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第107話 魔力0の大賢者、王子様と話す

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「本来なら僕の愛の電撃は女の子にしか打たないのだけど、今回のこれはそうだね、大賢者である君に敬意を(あらわ)してといったところかな」

「え、え~と、あ、ありがとうございます?」


 何だろう。つい疑問形な返しになってしまったけど、喜んでいいのかな?


「フフッ、しかし驚いたな。このような美しき姫君2人が、王国の英雄たる大賢者の愛人だったとは。でもそんなことは僕は気にしないよ!」

「へ?」

「あ、愛人……」

「……マゼルの、愛人――」


 ちょ、ちょっ! 突然何言ってるのこの王子! いやいやありえないでしょう。そもそも僕たちなんてまだまだ子どもだし、というかラーサに関しては妹だし!


「ふむ、しかし流石は大賢者だけあって、僕には少しだけ劣るかもしれないが中々の美しさではないか。それに僕ほどでないにしても非常に理知的で洗練された顔つきをしている。なるほど、勿論僕ほどではないにしてもこれだけの美少女を愛人にするだけあるな」

「お待ち下さい。その、それは勘違いです殿下」

「勘違い?」

「はい。ここにいるラーサは私の妹ですし、アイラとは親しくしておりますが、愛人などはとんでもございません。全くそういった関係ではありません」

「…‥うぅ、お兄様ならそう言われる気がしましたが……」

「……鈍感が過ぎる」


 2人の様子を見たけど頬を膨らませたり眉根を寄せたり凄く不機嫌そうだった。やっぱり愛人と言われたことが心外だったんだろうな。


「ふむ、しかし特に問題ではあるまい。兄妹で結婚することもそう珍しいことではないし、2人とも好意的に思える。それに大賢者の称号を得たのだから、妻の1人や2人、いや10人や20人は娶るぐらいの気概がなければな。勿論僕も君にまけはしないがね!」


 ビシッと指を突きつけられてそんなことを言われたよ……。

 

 いや確かに王国では複婚が認められているけどね。だからといって今からその話は流石に……。


「というわけで、どうかな? 僕はこの国の後の王だ。付き合っておいて損はないと思うよ」


 そしてナチュラルにまた2人を口説き出したよ……僕、ラーサの兄なんだけど、それに父様もいるのだけど――


「そ、そう言われても……」

「……断ると言ったはず」

「はっは、僕の身分のことなら気にしなくてもいい」


 な、何か微妙に会話が噛み合ってないと言うか、あまり人の話を聞いてないような。父様も流石に困った顔を見せているよ。


「もう! お兄様いい加減にしてください!」

「おおアリエル。どうしたもしかして嫉妬しているのかい?」

「してません! もう、なんでそんなに自分に自信が持てるの……ありえない」

「それは勿論、僕が完璧だからさ」


 ファサッと髪を掻き上げてヘンリー王子が答えた。す、すごい自信だ……。


「だいたいお兄様は手当り次第女の人に声をかけすぎです。節操がなさすぎてありえません」

「はっはっは。そんなのは当然じゃないか。目の前に麗しき女の子がいれば声を掛けなければ失礼にあたるというものだよ」

「……でも、覚えてない」


 ん? 覚えてない?


「うん? それは一体何のことかなセニョリータ?」

「……殿下とは前にも一度あってる。でも初めてあったような素振り」


 アイラに言われて、途端にヘンリー王子の表情が変わった。汗が滲み出ている。


「そ、それはあれだよ。うん、例え一度出会った女性であってもフレッシュな関係でいられるよう敢えて……」

「嘘です。そしてそれは十分ありえるのです。何故ならお兄様は手当り次第女の人に声を掛けますが、声を掛けた相手のことはすぐに忘れてしまうのです。ありえないのです!」

「な! そ、それはいいっこなしじゃないかマイシスター」


 う~ん、その話を聞いた途端、ラーサの視線も中々に冷え込んだね。父様も苦笑いするしかないって感じだけど、それでも王子様に話しかける。


「殿下のお目に叶うとは親としてこれほど光栄なことはございません。しかし、ラーサもまだまだ小さく、恋愛ごとなどを考えるにはまだ少しお時間が必要かと……」

「ふむ、7歳であったか? それであれば貴族の娘であれば考えても良いと思うぞ。こういったことは早いに越したことはない。しかし、何より大賢者の方が大事ではあると思うが」

「え? 私ですか?」

「そうである。僕ほどではないとは言え、容姿としては申し分なく、それでいて今をときめく大賢者だ。今からでもそれ相応の相手を見つけておくべきだろう。僕からすれば遅すぎるぐらいだ」


 そう言われても……正直自分の容姿も悪くはないのかなとは思うけど、そこまで言われるほどいいかはわからないし、それに友だちは多いけど恋愛に発展しそうな相手となるとね……大体僕は前世でも全くモテなかったからね! 


