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 と、一年の間に様々なことが開拓領地ではあった。それまでの状況とは違い、人が増え商人も増え亜人もいるようになったわけであるから、いろいろな問題が起きてしまうのは仕方がないことである。とはいえ、かなり増えたとはいえまだまだせいぜい村が一つ、というくらいの状態が開拓領地の現状である。まあ村は村でも大きな村、といった具合だが。そんな状況なので問題が起きても大体の事柄は対処できる。

 とはいえ、一年もその状態が続けば問題は結構いろいろと見えてくる。ある程度は対処しこれから起きる問題ではなくなったものも多いが、未だに完全には対応しきれていない、今後もまだその時その時で姿を見せるような問題も多々ある。例えば亜人の存在そのものが一つの問題を起こしている。亜人と人のかかわりはやはり単純に行く話ではない。例えば村での生活状況の問題。ある程度賢哉が問題が起きればその問題の解決のための開発を行ったりと対応しているが、根本的に人間の生活自体がまともに成り立っている状況ではない。一応生活はできるが、本当の意味での自給自足にはまだほど遠く、それに伴い仕事の問題や作業的な問題などがある。まあ、この村にいるのは元々いた本当に行く先のない人間だったので最初はそれでよかったわけであるが、後から来た紹介された人間は元々ある程度現時点では開拓領地に来るほどではなかった。開拓領地で新たにいろいろとできるかも、という希望を持ってきた者もいるだろう。残念ながらそううまくはいかないわけであるが。そんな実情的な部分への不満があるわけである。

 と、言うことでいつも集まる人間や亜人たちが集まり話し合い、というわけだ。開拓領地の主なメンバーの。


「というわけでこれからの話し合いを始めようか」

「なにがと、いうわけなのかわかりませんが……」

「話し合いですね。いつも集まっている皆さんもいますし、やはり開拓領地のことですよね?」

「それ以外にはないな」


 領地の経営、運営側である領主と副領主の立場を持つ賢哉とフェリシア、およびアミル。話し合いにおいてこの三人はほぼ欠かさず出席する。領主側という立場に他にもメンバーがいた方がいい、とは彼らも思っているが、どうしても彼らのような立場の考え方をできる人間はそう多くなく、また話し合いに参加できるほどの頭の良さを持つ人間も多くはない。根本的にどれほど開拓領地にいる人間を信頼できるかの問題もあるし、どうしても数を増やすのは難しいわけである。ちなみにアミル以外の従者的立場にいる人間はほぼ領主の家の仕事に専心している。上を目指し残っていた人間もいたが、この状況で参加できない時点でもう無理なのは本人たちがわかっているだろう。そういうことで経営側に携わるフェリシアについてきた人間はアミルのみ、というのが現状である。まあ、無駄なことをせず領主の住むところに関わることをしっかりやってくれるだけでも十分であると言えるが。


「正直俺たちはこの場にいるべきなのか……って思うんだが」

「同感」

「……一応それぞれまとめ役をやっているんですから、必要ですよ?」


 元々この開拓領地にいた人間のまとめ役だったレッセル、元盗賊たち現開拓班のリーダー格に躍り出たグルバー、そして開拓領地の守備を担うため、と戦闘向きに育てられているナルクの三人。特にこの三人で重要なのは元々開拓領地にいた人間の声をよく聞くだろうレッセルである。開拓班のリーダーであるグルバーはそこまで重要ではない。いや、ひつようなものではあるが、彼が仲間から聞く情報はどちらかというと開拓状況や開拓先の情報の方が重要で、最悪ある程度は賢哉に任せれば情報を引き出せるのでそこまで焦る必要はない。そもそも開拓さえしっかりで綺麗てばある程度はそれでいい。ナルクの場合、今のところ彼の仕事はそれほど多くない。一応領地の守りをに担える兵、戦闘要員を相応に育てることができれば意味はあるが、それを急いで準備する必要は現状ない。


「…………エルフたちは特に問題ない」

「ドワーフも同じだ。まあ、人数は増やしておきたいが」


 エルフのネーシア、ドワーフのあるグレイスの場合、彼らの仲間に関しての情報になる。いつの間にかまとめ役になっているが、そもそもの人数が少ないのと話を聞く上で賢哉が話しやすいという点でこの二人が主に呼ばれる、ということになる。まあこちらに関しては亜人ゆえの問題もいろいろあるだろうということもあって面倒くさいというか。


