表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想設定作品集三  作者: 蒼和考雪
fragment restart
183/190

25話 各職場配置

 王女の護衛と単純に言っても難しいものである。基本的に戦闘能力が求められる騎士団、戦闘能力としての護衛と、身近な配置、侍従としての立場に近い役割を求められる身の回りの護衛といろいろとある。


「俺たちは戦闘能力の実を期待すると」

「そうだ。流石に王女様の周りに男を配置するのは……よほどの立場、責任のある人間でないと無理だ」


 いないわけではないが、王女の護衛に男性はそれほどの数ではない。すくなくとも身の回りを任せられるのはいろいろな世話が可能な女性が中心になる。一応男性はいる。その男性とはアーシュやローデスたちも話をしている。そういった男性は基本的に既婚者であるとか、国に縛られるような立場にあるとか様々な条件がいる。少なくともローデスやクルベでは無理だ。


「……私は身の回りの世話も含めたうえでの護衛ってこと?」

「ああ……彼らよりは期待できるが、少々厳しいか?」

「うーん……私ら戦闘以外はあまり得意じゃないからねー。ちょっと難しいかな……」

「まあ、おいおい覚えていけばいい。適正なしでダメならそこの二人と同じところに配置する」

「待ってるぞマカベラ」

「どうせお前もこっちだ」

「ちょっとひどくない!?」


 ある意味信頼されている……と言えるかもしれないがいろいろな意味で嫌な信頼だ。アーシュもこの様子を見て苦笑いしている。実際アーシュもマカベラにそういった方面の能力がないことは知っている。単純に学んでいないから存在しないのか、それとも学ぶ機会がなかったからできないのかは不明だが……彼女の言う通り線と以外は得意でない、いや戦闘のみが得意であるという事実があるゆえに、なんとなく予想できてしまう。


「そちらの三人はそんな感じになる……一番の問題はアーシュにあるが」

「確かに……いろいろな意味でローデスさんたちと一緒は無理ですよね」

「確かに無理だよな」

「そうね……っていうか、それこそ王女様の話し相手くらいしかできないんじゃない?」

「体力はある。いろいろとできることはあるが、戦闘は無理だからな」

「……年齢的な問題もある。護衛としての立場に就けるにしてもその幼さでは」


 アーシュの問題は身体能力、戦闘能力など。少なくとも見た目でいえばアーシュは戦えるようには見えないだろう。まったく戦闘能力がないとは言わない。ローデスたちから全く何も習っていないわけではない。しかし、そもそもアーシュは戦闘能力という点ではそれほど高くはない。戦闘能力の高い三人に対しそれ以外の面で比較的有能だったアーシュというパーティーである。アーシュがいない間はどうしてきたのかと思うところだが、色々誤魔化していたのと戦闘のみの依頼ばかりだったのだろう。少なくとも自分たちで無理にやらなくてもある程度はなんかなっていた。

 まあ三人の関係、パーティーの運用状況に関してはさておくとして。そんなアーシュであるがゆえにどうしても通常の護衛としては扱いづらい。そもそもアーシュは無理に護衛として運用する意味がないわけであるのだが。アーシュの能力は王女を守るとか護衛するとかの役割よりは単純に聞き耳を立てられる、気取られないようにするなどそういった方面を意識するべきである。無理に隠れる、隠すなどせず、表向きはその役割に応じた務めを果たさせるのが一番。そういう意味ではマカベラの話したような王女の話し相手とかが一番わかりやすくまともな立場であるだろう。隠れ蓑としては悪くはない。もっとも一番いい立場でもないが。


「実際護衛として扱うよりも……何らかの才能を王女様が見出し、拾ってきたとする方がよほど真実味があるな」

「護衛能力は決して低くはないんだけどな」

「耳がいいから敵襲とかすぐに察知できるものね」

「寝ててもすぐ起きるしな」

「……馬車の中の会話も聞き取れていたんだったな。確かにそれはかなりの能力を持っている。だがやはり護衛としては扱いづらい。表向きは別の形にした方がいいと思われるな」

「そうですか……」


 結局のところアーシュの扱いがいろいろと難しいという問題がある。現時点ではどう扱うかの決定ができない。一応の形として立場を与えるが、それは一時的なもので最終判断はアーシュの活用手段、能力などから考慮しなければいけない。


「あ」

「ん? どうした?」

「いえ、個人的にはやりたいことがあったなあ、と……」

「やりたい事? 表向きの立場を与えなければならないか今そうできるかはともかく、将来的にやりたいというのであれば……内容次第だが無理ではない」


 実際にその立場を用意できるかどうかはわからない。アーシュの能力的な問題もあるし、周囲との関係、アーシュを斡旋する側の立場の問題などもある。しかし、それが表向きの立場としてアーシュの能力を最大限利用でき、聞き耳を立てるのに優秀な立ち位置であれば……それを望めばできる可能性は低くないだろう。まあ、やはりアーシュの能力的な問題もあるだろうが。


「なら、一応は。えっと、音楽関連の仕事ってありますか?」

「音楽関連?」

「耳も声も自由自在ですから。肺活量も高いですし、ずっと動き続けることもできます。そっち方面はとても強いので」

「…………なるほど」


 アーシュの聞き耳、あらゆる音を聞き分ける能力、そして竜の声を出すようなあらゆる声、音を出せる能力。色々な意味で音楽関連の仕事をするのには向いていると言える。まあ、例えば作曲や指揮が自由自在にできるか、と言われると難しいところだ。もっともその点ではアーシュはこの世界の音楽には存在しないだろう音楽を知っている。指揮は難しいかもしれないが作曲は不可能ではない。それこそかつて聞いたことのある音楽を耳コピして声に出し、新たに音として書きだせるのだから。

 そういったアーシュのさまざまな音楽向きの才を考慮し、女性はすぐにどうするかの判断はできなかった。まあ今は王女とともに進み、最終的に落ち着くことになった時に話を進めることにした。結局未だ移動途中の状況で話すことはできないというのが最終的な判断、決定となる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