺すのか?」
内心ヒヤヒヤしながら問いかけた。今の俺はもう抵抗することも出来ない。
「殺す? あはは、そんなマネはしないよ。というかそれならわざわざ傀儡化しなくても殺せるよね」
笑顔でそう答えるドミルトンに恐怖を覚えた。こいつ、まさかギャノン先輩よりヤバいんじゃ……。
「ただ一つ覚えておくことだね。お前たちを今後生かすも殺すも僕次第って事をね。とりあえずはそうだな。いつも通りでいいかな。それとさっきの話、聞いてあげるよ。上げるのではなくあくまで貸しだけどね。金貨五十枚好きにするといい」
そう言ってドミルトンが俺の足元に革袋を投げてきた。袋の口が解けて金貨が数枚転がり落ちる。
「お前、本当にどういうつもりだ?」
「別に。ただまぁ、折角目をつけた傀儡があんなのに壊されるのも癪だからね」
「だとしても、お前ならギャノンぐらい、どうとでもなるんじゃないのかよ」
「あはは。もう先輩をつけ忘れてる。全くいい性格してるよ。でも、ま、そうだな。今はまだ泳がせてるってところさ。本来の目的を観察する意味合いでもね」
本来の目的だって? こいつら、一体何をしようとしているんだ?
「とにかく、そういうことだから。今後も精々僕のために頑張ってくれよ人形たち――」
ドミルトンがニヤリと笑いそう締めくくった。おかげでとりあえずギャノンに支払う目処はたったが、その為に失った物は想像以上に大きかったのかもしれねぇ――
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