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 様々な出来事を交えつつ、五年目へと突入する開拓領地の生活。フェリシアが開拓領地へ来てその地を治める、その期限として国側が特に干渉してくることがないのが五年間。その五年間の月日がそろそろ過ぎようとしている。そもそも開拓領地は領地を治める貴族とはいない場所であり、明確に王国の土地として扱われている場所ではない。厳密に言えば王国の一部であるのは間違いないが、しかしやはり国の一部として扱うにはきちんとした領地としての体裁がなっていない。ゆえにそこに住む領民から税をとるようなことはしない。治める者もいないし管理する者もいないのだからむしろ当然であると言うべきなのだが、それが五年間で過ぎ去る……これはつまり、五年間で正式に領主と領地を認めるということになる。つまりそれが一種の貴族としての復帰、ということになるわけである。

 逆に言えば開拓領地を税を納められる程度に発展させなければならないということでもあり、それくらいの能力がなければ貴族としての復帰を認めるつもりもない、ということなのかもしれない。常識的に考えればそれはとても厳しい条件になるわけだが。フェリシアの父母はまだお金も供も多かったのでまだなんとかなったかもしれないが、さすがにほとんど持ってこれていないフェリシアには無理筋と言ったところだろう。むしろフェリシアにお金を残しなんとかやっていけるようにしない父母の気持ちが理解できないと思えるかもしれない。元々領地を治めその仕事を理解している二人に対し、フェリシアは一緒についてきた人員とお金くらいしか力となり得るものがないのだから。

 まあ、これはフェリシアの父母が仮にフェリシアがどうしようもなくとも自分たちさえ貴族に復帰できれば、フェリシアも娘であるがゆえにて元に戻せる可能性があるからと自分たち側だけでも貴族に復帰できる可能性を高め、フェリシアはどうなろうとも何とかできるようにという考えがあったのかもしれない。それ以前に襲い来る盗賊に凌辱され売られたり殺されたり心が壊れたりする危険があった、という時点でその計画はいろいろとミスが多いような気もするが、現状だけで見れば彼らの思惑はダメだったわけではないだろう。もっとも、そのフェリシアの開拓領地が一番発展しているのはいろんな意味で計算外だと思われる。逆に彼らの側の開拓領地の発展具合は相応に持ち込みがあったのにそこまで発展していない感じであり、彼らが貴族に復帰できるかは王国側の判断次第、と言ったところだと思われるが。

 そもそも王国側にアルヘーレンの人間を貴族に復帰させる意図があったかはわからない。一応アルヘーレンは今までの国への貢献や国土防衛に従事してきた姿勢、それこそ公爵として王族に婚約者を出せるくらいの貴族としての立場があったから相応に救済措置は必要だったわけであるが、色々ないみでアルヘーレンの立場は複雑であるだろう。むしろ国の側、王族側だけでなく他の貴族の意見なども交えられたか、ともかく普通じゃできないような内容が突き付けられているわけで、実際に本当に貴族に復帰させるつもりがあったかは不明である。まあ、出された条件さえ満たせば問題なく貴族に離れるだろう。そもそも開拓領地を発展させるのはそれくらいに大きな行いであるのだから。

 と、順調にいけばフェリシアは貴族として復帰、開拓領地を正式な領地として王国の貴族の一員に加わることとなっただろう。流石に貴族としての爵位に関しては恐らく一番下の爵位からになると思われるが、それでも貴族は貴族。それも領地を治める正式な貴族である。その立場に復帰できるのはいろいろな意味で大きいだろう。だが、それは順調にいけば……現在の状態、元アルヘーレンの領地に起きた隣国からの侵略、それらをきっかけにした王国におけるあまりよくない現状……そんな状態で通常通りにやっていけるはずもない。


「…………どういうことですか?」

「どうやら王国側から連絡があったようですね。お嬢様に王城へとくるように、と」

「………………どういうことですか?」

「私も正確にはわかりませんが……予想はできます」

「予想だけでも聞かせてください」


 フェリシアは今の所それほど大きな問題は起きていないと思っている。開拓領地を治めるうえで、法律的に問題になる行いは一応行っていない。まあ、人間の心理に多大な影響を与えるという点においては、元領民を引き入れていたり、商会を通じて余所から人員を引き込んでいたり、領地に亜人や魔族が住んでいる状態になっていることなど、問題は本当の意味でないとは言えないだろう。とはいえ、それを理由に王国がフェリシアを呼び出すかというとそうでもないだろう。そもそも開拓領地の現状にそこまで介入するような要素はない。それこそ他の普通の領地と同じくらいに魔族や亜人がいたとかであれば問題になるが、まだ小さな村で三つ四つ程度ならば問題視はされない……恐らく。まあ、開拓領地が近いこともあるし、引き入れていること自体はそこまで問題視はされないと思われる。

 ではなぜ連絡が入ったのか? 現在の元アルヘーレンの領地に関しての状態、そこから考えれば推測くらいはできるだろう。


「隣国からの侵略……それに対してアルヘーレンの力を借りたいということでしょう」

「それは理解できます。ですが、お父様やお母様、お爺様ならともかく……私が呼ばれる意味はありますか?」

「確かにお嬢様を呼ぶ必要があるかというと……あまりないと言わざるを得ません。ですが、他の人たちを呼ぶのにお嬢様だけを呼ばないというのもどうでしょう。向こうとしてはお嬢様には用がないとしても、他の皆様がいる以上呼んだほうが都合がいい……場合によってはお嬢様の身代を対価に要求をしてくるなどの強硬手段の可能性もありますが……あるいはこちらの開拓領地について直接話を聞きたいとか……まあ、考えられる点ではいろいろとあります。ですが、やはり一番は全員を呼び出すことに意味がある、のでしょう。現在の元アルヘーレンの領地のことを考えれば」


 王国側としても様々な思惑はあるが、ともかくフェリシアが呼ばれている事実自体には変わりがないわけである。そこになんの意図が、裏が、危険が潜んでいるからフェリシア側にはわからない。しかし、行かないという選択肢もない。流石に王城に呼ばれるということは王族に呼ばれているということであり、国の最高権力の要求を無視したり断るのは不可能だ。開拓領地は厳密に王国に属するわけではないが、王国の地という扱いであるし、いろいろな形で王国側の影響はある。

 それに父母が自分と同じように呼ばれているだろうという推測は成り立つし、向こうも開拓領地には手を出してこないだろうと思われていたのに困窮してか関わってきたわけであるのだから、少なくとも悪いようにはしない……と思われる。


「とりあえず行くしかありませんね……」

「はい、そうですね」

「ですが、身の危険のことなどを考えれば……供を連れていくことは問題ありませんよね?」

「…………何を考えているかはおおよそ察しました。ですが、もし連れていくのであれば……いろいろと話を詰めてからにしてくださいね?」

「はい…………伝えます。なんとか、説得して見せます」


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