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 戦争に関しては色々と問題が残りそうだが、とりあえず結果としては大勝利という形に終わった。賢哉たちも戻り、予定通り求めていた褒章をもらうことができた……が、それをもらうまでには色々と紆余曲折あった。そもそも賢哉という存在がまずいろいろと怪しい存在であるということ。それが王の命令で軍を率いるということになった時点で色々と怪しいしおかしい。これがフェリシアの父親とかならば納得がいくが、フェリシアの従者、あるいは雇っている立場にある人物というか、ともかくいろいろと怪しい。そのうえ今回の功績で貴族になることを約束されている、フェリシアとの結婚の許可などどう考えてもおかしい、怪しいと言わざるを得ない。まあ、そこにはアルヘーレンの家の娘であるフェリシアを欲しがる貴族たちの意思や、今回兵士を送り込んだ貴族たちが大した戦果を得ることができなかったという理由であったり、あるいは賢哉自身の異常さの問題があったという理由もある。そもそも戦場で賢哉の見せた活躍、魔法による大被害そのものが異常だ。普通の魔法使いはあれほどのことを行うことはできないのだから。

 と、そういったいろいろがあったものの、賢哉の成した戦果は確かなものである。その戦果を簡単に無視できるものではないし、事前に王との……密約、というほどでもないが約束していることもある。口約束のようなものではあるが、王という立場の人間が口に出したことを簡単に覆すわけにはいかない。仮にそれがあまり多くの人間にしられていなかったことだとしても。そもそも賢哉を貴族にすることは王国にとって悪いことではない。立場で縛る、領地を得ることで領民の保護という形で役目を持たせる、賢哉という存在の力の大きさやその危険性を理解していればそれを野放しにすることなど到底できず、王国に結婚や地位などでとどまらせなければならない。仮に戦果が正しく評価されずとも、それでも賢哉の存在を王国に縛り付けることは必須だ。そのためにフェリシアとの結婚を認めることはかなり重要となる。これに関しては賢哉とフェリシアの事前の話し合いのこともあるだろう。仮に許可を得なければこの国から二人で逃走するような可能性もありうるかもしれないのだから。なので問題なく賢哉は貴族となり、正式にフェリシアと結婚することとなったのである。

 その後のことであるが、開拓領地の発展の功績もあり、フェリシアも正式に貴族に戻る。爵位に関しては元々の公爵ではないが、あまりそこは重要ではないだろう。どちらかというと開拓領地は賢哉の側が領主、家の当主という扱いだ。まあ開拓領地は元々二人が領主と副領主という立場で発展させたものであるため、その立場が逆転したくらいでそれほど大きな問題ではない。また、これとは別の話になるがフェリシアの父母に関しては元アルヘーレンの領地へと戻ることなった。これは今回の元アルヘーレンの領地の防衛を彼らが担当してきたという事実を忘れその重要性を考慮しなかった貴族に領地を渡した結果攻め込まれた、また領地経営自体があまり良くない状態だったなどが理由であり、アルヘーレンの領地の立て直しをするうえでも彼らが行った方がいいと考えた結果である。こんな形で戻すならば最初から取り上げなければいいという話だが、後から言っても仕方のない話だ。二人が元の領地に戻るため、アルヘーレンから逃亡してきた流民に関しても多くは元のアルヘーレンの領地に戻る。もっともフェリシアの所の開拓領地に来た中には残る者もいたが。


 と、色々とあった開拓領地。今は正式な領地として税の問題であったり他領との付き合いの問題、発展の問題などいろいろとあるが、まず正式な領地の名前が決まっていない状態の問題もある。まあ、領地の名前に関しては治める貴族の姓になるのが一般的だが、問題は賢哉の姓。一応名字を持っているわけであるが、この世界においてそれを貴族としての姓にするべきか、という問題もある。まあ、それは今すぐ決めなければならないことではないだろう。


「ケンヤ様、どうかよろしくお願いします」

「…………フェリシア、これはどうしたらいいと思う?」

「流石にこれは……断れないと思います」


 そういった問題とは別に、賢哉……そう、賢哉に降りかかっている大きな問題がある。それは婚姻関連の話。

 正式に賢哉はフェリシアと結婚する、ということは決まっている。しかし、賢哉が正式に貴族になる場合、正妻、側室、妾など、貴族に許される一夫多妻がある。これはそもそも貴族の血を残すためであったり、家同士のつながりを作るためであったりが根本にある。単に女好きだから、という理由では……恐らくはない。まあ、その結果後継者問題が出てきたりもするが、やはり血を残すということや他の貴族とのつながりを作るうえでは大きな要素だ。相手の庇護を受けるために娘を贈る、というと少し外聞が悪いかもしれないが、よくある貴族のやり取りである。

 そしてそれは何も貴族だけに限った話ではない。今賢哉の下に、嫁入りという形での娘……若い末の娘で継承権もほとんどないような娘であるが、王族の娘が嫁としてきた。賢哉の立場は貴族としては下寄り、子爵である。流石に大功であるといっても一つの戦争の功績だけで伯爵になれるほど爵位は安くない。まあ、それでもかなりのものであるが。しかし、そんな子爵という立場で継承権が低いとはいえ、王の娘をもらうなど普通ではありえない。まあ、普通でないからこそそういうことになっているわけであるが。

 賢哉の存在に関して、王もかなり重要視しているということだ。それこそ娘を送り出してこの国から離れないようにするように婚姻で関係を結ぶ。王がそうしなければならないと考えるほど、賢哉の価値は大きい物である。そしてこの結婚に関し、賢哉とフェリシアは断ることができない。彼らの爵位では王からの提案を断ることはできない。一応新婚の二人の状況にこれはない、と思わざるを得ないがそれだけ王としても焦る気持ち、急ぐ気持ちがあったのだろう。ちなみに王の娘とフェリシアでは王の娘の方が当然立場は上だ。公爵家の娘であったならばまだ話は違うが、現状でフェリシアの爵位は男爵あたりのものである。それでも正式な結婚相手、正妻はフェリシアで王の娘は側ということになるが。ここは賢哉とフェリシアには絶対に譲れないことと王もわかっているゆえの扱いである。

 そして結婚に関しての話は彼女だけにあらず。正式に開拓領地が王国の領地となり、そこを賢哉が貴族となって治めるということになり、エルフやドワーフからも結婚し関係を深くする提案が来ている。


「…………その方が可能なら、こちらも」

「エルフもか。ドワーフからも来たが……」

「今の状況から変わることに対して、私たちも怖い…………大丈夫、結婚することになるのは私だから」

「何が大丈夫なんだ……」


 エルフからの結婚の打診で相手となるのはネーシア……らしい。まあ、賢哉との関係性を考えればおかしな話ではないだろう。一方でドワーフはそのあたりは話がうまくまとまっていない。


「…………はあ、せめてもう少し落ち着いてからにしてほしかったな」

「そうですね……流石にこれは」


 賢哉とフェリシアの二人にとってはそんな話しはいろいろな意味で頭が痛い。領地に関しては比較的順調で問題は少ないのだが、貴族となったことによる柵や他者との関係、人間関係の方で悩むこととなる。まあ、これは成るようになるしかないだろう。とはいえ、彼らは正式に結婚し、領地を治める立場となった。今までよりもできることは大きい。その分多くの責任も出てくるが、賢哉がいれば簡単ではないもののやっていけるだろう。まあ、その力ばかりを頼りにするのはよろしくないことだと思うが。


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