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 開拓領地は当然ながら開拓を行う領地である。その開拓先は未開拓地域、暗黒領域とも呼ばれる森が生い茂り獣やら何やら不明な生き物が数多く跋扈する魔境。人の手が届かない理由は明白。その地域に入り込んだ賢哉自身でもわかっているが脅威が多すぎることである。その地に住まう生命、全く人の手の入っていない自然、過酷な環境で生存してきた獣や魔物たちの強さ。さらに言えば人間側もその地に挑戦するにはあまりにも準備も環境も足りていない。本来ならば徐々に開拓の手を広げていけばいいが、そこは人間同士の争いが弊害となり開拓の手を緩めている。また現在の安穏とした生活を望む者にとっては開拓そのものが過酷である。開拓を望む必要性の無い物が多く、未開拓地域に挑戦するのは開拓領地へと逃げ込んだ将来性の少ない者。まあ、そういった過酷な状況にあえて挑戦する者もいるが、そういった人物たちは余りの過酷さに途中で逃げかえるか、またはそのまえに途中で命を落とすか。

 まあ、ともかく未開拓地域はかなり過酷で己の生存すら危ぶまれる大変な地域である。人の手の入らず中身が不明なことから暗黒領域とも呼ばれるその地にどのような危険があるのかわかっていない。そんな場所に、開拓領地に存在する彼らは挑戦しなければならないのである。


「……まあ、いいんですけど? なんで俺だけがついていくことに?」

「部下だから? まあ奴隷だから連れて行きやすいってのがあるかな。捕まえた盗賊たちも一応扱いは奴隷に近いが、明確に奴隷となると少ないし。お前一人だけってのは、もう一人よりもお前の方が使いやすい、使い道があるからって感じたからだ。お前とあっちでは扱い方の問題があるだろうしな。こっちの探索関連、戦闘を含む危険に対しての対処はお前の方が能力が高い。あの元盗賊たちの中にも能力がある奴はいるし……開拓領地にいた中の奴にも使える奴はいるが、どちらも今すぐってのは無理だ。前者は今は開拓を行うことを優先、後者はまだこっちに従うことの意思統一ができてない。だから奴隷のお前だけになる」

「はあ……」

「ま、成長すれば将来それなりにいい役職に就けると思うぞ。この開拓領地に使える人員なんてほとんどいない。いずれお前たち奴隷も奴隷から解放して領民となってもらうつもりだし、今のうちに学べるだけ学んでおいた方が将来的には得だろうな」


 元々男の奴隷で購入してきた人員はそれなりに使い道のあるだろうと賢哉が推定した人員である。一般的な領民はそれこそ領地における仕事をするのが基本であるが、能力のある有能な者はフェリシアに仕え領地経営に関わってもらうことになる。本来ならばそれはもっと立場のある、血筋のいい人間やしっかりした職を持つ者などがなるべきであるのだが、開拓領地にはそもそも人材が少ない。ゆえに奴隷であろうとも使えるなら使う、育てるべきなら育てる、女性の中にも使えそうな人材があれば引き上げることになるだろう。まあ、武官仕事はできなくとも文官仕事ならば女性でもできるのでそういうこともある。

 一応フェリシアについてきた従者はいるが、彼らは彼らでまた話は違う。あちらはフェリシアの家のこと、貴族の家の事に関しては強いが、文官武官の領地に関する仕事に関してはまた別だ。そもそもそれだけのことができる人間がフェリシアにつけられていると言うことはないだろう。そういった人材はフェリシアの父や母の方についていっている。フェリシアの方についてきているのはフェリシアの世話をする以外のことにはあまり関わっていない。


「ついてなくていいんですか?」

「開拓班にか。安全に活動できる範囲、簡易的な結界は作っている。指定した範囲から出ない限りは安全だ。まあ、言いつけを破って出て襲われた、とかになると困るが……それはある種自業自得だからしかたがないことでもあるな」


 盗賊たちに関しては現在では開拓班という呼び方になっている。とはいえ、その意識に関してはなかなか更新はしにくいが。賢哉が森の奥に入り込もうと進んでいる以上開拓は出来ない……と思われるところだが、賢哉の魔法にある結界の魔法。指定した範囲に外からは入り込めない、もしくは敵意や害意を持つ者を寄せ付けない。そういった感じで区切り安全を確保している。とはいえ、その結界そのものは中にいる存在の都合もあって完璧なものにはできない。本気で侵入を防ぐつもりならば完全に隔絶した結界を作るしかないが、それはそれで色々と弊害がある。ちなみにこの結界に関してだが、現在領地として明確に区切り柵を置いている範囲は安全地帯となっており、基本的に外部からの侵入者を封じている。各地の安全を確保するのは必要不可欠なのでそうしている。とはいえ、夜にこそこそと何かをして至り、外部からの侵入を完全拒絶もできないのである程度曖昧に、また警戒、警報の効果を備えたものであり、それによる知らせを元に必要に応じ賢哉が動く、というのが現状だ。現在の開拓領地はあらゆる意味で賢哉の力がなければやっていけない。今まで通りでいいのならばその限りではないが。


「えっと、それで……誰だっけ?」

「誰かわからず連れてきたんですか?」

「まあ、男の奴隷は二人しかいないから区別が必須じゃなかったってのがあるかな。でも以後は武より文よりで区別はつくけど、名前をも知らないんじゃ仕方ないし。ってことで教えてくれるか?」

「ナルクです」

「そうか。よし、ナルク。とりあえず森を探索。水辺の発見および野菜野草果実の生る樹木の発見、あとは茸とかも探してくれるとありがたい。そのついでに、出てくる獣などを退治、その肉を確保だ。鳥とか草食の獣も必要に応じて確保したいし、鶏のような鳥でもいれば卵の確保のために見つけたいところだが……まああれは交配して選別してきた結果っぽいしなあ。野生者発見は難しいかね」

「……とりあえず、何か見つけたら教えろってことですか?」

「まあそんな感じでいいか。それが役に立つかどうかわからなくてもいい。何かあったら教えてくれ。使えるかどうかはこちらで判断する」


 賢哉だけでは情報を見落とす可能性がある。魔法は万能であるが、頼りすぎるとそれなしではいられなくなる。そして無くなってしまえばその時自分だけでどうしようもなくなってしまう。便利なものは積極的に利用するのはありだが、依存してはならない。それに賢哉だけでも森を一人で攻略できるにしても、賢哉以外にできないのでは大して意味もない。能力を持つ部下を作るのも一つの仕事である。


「ほら、武器。あまり強くない簡単な武器だが……大丈夫だろ」

「剣とかではないんですか」

「剣とかは技術がいるからな。なんだかんだでああいうのは剣術を学んでいる奴向けだ。お前は多分学んでないだろ。だけど力はある。なら重い物で思いっきり叩くだけでも十分。相手は獣の類だしな」


 森にいるのは獣や魔物。人相手の戦術や武器は必要ない。仮に人間や亜人などがいるにしても、殺し合いをするつもりは毛頭ない。そういう意味で対人に必要な武器の類は要らない。まあ、それよりも武器を貰うのはいいが、武器より防具の方が重要ではないだろうか。ナルクは武器を受け取りながらそう思うのであった。



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