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 一人一人、少しずつ捕まえ森の中に存在する魔族や獣人を減らしていく。流石にある程度まで進むと魔族や獣人たちも賢哉……自分たちの仲間を捕まえる何者かの存在に気づく。そのため彼らは纏まり、その存在の排除のために動くようにもなった。彼らもお互いが倒すべき相手となっているわけだが、それ以上の害、なにやら恐ろしい存在が現れたとなると流石にそれをどうにかしないわけにもいかない。

 賢哉は一応獣人側にとっては仲間のはずなのだが、それを認識しているのは獣人の村に来た時に一緒にいた獣人や、その獣人が話してそれを知った獣人であり、魔族との戦いで森の中に潜んでいる獣人たちは知り様がない。そのため賢哉が戦いの平定のために来ていることを知らず、仲間を捕まえて何をしようとしているのかわからず怪しい存在、危険な存在だと考えている。なので賢哉は魔族に限らず獣人にも襲われる。

 賢哉は魔族の攻撃をあっさり防ぐことができている。魔族の攻撃は魔法であり、それを防げる。それを見ていれば、ならば物理的な攻撃手段ならば大丈夫なのでは、と考えるだろう。それに一度の攻撃は防げても二度ならば? 背後や横からの連続攻撃は? などと考え、そして囲んでボコれば倒せるのでは? とも考えられるわけであり、獣人たちはまとまり一気に賢哉に襲い掛かったりする。もちろん、賢哉はどのような攻撃でも防ぐことができる。魔法しか防げないなんてことはなく、襲い掛かってきた獣人たちの攻撃も防ぐことができていた。

 しかし、獣人たちも中々賢しいのか、賢哉が杖を振って魔法を使っているのを見ている。たとえ攻撃が効かずとも、杖を動かすのを封じれば賢哉が魔法を使うのを封じることができればどうとでもなる。そう考え、攻撃が効かないのがわかるとすぐに杖を抑える獣人もいた。もっとも、これすら意味がないのが賢哉である。賢哉の魔法はそもそもこの世界の物とは違い、詠唱やら儀式やら杖を振るような魔法発動の動作自体が必要がないものである。まあ、あった方が都合がいいとか、わかりやすいとか、いろいろと使う理由はあったわけであるが、なくとも全く問題ないものであもある。というより、むしろそれをしなければできないと勘違いさせるためのもの、でもあるわけである。獣人たちはそれに引っかかり、結果として無駄な行動をしたともいえる。複数の獣人たちが賢哉の前に現れ、入れ食い状態、一網打尽と言ったところだろう。それらもあっさりとまとめてそれぞれ個人を結界に閉じ込める。一度に一人ということもなく、人数に制限なく結界に封じることができた。もちろんそれらもまとめて運ぶ。それくらい余裕で出来る。

 と、まあ、そんな感じで獣人やら魔族やらを賢哉は捕まえ結界に閉じ込め獣人の村に運びつつ、森の中に残っている者たちを捕まえて行った。そして最後の一人を捕まえたのち、獣人の村に一度戻り、そこで話し合いをし、魔族の村へ捕まえた獣人と魔族と一緒に、村に残っていた獣人たちを引き連れて向かった。

 賢哉が魔族の村……あるいは集落と言えばいいのか、そこにたどり着いたとき、魔族たちは大騒ぎである。人間が来た、ということよりも獣人たちが群れを成して襲ってきたということの方が大きいだろう。実際には襲いに来たわけではないが、村に残っていた全員で来たら流石に襲ってきたと思われてもおかしくない。その最前にいる人間は一切気にされていない。そして、結界に閉じ込められた魔族を見つけ、さらに大騒ぎである。一体何をしてそんなことになっているのか、獣人たちは自分たちに何をするつもりなのか、そんな感じのことを彼らは思った。なお、捕まえられている獣人の方は気にされていない。魔族も獣人も同じような扱いをされているが、基本的には気にされていない。人間のことも特に気にされていないが……まあ、さすがにあれやこれやと騒いでいるうちに、人間が今回の出来事の中核であることがわかる。何故なら、人間の男、つまりは賢哉が魔族に投降することを呼びかけたり、獣人と魔族の争いに関しての話がしたいと言い出したのだから。

 そういうことで、獣人と魔族がそれぞれ一塊となり賢哉がその話合いをまとめる形となった。







「と、いうことで。今回の獣人と魔族の争いを終わらせ、調停を行う役割を担うことになった……まあ、少しお節介気味なところもあるが、そういう役目を任された加倉井賢哉だ。見ての通り人間だ。住んでいるところは開拓領地で、あちらにずっと進んだ先にある暗黒領域に接する人間の領地。そこに獣人が助けを求めて訪れ、それに応える形でお前たちの戦いを止めに来た」


 魔族および獣人たちはその言葉にざわざわと騒いでいる。獣人側の一部はそれを行った獣人……村に来た時賢哉と一緒だった獣人に視線が向き、そこから犯人がわかったわけであるが、その獣人に対して文句や非難の視線を浴びせている。魔族側は獣人側程気にしていないが、そもそも人間が調停役というところに文句がある。そもそも獣人も魔族も人間は本来自分たちを暗黒領域に追いやった敵であるのだから。

 ちなみに、彼らはそれぞれの種族で分けられており、話し合いができるように声は届くようになっているが、結界によって完全に隔離されている。これは賢哉に対して攻撃をしないよう、あるいは獣人と魔族がお互い争いを再開しないようにするためのもの。一部の獣人や魔族はその結界を破壊しようとしているが、全く破壊することはできていない。魔族の一部は魔法に造詣が深いためか、その結界の出来、強さを理解できるのか驚嘆し賢哉に対して恐れを抱いている。実際この結界を破壊するのは並大抵の力ではできず、また場合によっては結界内部にいる存在を殲滅できるような大魔法の術式が組み込まれているくらいである。まあ、賢哉はそれを使うつもりがないが、本当の意味で放し飼いが完璧に拗れどうしようもなくなったときは発動させ完璧に一方、あるいは両方をこの世から消し去るつもりである。そうなった場合もう一方との和解も難しそうなのでほぼやる気はないが。


「人間がなんでこんなことをする!」

「そうだ! 俺たちをここに追いやったのは人間だろう!」

「俺たちが苦労しているのは人間のせいだ!」


 獣人も魔族も人間に憎し、という点では一応共通している。もっとも、人間が相手だからと言って彼ら同士が協力し合うことはないし、そもそも亜人同士や亜人と魔族が仲がいいということはない。彼らが人間に追いやられる原因の一端は人間と敵対した時彼らが一部でも他の亜人や魔族などと結託することがなかったことにあるのかもしれない。それは今でも変わらず、獣人と魔族は資源の奪い合いからの争いとなった。もしかしたら両者が協力して資源を管理する、一つの集団にまとまるということもできたかもしれないのに、そうすることを選ばなかった。

 まあ、そもそも獣人も魔族も人間も、他のそれぞれの亜人も、別の種族である以上はそうなるのは仕方がないことなのかもしれない。人間ですら所属するコミュニティによっては同種で争い合うこともあるのだから、別種族である彼らは余計にそうなるものなのかもしれない。

 ともかく、まずは話し合いをさせることが先決と賢哉は考え、話ができるようにする。面倒くさいが。


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