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「………………! 本当に飛んでる!」


 事前に話した通り、賢哉はネーシアを伴ってコルデー山へと魔法による飛行で移動している。ネーシアは飛行することに対し……恐怖がないとは言わないが、それ以上に今まで経験したことのない未知の体験とそれを行うのに必要な要素、条件などに思考が移っている。この世界の魔法はこういった個人の能力に関する物よりも、相手に対し作用するもの、攻撃するための魔法が多い。まあ、魔法を使う用途の問題だろう。使える存在の少なさと、使う機会の問題と、扱う上での難しさと。


「大丈夫か?」

「…………! 大丈夫!」


 それなりに離れているが、それでも声は届く。とりあえずネーシアは特に問題ないようである。今回はネーシア以外の同伴者がいない。賢哉が前にドワーフたちに話した内容に関しての改めての返事、そしてそれにネーシアを伴いドワーフの観察をするために行くだけである。まあ、ネーシア、人間と一緒に過ごしている亜人の存在はそれなりに大きいだろう。賢哉がネーシアたちエルフを無理やり従わせているとも解釈できるかもしれないし、賢哉であれば魔法による契約で無理やり発言を縛ることもできるが、果たしてドワーフがそこまでの可能性を考慮するか。また、考慮したとしてもそれを言い出したら始まらない内容でもある。疑心暗鬼は毛こうだが、過ぎると何もできないし誰も信じられない。

 まあ、なんにしてもネーシアを連れて行くのは本人の提案と賢哉が連れていくことによる影響、利点を考慮した上だ。実際一人で行くつもりだったが賢哉としても一人は寂しいし、ネーシアに実践の上で魔法を見せたり教えたりするうえでも、広い場所や開拓領地の外に行くのは悪くない。普段からやればいいのだが、やはり開拓領地付近ではどうにもネーシアに色々教えるのはやりづらいのだ。これでもエルフの長の孫だ。いろんな意味で扱いが難しい。


「これ、どういう魔法!」

「そのまま飛行の魔法だが……」

「どういう魔法!」

「後で詳しく教えるから!」


 こんな飛行中の状態で魔法に関して詳しく教えろと言われても困る。それを訊ねる本人も空中を飛行している状態で頭に残るか怪しいのではないだろうか。まあ、ともかく、彼らは魔法で飛行しながらドワーフたちのいるコルデー山へと向かい、到達する。

 前回は山のどこに何があるのか、どこに何がいるのか、それを調べる意味合いも兼ねて山の麓のほうへと降りたのだが、今回はドワーフたちの住む場所の近くへと降りた。キマイラのいた場所に降りるかどうかも迷ったのだが、やはり重要な案件を先に話しておくほうがいいと考えたためだ。ネーシアに関してもドワーフ関連で彼女が興味を持つ物もあるし、そちらに意識を向けさせ置いていくことで賢哉自身が動きやすくするつもりでもある。

 まあ、今はコルデー山で調べたいものもなく、無理に急いで何かをする必要性もないが、賢哉自身が動きやすいほうが都合がいいのでそうするわけである。ネーシア自身がしたいことに関してもあるし。


「……さて」


 ふいっ、と賢哉は杖を振る。ふわりと光の玉が生まれる。そこに賢哉は今回ドワーフの住処に連絡を入れるため魔法でこの光の玉を派遣した旨、および前回告げたこちらとの協力関係をどうするのかの返事を聞きたい旨、それらを光の玉に込め、ドワーフのもとへと向かわせた。


「…………今のは?」

「簡単な使い魔みたいなものかな。何ができるというものでもないけど、今回は伝言を伝えるために使った。流石に俺がドワーフの住処に入って彼らの元へ行くと騒動の種になりそうだしな」


 前回はドワーフが戻ってきたタイミングで話すことができ、またキマイラを倒した時も向こうからやってきたためあまり問題なく済んだわけであるが、実際彼らと対話するうえで住処に侵入して話し合いを、と言っていた場合結構な問題が起きた可能性は少なくない。そもそも人間に対する拒否反応が多くの亜人は強い。それが自分の住処に入ってきたとなると、余計にきつい拒否反応となるだろう。エルフの時は同じエルフが一緒だったからまだましだったが、あれが賢哉とナルクだけだったなら強い拒絶と実力行使による排除が行われた可能性もある……実現できたかはともかく。そうなった場合、エルフとの協力関係を築くことは無理だっただろう。そういう意味合いでは賢哉側も配慮する必要があるだろう。そして今回配慮した。


「……面倒くさい」

「そうだな。だが、エルフだっていきなり人間が来たら大騒ぎしたはずだ。ドワーフも同じ。同じ亜人ならわかるだろう?」

「………………ドワーフとエルフは同じじゃない。一括りにするのはよくない」

「む。確かにそれもそうか……」


 亜人、と一括りにすること多いが、人間とそれ以外という区分であるだけで別に亜人全部が同じものではない。エルフとドワーフ、獣人など基本的に亜人はそれぞれで独立した種族である。獣人はちょっと一括りにされてまとめられている部分が大きいが。それぞれ違い性格的な部分や社会的な部分が違う。ゆえに同じ結果になるとは限らない……が、人間に関してはかなり似たり寄ったりになる可能性は高いだろう。人間に対する敵対心はエルフもドワーフも似通っている。


「っと……来たか」


 ネーシアと話して言うるうちに、光の玉が伝言をドワーフたちに告げ、ドワーフたちから賢哉と話し合いをするための使者が送られた。


「あんたか」

「おう。同じ顔で悪いな」

「いや、そういうわけじゃない。知らない相手よりは話しやすいかもな」

「ふん」


 現れたドワーフはこれまで賢哉が二度会ったドワーフたちを率いるリーダーの気質の合ったドワーフの男である。


「お前の言う話し合いとやらをするために来た……まあ、話し合いと行っても俺たちの間で話し合ったことをお前に言うだけなんだがな」

「そうだな……いい返事をもらえるといいが、返答はいかに?」

「まて、急いで結論に行くな。とりあえずは腰を落ち着けてゆっくりと話そうじゃねえか。その辺でいいからよ」

「ん、なるほど。簡単な椅子と机は作るからそこに座ろうか」


 そう言って賢哉は魔法で机と椅子を作る。


「はっ?」

「…………相変わらず」

「相変わらず何なんだよ……」

「出鱈目」

「傷つくなあ……」


 今更な話である。


「……って、そこのは誰だ? いや、エルフ……エルフ? なんで人間がエルフと一緒に」

「そのあたりの話は詳しくは後で。まずは席をついて色々と話し合おうか。ネーシアも座っていいぞ」

「………………ん」


 ネーシア、賢哉、ドワーフの男の三人が座り、とりあえずまずはドワーフ側から賢哉の提案に関する返答、そこから聞くこととなった。



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