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魔族も獣人も同じ場所から資源を得ているのであれば両者を混合してしまえばいい、というのは少々暴論だろう。そもそも同じ場所から資源を得ているからといってそれが二つのグループからになれば消費は二倍になるわけであり、そうなると枯渇も速くなる。まあ、元々は枯渇するから相手にはとらせないように戦いになったというわけではなく、自分たちの物を相手が持っていくから戦いになったというのが今回の争いにおいて正しい点だろう。簡単に枯渇するような量ではないし、両者が使う分には……現時点ではそこまで問題はない。枯渇するまでの期間が早くなるのは間違いないが、それでもすぐに問題になることではない。結局のところ、お互いの仲が良くないのが問題だったわけである。仲が良くても問題になった可能性はあるが。
そんな問題はあるが、賢哉は結局両者が混同で生活する場所を作ることにした。もっとも、全員をいきなりそこに放り込むというわけではない。あくまで一部の獣人や魔族を一緒に済ませる場所を作るだけである。そこに来る人員はローテーションで期間ごとに来る人物を分け、同じ人員が毎回被るということにはならないように工夫する。ここは獣人と魔族の総数の違いの問題もあるため問題はないだろう。同じ場所で過ごす人員に関しては流石にお互いに同じ人数を用意し、交流の機会を作る。流石に住む場所は分けておくが。
彼らの生活する場所とは別に、お互いが喧嘩できる戦いの舞台も作る。もちろん賢哉が魔法で互いに戦い合っても死ぬことのないようにした場所である。これは両方の村から来れる場所で、両者混同の村とは別だが村に近しい場所、という場所を選びそこに作り上げる。本当ならば混同の村の方に作っておきたいところだが、お互いが住む場所で憎み合いの殺し合いが行われればやはり仲良くなる難易度は上がるだろう。ゆえに行けるが見えない場所、近くではあるが間近ではない場所にその舞台を作ることにした。これとは別に村に住んでいる人員でも問題は起こり得るのだが……もちろんそれも考慮しているためちゃんと村の方にも結界を張る。
そういったこととは別に、獣人の村や魔族の村の方にもいろいろと手を加える。賢哉がいくら言ったところでお互いが殺し合うことを避けられなければ意味はない。交流する部隊を作り上げたところでその取り決めを無視されれば困る。まあ、それはつまり賢哉に逆らうと言うことでもある。流石に賢哉も本気で殺すつもりはないが、そういったことで罰しないとなると抑えれることもできなくなる。なのできっちりと罰しなければいけない。そういう点でも面倒である。
「そういうことで俺はしばらくあちらにかかりきりになる」
「そうですか……それは寂しいですね」
「こちらのことはどうするつもりですか?」
しばらく獣人や魔族の村の方にいるつもりである賢哉。だがそうなると今度は開拓領地の方が問題となる。
「別に向こうにずっと住まなければいけないというわけでもないし、往復で活動するつもりだ」
「…………わかりました。でも、エルフやドワーフのようにはしないんですか?」
開拓領地にも戻ってきて活動する、と賢哉は言う。それ自体は別に問題はない。少し心情的に嫌な所はあるが、それでもまだ許容範囲ではある。別にずっと離れ離れの別れではない。しかし、そういった行動に関して理解できるが、何故エルフやドワーフのように開拓領地に道を繋ぎ彼らを住まわせるということを選ばないのか。
「今の所向こうの人間への心情が問題だから、かな。距離もあるし。何より状況的にちゃんと話を聞いて応じて受け入れてくれるかもわからない。それ以前に現時点でお互いがお互いに遺恨を持っている状態だからまずはそれを解決しなければならないだろう。俺があちらに行き、人間の存在をある程度受け入れられるようにしつつ、互いの問題を解決してから初めて開拓領地の方に、ということにするつもりだ。まあ、事前の準備はいるけど」
「そうですか……」
「相変わらず大変なことを任せてしまうことになりますね」
「いつも、申し訳なく思います」
「気にするな。一応俺は副領主ということになってるし……まあ、その代わりフェリシアはちゃんとこっちのことを頼む。俺がいなくてもなんとかならないとだめだからな」
「はい、もちろんです」
別に賢哉は開拓領地から出ていき一生戻ってこない、ということをするつもりはない。ただ、今後も賢哉やフェリシアが開拓領地に居つけるとも限らないし、何か事情が合って賢哉が死ぬ危険もないわけではない。場合によっては賢哉の方から開拓領地を出ていくことにもなるだろう。今回のこともどうなるかわからないし、どれほどの期間がいるかもわからない以上、賢哉が長くいなくなる可能性もある。ゆえに、賢哉なしでの開拓領地の運営ができることは必要になってくるだろう……まあ、それは以前から進めていることであるのだが。
「それで。私がここに呼ばれた理由は副領主様がいなくなるからですか?」
「厳密にいなくなるわけじゃない。ただ、ずっとここにいられるというわけじゃないっていうのがあるな。一応こちらに何かあった時の連絡用の魔法、何か起きた時に様子を確認できる目を残すけど、それでも基本的にしばらくはあっちにかかりきりになると思う。開拓や領地の守りはナルク、お前に任せる」
「責任が重いんですが……」
「もともとこういう時……ってわけじゃないが、守備を頼むつもりで育ててきたからな。もちろん開拓もレッセルやグルバー、新しく着た住人達とも共同で進めてくれ。開拓領地も広げていかないと人が増えて狭くなってくるからな」
「まだまだ大丈夫だと思いますが……まあ、魔族や獣人が来る可能性もあるとなると、余裕があったほうがいいでしょう」
賢哉が関わる以上魔族や獣人もいずれは開拓領地に住むことになるだろう。それに開拓領地の発展のためにも領地そのものを大きくすることは重要である。この先開拓領地がどうなるかも、亜人たちとの関係がどうなるかもわからないが、ともかく何が起きてもいいようにしっかりと準備をしていくべきである。




