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「……どうする? エルフとの交流を持ったはいいが」


 フェリシアの決定を機に、賢哉はエルフの集落へと向かいその決定内容を告げる。エルフとの関わり方に関してはすぐに全てを決めるわけではないが、とりあえずお互い手を結びあうと言うことにした。エルフ側でも話し合い、相談などがなされ、最終的に賢哉とカルバインが話した通りの流れにカルバインが持っていった。そうして開拓領地とエルフは結びつきができたわけである。

 だが、それだけで話が住むわけではない。例えばエルフのいる場所は森の中であり開拓領地から遠い場所だ。その場所に行くだけで過酷であり、森の中にいる獣や魔物などの危険も多い。距離自体はそこまでではなくとも森という時点で歩きにくく、移動にも時間がかかるだろう。


「どうすると言っても、なんとか行けるようにするしかないでしょう」

「そうだな」

「それに、彼らもこちらで人間と同じ場所に住むんですか?」

「……住居か。勝手にこっちで作ってもいいが、相手の要望を聞いた方が賢明だな」


 開拓領地にエルフの居場所を作るにしても、普通の人間と同じ場所というわけにもいかない。エルフは領民として数えるかどうかはともかく、交換留学的な半ば客人に近い立場であり、また人間から守るうえでも賢哉の結界のことなどを考慮すればきちんとした彼らの住むための場所を作るべきである。特にエルフは亜人、人間と同じようにしていいものかもわからないし、よくある話ではエルフは森に生きる民。森、木々がある場所の知覚でなければいけないかもしれないし、彼らの生活や持ち得る技術の事を考えると森の恵みが手に入りやすい場所の方がいいのかもしれない。もちろん安全の確保も必要、水の流れ、環境の改善など色々と考える必要がある。

 ただ、それらを賢哉及び開拓領地側だけで考えた所で意味はない。直接それらに関してはエルフに話を聞いた方がいいだろう。


「じゃ、行くか……ついでに道を作るうえでどういうルートを通るかも考えないとな」

「……でも、道っていっても大丈夫ですかね。森を通る以上獣の危険がありますよね?」

「それは何処でも一緒だろ。開拓領地に来る道も危険は色々とあるわけだしな」

「それはそうだと思いますけど……」


 危険があるのは開拓領地以外でも珍しくはない。とはいえ、極端に危険があるのは開拓領地近傍、および開拓領地の先の未開拓地域、暗黒領域である。他の場所に危険と比べればこの場所の危険は明らかに格上、頻度に危険の内容はけた違いである。


「まあ、何かあれば俺がどうにかするさ」

「……本当に副領主様は反則ですよね」

「いずれは後継者とか作りたいが、できるかな……エルフに魔法を教えるのってどう思う?」

「不安の方が大きいと思いますよ。そもそも亜人ってだけで俺たちのような普通の人は怖がるでしょうし」

「そうか……」


 そんなことを放しながら賢哉とナルクは森の中を進みエルフの集落へと向かっている。






「ふむ……我々の住む場所か。確かにそれは問題となろう」

「そうか」


 カルバインと賢哉が話し合っている。内容はエルフたちの住む場所について。また、エルフの集落と開拓領地を結ぶ道についても。こちらの候補については森について詳しいエルフの方が道として選ぶルートの選定ができるはずだ。


「基本的にはこの集落を参考にしてほしい……が、できれば周りが森に囲まれていると都合がいい。我々の仕事に森から得られる素材は大きくかかわる。植物が採れるかどうかは大きな問題になるからな」

「……エルフの持つ技術は植物関連だったか? 確かに森が必要になるよな……周りだけではなく、集落の内側にある場合はどうなる? まあ、周りだけにしてもいいけど中に森を残すこともできる。周りと違って弄りやすいとおもうが」

「ふむ……まあ、試すだけ試すことはかまわない。ただ、迷惑になる可能性もあるし面倒なだけかもしれぬ。後で更地にしてくれと頼んだ場合更地にしてもらえるのであれば構わないが……」

「それくらいなら問題ないな」

「ならば色々試す意味でもあるといいだろう。森に植えて試したい植物も管理できるようなものでなければ難しい。茸もな」


 エルフ持つ技術は様々な植物やら茸やら森の恵みに寄与している。なのでそういったものが簡単に得られるのであればありがたいことだ。しかし、そういった試みは初めてであり、うまくいくかどうかは不明。なので場合によっては無くすしたほうがいい。


「……ところで。技術に関してだが」

「ああ、こちらからも提供するし、そちらからも提供してほしい所だけど……」

「うむ。人間の技術、エルフの技術、それぞれそちらに送り出したエルフに学んでもらい、必要に応じて帰ってきてもらいこちらで広めてもらう形とするつもりだ。だが、それとは別にな……」

「別に?」

「お前の扱う魔法を学びたいという者がいてな……」

「へえ。考えてたが……それはありがたいかな。そちらから言ってくれるならこちらから提案しなくていいし」


 これに関しては賢哉は予想外と言った感じである。とはいえ、賢哉としてはエルフの魔法の能力に関して、適正に関して、そういった部分に触れられるのでかなりありがたい話だ。また、賢哉からの提案でなく、エルフ側からの提案ならば協力関係の構築の都合上否定しにくい。なのでエルフ側からの提案は賢哉としてもやりやすい。


「いいのか? 人間の持つ魔法の技術だろう?」

「俺の使うのは普通の魔法使いの魔法とは違うらしいからな。仮に教えても使えるかもわからない」

「……ふむ。まあ、その者も使えるようになりたいと言うよりは興味の方が強いと言うのもある。ナターシャ!」

「はい!」

「ネーシアを連れてこい」

「……わかりました」


 そう言って賢哉の助けたナターシャが出ていく。


「ネーシア……」

「うむ。我が孫だ」

「お孫さんですか」


 どうやらエルフたちの長の孫らしい。そしてナターシャがその人物を連れてきた。


「…………どうも」

「あ、どうも」


 前髪で目が隠れて見えにくいだろう。そしてどこか無口系の話し方をしている。なによりも、彼女の特徴を表すのであれば……エルフなのにエルフじゃない、その身体特徴があげられるだろう。


「……エルフのお孫さんですか?」

「……どこを見て言っておる。殺すぞ?」


 エルフという長身スレンダーという一般論……かどうかはわからないが、基本的な印象はこの世界でも正しい。だが、彼女はその特徴に当てはまらない。身長は低く、そしてその胸には凶器がついている。俗に言うロリ巨乳とかいうやつである。属性を盛りすぎではないだろうか。


「……まあ、いいですけど。えっと、その子が?」

「うむ。この子をそちらに送るエルフと一緒に送る。お前の魔法を教えてやってくれ」

「……はあ」


 賢哉はネーシアに視線をやる。ぴくっ、とそれだけでネーシアが反応する。


「…………よろしくお願いします」

「あ、うん、よろしく」


 とりあえず、話しはそこで終わり。基本的な方針は決まり、エルフの方でも開拓領地に送り人間側の有する技術を学ぶ者も決まり、その準備が進められている。賢哉はその内容を把握しつつ、開拓領地に作るエルフを受け入れる場所の内容を考える。それと同時に、ネーシアの扱い、魔法を学ぶうえでどうするかに関してもいろいろと。いろんな意味で面倒というか大変そうな気がするので。


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