「問題がないならいいんだけど……亜人だから、ということで何かされたりはしてないか?」

「そういうことは特にないな……まあ、視線が気になるが、それくらいだろう」

「…………特に手を出されることはなかった。近づいていないのも理由だと思うけど」


 亜人側としても人間側に想う所はあるが、しかしだからといって手を出すほどではないし、彼らは彼らできちんと活動できている。ゆえにそれほど気にならない。ただ、人間側が増えると排斥の動きも起きるかもしれないという点ではやはり未来に不安があるのが現状と言えるだろう。まあ、未来のことをいくら話したところで現状では何とも言えないが。


「そうか……まあ、そこは今のところはしかたがない、どうしようもない点かな」

「何とかならないものでしょうか……」

「偏見をすぐにどうにかできるなら誰も苦労しない。実際に知って、側で見て、徐々に恐怖や嫌悪を無くしていくしかない。それでうまくいくかも未知数だけどな」


 亜人と人間の関係はいろいろ複雑だ。とはいえ、彼らが争っていた当時よりはまだこれでもまし、というくらいである。そういう意味では時間で薄れさせていくというのは悪い判断ではないだろう。まあ、その対象が間近にいる状態と全く近くにいる状態ではないのでは話が違うかもしれないという点では難しいのだが。


「それで、領地の財政状況に関しては?」

「黒字です。そもそも出費がほぼないので。とはいえ、金回りが健全とは言いづらいですけどね」


 アルバートが苦笑いしながらそう話す。開拓領地は基本的に黒字である。ドワーフやエルフの作った専門家の作った質のいい物を外に回し、開拓領地内では領地内でお金が回るようにしている。しかし、そもそもからして出費自体がほとんどないのが現状である。だいたいのことは賢哉が魔法で行っているため、開拓領地はかなりお金を使用する必要がない場所となっている。まあ、賢哉に頼らなくなれば自然とお金を使うようになるが、そうなると今度は確実に出費の方が増えることになるだろう。なので領地の稼ぎが出費と恐らくほとんど同じくらいになるだろうという予測が立つまでは現状維持で財政的に貯金をある程度作っておこう、というのが現状である。そもそも開拓領地がどうなるかも不明で将来的な見通しは立たないため、いざという時のための準備をしておきたい。


「まあ、まずはお金を使う状況に慣れないといけないしな」

「そうですね……現時点でも、特にお金を使う必然性がないからか、あまり使われていないところもありますけど」


 やはりすぐにどうとでもなる、というわけではない。そのあたりはやはりこちらも時間をかけて馴染ませていくのが必要になるだろう。


「……それで。話を聞くためだけに集めた、というわけではないですよね?」

「ああ。今ここにいるのは、元々開拓領地にいた側だ。まあ、俺やフェリシアたちのように、二年前に開拓領地に来た人間も多いけど」

「っていうか、ほとんどがその時期に来たんだが……」


 この中で元々開拓領地にいた人間はレッセルのみ。あとはフェリシアがこの地に来る際に来たのがほとんどであり、その後いろいろな形で開拓領地に来た人間……と亜人が主である。そういう意味では、開拓領地にきて一年以内のメンバーがほとんどだ。


「そうだな。重要なのは……そうだな、後から来た人間、ここ一年で来た、アルバートの所から来た、商会から贈られてきた人間たちのことだ」

「……何か問題を起こしましたか?」

「その判断が難しい、って言うのが問題になる。今ここに、彼らのまとめ役となる人間がいない」

「…………まあ、確かにそうだな」

「そうですね。彼らに関しては……誰がまとめ役になるか、難しい所でしょう」


 開拓領地に新たに来たフェルミット商会から送られてきた人間たちはどうにも立場的に扱いに困るところである。元々いた人間とは微妙に区別され、立場的に開拓領地にいる人間は三つの種別にわけられる。レッセルたちのような元々いた人間、フェリシアが新しく領主としてきてから入った人間、そしてアルバートの所の商会であるフェルミット商会から贈られてきた人間。前者二つはレッセル、フェリシアや賢哉やグルバーにナルクなど、幾らかまとめ役となる人間がいるが、後の商会から贈られてきた人間はそうではない。アルバートは都合上まとめ役は難しい。財政管理の方面から商会関連の仕事などそちらで忙しいのでまとめ役がしづらい。


「それを決めたい」

「そうは言われても、彼らの中によく知る人がいないのですけど……」

「そういうことで、アルバート。何人か紹介してほしい。他にも誰かこいつがいい、という人がいたら教えてほしい。まあすぐに決めなきゃいけないということではないとは思うけど、できれば早めに決めておいた方がいいと思うからな」


 そういうことで、後から来た商会から送られてきた人間のまとめ役という人材に関して、決めたいという提案とともに彼らについての話し合いがなされた。とはいっても、商会から送られてきた人間は多種多様で実に語りづらいところであったが。



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