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第265話 魔力0の大賢者、暴行を止める

「僕はマゼル。君たちこそこんなところでたった一人を大勢で囲んで何してるのさ」


 彼らに暴行を受けていたと思われる彼を見た。笑ってはいるけど怯えた子犬のような目をしていた。


「お前には関係ないだろうが。大体制服も着てないような奴が何でここにいるんだ」


 割って入った僕をジロジロと見ながら問いかけてきた。そういえば僕はまだ制服を支給されていない。


「待ってクラークさん。制服がないってこいつもしかして一年のZクラスじゃないですか?」

「あぁそうだ。確か今年から落ちこぼれを集めたZクラスが出来たって聞いたぜ」

「そうそう。噂によるとどうせ小テストで結果出せなくて退学だろうから制服も用意されていないってな」


 落ちこぼれって……外ではそんな風に言われていたんだ。おまけに制服が用意されていない理由がそんなことだったなんて……勿論噂レベルだろうから正しいとは限らないけど――思えば入学式の時から嫌な空気ではあったね。


「あん? 一年で更に落ちこぼれだぁ? そんな奴がよくも俺ら二年の邪魔してくれたな」


 クラークと呼ばれた男が拳を鳴らした。腕を鉄に変化させて殴りかかっていた男だ。

 

 二年ということは先輩に当たるのか。


「……一年も二年も関係ないよ。むしろ先輩ならもっと後輩のお手本になるように振る舞ったらどうなのさ?」

「――は、ははっ。おい聞いたかこいつ無能な分際で先輩の俺に意見を言いだしたぜ?」

「一年には命知らずもいたもんだな」

「いや無能だから格の差もわかってない馬鹿なだけだろう」


 クラークやその仲間たちが僕の発言を認め嘲笑ってきた。この手のタイプは学園に来て色々見させてもらったから慣れてしまったよ。


「おい一年。そのお前の度胸に免じて許してやるよ。さっさと行け」


 仲間と笑いあった後、クラークがそんな頓珍漢な事を言いだした。そもそも僕が割って入ったのは彼に対する暴力が見てられなかったからだ。


「別に許してもらう言われはないよ。むしろそっちこそ彼に謝るべきでは?」

「――はは、本当に小生意気な奴だ。大人しく引き返せば――後ろからボコってやろうと思ったのによ!」


 不意をつくよう鉄の拳で殴りかかってきた。密かに詠唱はしていたようだから何か企んでるなと思っていたけど随分と陰険なことだね。


「はっ?」


 だけど大人しく受けてやる必要もない。上半身を軽く動かすだけでこの程度の攻撃は避けられる。


「テメェ何避けてやがる!」

「大人しく受ける必要ないよね」


 そんなことで文句を言われてもこまるよ。


「この野郎が鉄拳制裁!」

 

 クラークが腕をブンブン振り回してきた。魔法で拳を鉄に変えて威力を上げてるようだけど正直体の動きがなってないね。


「ホイッ」

「ぐべっ!」


 相手の拳を受け止めつつそのまま受け流してバランスを崩してみせたら見事にコケてそのまま便器に顔を突っ込んだ。


「プッ――」

「クラークさん舐めプもいい加減にしないと」

「う、うるせぇ糞が!」


 仲間たちがクラークの姿に吹き出したり呆れた顔を見せたりしていた。


 額に血管を浮かび上がらせてクラークが立ち上がる。顔が濡れてるね。


「こうなったらマジでやってやんよ。鉄の巨腕、唸る鉄拳、鋼鉄の猛攻――グレートアイアンナックル!」


 詠唱によって新たな魔法を行使したようだね。クラークの鉄腕が膨張していく。さっきと比べて倍ぐらいに膨れ上がっていた。なるほどこれで避ける範囲を狭めたわけだ。


「これで逃げることは出来ないぜ死ねぇ!」


 学園でそのセリフはどうかと思うけど、だったら僕も――


「そこまで言うなら受けてあげるよ!」


 迫る鉄拳に合わせて頭を突き出し、頭突きで真正面からぶつかってあげた。


 頭の硬さには自信がある。ガツンッ! という衝撃音が響き、そして――クラークの鉄拳が砕けそのまま転倒した。


「ぐわぁああぁあああああ! 腕が俺の、う、腕がぁあああぁああ!」


 クラークが悲鳴を上げながらトイレの床を転げ回った。その様子に仲間たちが唖然とした顔を見せる。


「どう? これで少しは他人の痛みがわかったかい?」


 そんな彼らに向けて僕は言い放った。こんなことで反省してくれるかはわからないけどね――

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