「せめてお兄様は声を掛けた相手ぐらい記憶できるようになってから偉そうにして欲しいのです」

「むぅ、て、手厳しいな……」


 アリエルが目を細めると、ヘンリー王子が黒目を萎ませて声のトーンを落とした。


 確かに折角声を掛けても覚えてもらえてなかったら相手は失礼と捉えるかもね……。


「しかしこうして大賢者と話せたのは僕にとって僥倖と言えるかもしれない。大賢者マゼルよ、折角だ僕の魔法も見てくれないか?」

「魔法ですか?」

「そう。こうみえて僕も【煌めく皇雷の貴公子】という名を恣にしているほどだからね」


 そ、そうなんだ。でもそういうのって自分で言っちゃうものなんだね。


「あくまでお兄様の自称なのです」

「ちゅ~……」

「……こういうところはかなり残念」

 

 自称なんだ……何かファンファンも呆れ顔に見える。それにしてもアイラも相手は王子なのに遠慮がないな~。


「でも、お兄様の雷鳴魔法が評価されているのは事実でもありえるのです。勿論大賢者の伝説的な魔法に比べたらたかが知れてるぐらいありえない魔法と思うのですが」

「ちゅ~」


 いやアリエル、それは僕を過大評価しすぎなのです……魔法じゃないもの。


「ふっ、そういうわけだよ。ところで君たちはいつ戻るのかな?」

「予定では明日の朝には出る予定ですな」

「ふむ、朝食ぐらいは摂っていくのだろう? 父上が用意するようなことを言っていたしな」

「は、ご厚意には甘えさせて頂きたく思います」

「決まりだね」

  

 ふふんっと髪を掻き上げつつ、ヘンリー王子が改めて僕に体を向けてきた。


「朝食前に軽い運動がてら、僕と魔法戦でもどうかな?」

「魔法戦ですか……」

「そうさ! 勿論魔法に関して言えば君の方が上だろうし、胸を借りるつもりでやらせてもらうよ」


 う~ん……どうしよう。相手はこの国の王子様だし失礼があってはいけないと思うけど、かといって断るのもやっぱり不遜な気もするし。


「殿下がこう仰っているのだ。折角だからこの申し出を受けてみたらどうだ?」


 どう答えようか逡巡していると、父様が僕の迷いを断ち切るように提案してくれた。父様がそう言うなら、ここは受けておいた方がいいのかもしれない。


 どう思われるかはやってみないとわからないけど、王子の雷鳴魔法にも興味はあるんだよね。僕は自分では魔法が使えない分、他の人の魔法は気になる。


「わかりました。魔法戦をお受けいたします」

「おお、いや良かった。ならば明朝楽しみにしているよ」

「ありえます! 私も見学しますね」

「も、勿論お兄様の勇姿は妹として放ってはおけません!」

「……興味深い、見逃せない」

「うむ、父として私もしっかり観戦させてもらおう」


 な、なんかみんなも見る気満々に…‥いや見られて困ることではないんだけどちょっと大げさかな……。


「ふふ、今から楽しみだよ。この僕の華麗かつ美麗かつ知的で優雅な王の威光を顕現した皇雷を見てもらうのがね! 勿論、同時にどれだけ通じるか、しっかり見極めさせてもらうよ」


 な、なんか最後は僕を試すみたいなノリで言われてしまったよ。


「それでは、マイハニーたちも明日こそ、ズキュン! ズキュン! ズッキューン! といかせてもらうよアディオス――」


 また人差し指を向けてあの擬音を言い残した後、薔薇を持った右手を掲げて去っていった。また僕にも打っていったね……。


 そしてその日の賜宴も無事終わり、僕たちは部屋まで戻ることになったのだけど。


「大賢者マゼルだったな。今宵はお前と話せて良かったよ」

「それは、どうもありがとうございます」


 宴は楽しめた筈なのに、最後にこの男に声を掛けられてしまった。とは言え相手はそれなりの立場の人間だから無下にも出来ないか。


「ところで私のことはもう聞いたかね?」

「はい。東の魔法学園で理事長をされているとか」

「うむ、そのとおりだ。私の学園では優秀な魔術師になれる逸材を常に探し求めている。そういう意味で言えば大賢者という称号は本来なら是非にといいたいところであるが、魔力が0ではな」


 どこか、見下すような笑みを浮かべている。どうやらこの男の中では魔力が全てなようだ。尤も、実際僕は魔力が0で魔法が使えないから仕方ないかな。


「……私は、特に学園については考えていないので」

「んん~? そうなのか? しかし大賢者などという称号を手にしておいて、学園にも通えないのでは示しがつかないのでは? おっとこれは失礼。そんなことは私が口出すことではなかったな」

 

 全くもってそのとおりだと思うよ。僕にとっては余計なことだ。


「しかし、これが一昔前ならば、コネでなんとでもなっただろうになぁ。本当に残念であるな」

「……一昔前?」

「うん? 何だ何も知らぬのか? はは、お前の父も随分と、いや、きっと色々あるのだろう」


 敢えてすべてを口にしないあたりが嫌らしいな。いい性格しているよ。


「まぁ、どうしても気になったならローランにでも聞いてみるのだな」


 そう言い残してリカルドは行ってしまった。別に学園のことについてはそこまで興味ないけどね――

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