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「ついたな」

「……はあっ」


 賢哉とそれと一緒に来た五人の追従者、それが空から地面に降りる。ナルクが大きく息を吐き、空を初めて飛んで賢哉の凄さと恐ろしさを改めて理解したほかの四人は大地に降りたことで空中飛行の恐怖から解放されへたり込む。


「……彼らの相手をしてきます。副領主様はどうしますか?」

「とりあえず皆の復帰待ちだな。別に一人で移動してもいいが危ないだろ?」

「まあ、そうですね……」


 賢哉なしで彼ら五人だけになった場合、まともに生き延びる手段が存在しないといっていい。賢哉の存在はとても大きなものだ。脱力して倒れへろへろなほかの四人とナルクだけではどうしようもない、そもそもナルクを除く四人は今回の探索を鍛錬の一つとしてやっているものである。つまりはほとんど鍛えられていないのだからおいていけば森の獣のえさになるのは間違いないだろう。


「……しかし、特に何もないな」


 賢哉が杖を振るい魔法を使う。基本的に探査の魔法だ。コルデー山にドワーフがいる、という話は聞いているが、果たして本当にいるのか、そもそもどこにいるのかもわかっていあに。賢哉は自分がエルフと会った時のことを思い出すため、山の麓で探査の魔法を使った。森へ向けての探査であり、そこにドワーフがいればわかる。ドワーフが戦っていて、危険があったなら、それを助け恩に着せることができるかもしれない。相手の危機を望むのはあまり望ましいことではないが、相手の危機を利用することでかなり楽に相手との接触を図ることができる、そう思うところである。

 まあ、そういうことが起きておらず特に意味はなかったのだが。流石にそこまで都合はよくないようである。


「そもそも、山にいるかもって話だっただけで核実にいるとは限らないんだよな……」


 いないのならば何のためにここまで来たのか、といったところである。とはいえ、探査したのはあくまで森のほうだけであり、山のほうはまだ調べてはいない。そもそももしドワーフがいるのならば森に出向くよりも山のどこかにいる可能性のほうが高いというのはあるだろう。仮に彼らが鉱石や金属を取り扱う土、岩の民とでもいう存在であるなら集落のようなものも建物を作ってそこに住むよりは洞窟とかのほうが可能性がある。


「ふうむ……こんなところでいいか」


 探査の方法も簡単な探査方法から、もう少し深いところまで調べられるような探査魔法を構築し、それを使い山を捜索する。賢哉の強みはそもそも既に存在する魔法を扱うものではなく、あらゆる魔法の構築を行え、その構築内容の把握もそれなりに容易にできる極めてチートな魔法の能力である。もちろん魔力も高いし、魔法の操作能力も高いが、それ以上にあらゆる場面であらゆる魔法を作り出せるのが最大の利点だろう。あれがだめならばこれを、ということをその場その場で容易に変更できるおかげで探索も楽である。


「……ほう。いるねえ」


 賢哉の魔法による探査は洞窟の存在とその中に存在する人型の存在を探知する。山全体への探知はそう言った存在以外にもいろいろな存在を探知する。例えば獣の類も山に入る。植物も木々も生えているし、わざわざ森に降りずとも彼らは生活できるのだろう。もしかしたら場合によっては土の中にいる生物も食している可能性もあるだろう。もしくはそれほど職を必要としていないか。


「……いや、ドワーフが鍛冶が得意なら木材は必要だよな?」


 仮にドワーフが鍛冶を得意とする種族であるならばその燃料が必要となるはずだ。それらを森に取りに来るか、山に生えている植物だけで満足するか。そのあたりは不明であるが、しかしもう少し何かあってもおかしくはないだろう。まあ、そもそも前提が違い彼らは別に特別火事が得意というわけではないという可能性もある。この世界の種としての特長が賢哉の持つ知識と合致しない可能性は大いにあるだろう。

 まあ、こんな場所で仮定を繰り返したところで意味もない。場所がわかりにそこにいることが分かった以上、賢哉はそこに行き彼らに出会い、直接話を聞くべきなのである。


「……まあ、ともかく。行ってみないことにはわからないか」


 一人で納得し、賢哉はナルクのほうを見た。


「ナルク! もうそっちは大丈夫か?」

「はい、一応は。ただ突然襲われたりすると対処はできないかもしれませんが」

「まあ、その辺の問題はこちらで解決できるからな。魔法使って安全を確保するから早くいくぞ」

「わかりました。そういうことなので皆さん行きますよ」

「お、おう……」


 ついてきた人員たちもすこしふらっとしながら賢哉についていく。まだ恐ろしい飛行体験の影響が抜けていないようだ。






 山。コルデー山。エルフの集落からも、森の木々を超えて見え、また開拓領地からも見えるかなり大きな山。数千メートル級……とまではいかないにしても、結構大きな山であることに間違いないだろう。その山を山登りの装備なし、道の整備もなし、そんな状態で登るのはきつい。


「ひい、はあ……」

「ふう、はあ……」

「大丈夫かー」

「はい! だい、じょうぶです!」


 ナルクが剣やの声に返事をする。賢哉を含めた六人の中で最も先を行くのは賢哉だ。単純に賢哉は進むというだけでなく、魔法を使った簡単な聖地も行いながら進んでいる。それでもまだ険しいといえる道のりだが、それが行われている分いくらかましになっている。とはいえ、魔力消費なども考えかなり大雑把になるが。そんな道を進みつつ、ナルクが何とかついてきている。ほかの四人もついてきているがかなり疲労困憊な様子だ。


「少し休むか?」

「……おねがい、します」


 ナルクも疲労がかなり大きく、賢哉の提案を受け入れる。他の四人もナルクと賢哉に追いつき、ばたりと倒れこむ。


「流石にまともに山に登るのはきついな……交渉してちゃんと話がつけばちゃんとした道を作るべきか……」

「ドワーフが道を作っているんじゃないですか?」

「ありえなくはないが、彼らのところの近くまで出ないとわからないかもな。こちら側にないという可能性なだけもありうる……ま、そのあたりは探すほうが手間だし俺が作る道で我慢してほしい」

「文句は言いませんよ……っていうか、飛んでいけばいいじゃないですか?」


 ここまで歩きで来るから疲れるのであり、飛行すればかなり楽な行程になるはずである。ただ、そのナルクの意見にほかの四人は首を振る。


「お前、さっき飛んでてダメだったろ……」

「まあ、そうですね。でも山登りするよりは……というところです」

「ほかの四人がダメそうだが?」

「うーん……そういわれると。でもなんで山登りを? 先に山に下りればよかったんじゃ?」

「あの時はとりあえず山までという感じだったからな。ドワーフがどこにいるかもわからないのに無駄足するのもって感じだ。まあ、確かに山に直接下りればそちらのほうが早かっただろうが……それはそれで危険もあるからな」

「危険?」

「ま、今はとりあえずある程度は道を作るからそこを登れ。体を鍛えることにもなるぞ?」


 もう少し別の体の鍛え方をしてほしいと思うところである。まあ、確かに体力はつくのだろう。しかしあまりにも急激な体力づくりで、しかもとてもハードなやり方な気がしないでもない。やるにしてももう少しやり方は考えてほしいところだ。ともかく、そうして彼らは山の途中で少し休み、魔法も合わせ疲労をとってから賢哉たちは再び山を登っていき、ドワーフの住んでいる可能性のある洞窟へと赴いたのであった。


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