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「亜人との交流ですか……」

「ああ。暗黒領域には彼らの様に人と話し合いのできる種族もいる。実際会ってきたが、関係を結ぼうと思えばできなくもないはずだ」

「それはすごいですね」

「ええ、凄いでしょう。ですが…………亜人との関係を良好なまま続けることができると思っているのですか?」


 賢哉のエルフの里に行った話を聞き、驚きの感情を見せた二人、そのうえその後に続く話、すなわち今回賢哉がエルフの里でしてきた話である亜人と開拓領地を繋ぎお互いに交流関係を持つと言う者に関しても聞いた。そしてそれらを提案する賢哉に対し感心する……のだが。素直に驚き感心したフェリシアに対し、アミルは賢哉に対し厳しい視線を向けている。この辺り素直に話を受け入れるフェリシアに対しアミルの方が現実的な目線ができると言う感じだろう。フェリシアもその亜人関係の事情を理解していないわけではないし、人同士の関係の難しさも理解している。そのことから亜人との関係も本来は難しいものだろうという推測くらいはできるはずだ。しかし、そこまではっきりとした現実としての像がフェリシアには結べず、驚きと感心で済まされてしまう。一方アミルはより人間関係と言うものを知っている。自分たちでそれを経験し、さらには社会の難しさを経験している。ゆえにアミルの意見はより現実的な目線からのものとなり厳しい意見となるのである。ましてやそれが亜人となれば普通の人間関係よりもはるかに難しいことはわかり切った物である。


「俺が生きている間は、少なくとも続けることはできるだろうな。流石にそれ以後は保証できないが」

「いえ、ケンヤ様が生きていたとしても、絶対にどこかで問題が起きるはずです。ケンヤ様は人間という存在を少し軽く見ているのではないですか?」


 人間と言う者は欲深い。嫉妬深い。そして自分とは異質なものを嫌う。異端な者を排斥する傾向にあり、異種族ともなれば当然排除の対象になるに決まっている。そもそも亜人以前からそれぞれの国の人間同士ですら排斥しあうこともあり、同じ人間でも人種の違いから憎み合い嫌い合い殺し合うこともある。それくらいに人間と言うものは難しい。

 もちろんそういった人間ばかりではない。亜人と仲良くなる集落なども世の中にはあるだろう。だが、結局のところ多数を抱える人間はその多数の意見が有利であり、個人ではよくとも集団では悪いことになり、開拓領地だけならば問題はなくともそれがどんどん広い範囲に知れ、国の関係にまで発展していけば流石に開拓領地だけでの判断は出来なくなることだろう。

 そもそも今は良くとも後で悪くなるなんてことは珍しくない。結局のところ彼らとの関係を結ぶ必然性は彼らか技術を得るまで、開拓が進み彼らの手を借りる必要がなくなるまで、最終的に彼らは要らない存在となることが予想できる。そうなればいずれ彼らの排斥、排除に移るのは目に見えている。


「確かに少し軽く見ているかもな。亜人とずっと良好なままいられるとは思わない。問題は確実に起きる」

「なら」

「だからやらない、というのは違うだろ。そんなことを言ったらこの開拓領地だって問題まみれなわけだしな」


 問題があるからやらない、というのは本質的に違うと賢哉は言う。


「何をやったって良いこと悪いことは起きる、何かが解決すれば何かが問題になる。例えばエルフと関係を結ばないとするだろう。そうした場合でも、開拓領地の開拓は進む。ならいずれは彼らとまた会うことになるんだ」

「……それは今すぐではないですね」

「そうだな。未来の話になるだろう。でも、そうなる可能性はあるだろう。その時は今回とは別の問題に直面する。今問題があるからとして放置したところでいずれ問題が起きるのなら今やったところで何も変わりはないわけだ」

「………………」


 そこにエルフが存在する以上いずれは問題となる。だから今問題を熾せばいいと言うのはまた話は違ってくるが、しかし問題があるからやらないほうがいいというのもまた違ってくると言うことに繋がる。結局放置しようとしなかろうと確実に問題は起こり得るのだから。


「デメリットばかりで考えるのではなくメリットを考えるべきだ」

「それは……」

「確かにアミルのいう通り、問題になる可能性はあるでしょう」

「フェリシア様」


 フェリシアがアミルの意見に同調するように話を始める。


「ですが……ケンヤ様のいう通り、確かに彼らとの関係を結ぶうえで得られるものがある可能性はある。開拓をするうえでも彼らと協力すれば新しいことをやりやすい」

「フェリシア様!」


 だが続くフェリシアの言葉はどちらかというと賢哉の意見に対し肯定するものだ。


「気になるところがあります」

「なんだ?」

「エルフと交流する上でのメリットです。先ほどケンヤ様はデメリットばかりではなくメリットを考えるべきだと言いました。エルフとの関係を作った場合、この開拓領地は亜人との関係を結ぶことにより国や他の領地からそれに対し抗議があるかもしれません。それは開拓領地にとって大きな問題となるでしょう。デメリットはそうですが、ではメリットは何なのですか?」

「……簡単に言えば技術提供だな。エルフの持つ草木に関する技術はかなりのものだ。森で過ごしてきた彼らは森に存在する者を扱う技術が高い。そのうえ彼らは寿命が長く長生きする分技術の含蓄がある。それらの技術を学べるのはかなり大きなメリットだ。それに、歴史的な知識に関してもある。人口も、亜人を含めれば開拓領地の人口が増えるという結果につながる。まあこれは彼らがこちらの領民になることを受け入れてくれればだが」

「亜人は領民としてカウントされるのでしょうか……」

「わかりません。そもそも前例がありませんでしょうから……」


 フェリシアとアミルは亜人の領民化に関しては懐疑的である。亜人に関しては他の場所でもよほどのことがない限りは住み着くなんてことはなく、仮に住み着いても追い出されることが多く定住しないのが基本である。まあ、場合によっては人間が捕まえ奴隷としていることもあるかもしれないが、基本的に亜人は恐怖の対象でありあまり手を出されることはない。そしてできれば秘匿したい対象ということで秘密にされることの方が多く、奴隷としてもカウントされないのが基本。なので亜人はあまり領民として取り扱うのか、という点に関して話し合われることがない。ゆえにその点は不明である。

 そもそも開拓領地に参入するかもわからない時点で話し合っても仕方がない。もし大多数の亜人が領地に入るとなれば流石に話し合いもされることだろう。問題はその話し合いがきちんと成立するまで関係が維持されるかであるし、仮に領民になるにしても税やら何やらの問題がある。そもそも人間でも領民かどうかのカウントはどうなっているのか、かなり曖昧な部分も多く難しい問題である。その辺は色々と面倒な事柄だ。


「一番重要なのはこの暗黒領域の知識だな。どこに何があるか、他の亜人に関しても知っている可能性はある」

「……それは色々と使えますね」


 他の亜人の場所を知れればその亜人とエルフのように協力関係を結ぶことができる可能性がある。そうでなくともいると分かれば避けて通ることもできるだろう。亜人以外にも、暗黒領域のどこに何があるかわかれば資源の確保もやりやすくなる。


「まあ、何にせよどうするかを決めてからになる。それで……どうする?」


 賢哉はフェリシアに問う。今後エルフとの関係をどうするのか。


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