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第247話 サーペント王国の教団

side ???


「――暗殺は失敗だ」


 狙撃型火銃(ライフル)を覗き込んだまま魔狩教団第三位ドグラ司教が呟いた。


 私は自分の目を疑った。ドグラ司教は教団における暗殺担当。対象は魔法使いは勿論、例え仲間であっても必要とあれば容赦なく始末してきた。

 

 これまで一度たりとも暗殺に失敗したことはない。それが今まさに失敗したと口にしたのだ。


「まさかドグラ司教が失敗とは。これからどうなされるおつもりですか?」

「……引き返すさ。これ以上ここに留まる理由はない」


 構えを解き立ち上がる。長身痩躯の体型であり腕が長い。故に火銃も特別性であり砲身が長い。


「しかし失敗して大丈夫でしょうか? 処罰など……」

「それはない。元々この任務は失敗したとしても深追いしなくていいと言われていた」


 その話に私は驚いた。魔狩教団は失敗には厳しい。


「意外に思ったか? それでも問題ない理由がある。俺がわざわざ隣国のここから狙ったのも失敗した時の退路を確保するためだ」

「それは一体?」

 

 思わず疑問が口に出ていた。


「大賢者などと煽てられて調子に乗ってるようだが今のあいつはしょせんが学生。おまけにこのサーペント王国は大賢者に対して懐疑的だ。まぁそれも奴の働きによるものだが」


 奴? 私はその人物に心当たりがない。


「大賢者がローラン王国の人間である以上勝手に国を渡れば問題になる。上手く行けばひと悶着起こせるだろう、が、それは無理なようだがな」


 若干悔しそうにドグラ司教が言った。何故無理なのか? と顔に出てしまったのか司教が更に続けてくれる。


「仲間がやってきて何かを話したとたんあの大賢者の表情が変わった。恐らく国境について聞いたのだろう。ならばもうここまで来ることはない」


 なるほど。それで引き返すにしてもあまり急いでいないのか。


「しかし、あのインビジ司祭を含めた連中は捕らえられますね。大丈夫なのですか?」

「あぁ。それも大丈夫だ。なにせ向こうには協力者がいる。こんな時のために教団側からも色々と便宜を図ってやってるのだからな」


 そうだったのか……私レベルでは知らないことが多すぎる。


「もっとも我らの協力者は各国にいる。勿論ここにだってな。それが我々魔狩教団の強みだ」

「なるほど。そう言われてみればマナール王国のメイドも協力者でした」

「あぁ。だがあの国にはまだまだ少ない。その上妙な制度を作って信者の洗脳を解くなどと愚かな行為に走っている。勿論我々がが黙ってはいないがな」


 冷たい笑みを浮かべつつドグラ司教が言った。


「しかし結局大賢者にダメージを与えることは出来ませんでした」

「……フンッ。今回はな。だが問題ない。今の奴など所詮はただの学生。学園にいる間は多少大きめな鳥かごに入れられたカナリアのようなものだ。いくらでも手のうちようはある」


 なるほど……確かに学園にいる以上やれることも限られる。


 我々が動くには都合のいい状況でもあるのか。


「今後何か仕掛ける予定はあるのですか?」

「――すでに作戦は開始されている。魔法学園という環境は愚かな思想が蔓延している分逸材も多いからな」


 それはつまり魔法に失望したり恨みを抱く連中ということだ。それが僅かな綻びであっても魔狩教団に掛かればこちら側の思想に近づけ信者にすることが可能だ。


「ま、ゼロの大賢者の再来だか知らないが、学園でのんびりできるのも今のうちだけだ。フフッ――」


 そう言ってドグラ司教が口角を吊り上げた。


 全くよりによって大賢者などと名乗ったばかりに、きっとこれからあのガキは死ぬよりもつらい目にあうこととなるだろう。


 そうなってから自分の愚かさに気が付いても後の祭りだがな――

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