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妄想設定作品集三  作者: 蒼和考雪
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18話 馬車防衛

「なあ、アーシュよ……」

「なんですか?」

「これって俺たちの方が怪しく思われないか?」


 現在アーシュたちは馬車を尾行している。馬車には護衛がついているがこの護衛はこの先馬車を襲うつもりだ。正確には馬車に乗っている人物を、であるが。ここで問題となるのはそれまでの間馬車を守るかどうか。彼らが馬車を襲うのは確定しているが、では馬車の守りを行わないかどうかについては不明である。仮に盗賊やら魔物やらの襲撃があった場合、彼らはどう行動するのか。それについてもわからない。しかし、守るとした場合、彼らが守っている間に馬車に向かうのはよくない。守らないにしても、その場合魔物や盗賊やらが彼らを襲う可能性はあるだろう。どちらにしても彼らは戦うことになる可能性は高い。

 そして、アーシュたちは馬車の尾行をしている怪しい存在だ。彼らがアーシュたちの存在を発見した場合、どう対応するのかがわからない。とうぜん怪しい存在の排除に動くかもしれないし、そうでなくとも何を目的としているのか注意、警戒される可能性は高いだろう。


「可能性はあります。でも、できる限りはなれて知られないようにはしてますよ」

「まあ、こっちからもあんまりよく見えないしね」

「でもそれでなんとかできるのか? 問題が起きてから間に合わない、ってなっても困るだろ」

「そうですね……それに関しては、彼らもいつ行動するのか全く全長がないとは思いません。彼らの会話は常に聞くようにしていますから、大丈夫です」

「……本当に化け物性能だなアーシュは」


 ローデスたちは既に知っていることではあるが、アーシュの耳、音を聞く能力はとても高い。高性能という言葉でくくるのは少し言葉としては適当でないと思うくらいにはとんでもない性能なのである。それゆえにかなりの遠方から馬車の会話、その護衛の会話を聞くことができる。そして彼らに見つからない場所にいながら彼らを追うことができるわけである。それをローデスは化け物性能と評価した。それに対してアーシュは少し悲しそうな顔をする。


「ちょっと?」

「あ。悪いアーシュ」

「いえ。実際気味悪がられるような恐ろしい力ですからね……」

「ま、誰だって自分のことを聞かれるのは怖いからな。気味悪がる奴もいるだろうさ。あんま気にすんなよ?」

「おい」

「ちょっと」

「ん? なんか悪いこと言ったか?」


 アーシュは苦笑する。クルベは別に悪い意味でいったわけではないのだろう。そのクルベの発言に対しローデスやマカベラは咎めるように言う。彼らは彼らでアーシュの持つ自分の能力とそれに伴う周囲からの目線、悪意は気にしている。自分たちがアーシュに不意に気持ち悪い、などと言わないように意識しているというのもある。クルベはそのあたり遠慮がない。容赦なくアーシュの能力に伴う悪い部分を言う。

 アーシュの耳がいいというのはそのままあらゆる全てを聞けてしまうということになる。それを彼らは知っている。自分が誰かに対していった睦言、隠しておきたい秘密、排泄や性行為などの音、あらゆるすべてがアーシュに効かれている可能性があるかもしれない。少なくとも同じ町にいる間はアーシュはそれをできてしまう。普通は怖ろしいと感じるものだろう。そういったことを考えると彼らはまだ比較的アーシュに対して好意的である。

 まあ、アーシュがまだ子供に近いから、というのもあるだろう。それにアーシュの行動原理は悪いものではない。悪意で動くのではなく、善意、良い精神性方向性で物を考えて行動している。今回のことを考えてもそうだ。


「ところで、俺たちはあいつらに勝てるんだろうか?」

「……それは僕にはわかりません」

「ま、そうよね」

「なんだよ? 負けるつもりなのか?」

「いや、そうではないがな。戦って勝てないのに守るために挑み殺されるのはそれはそれで納得がいかない。それに俺たちが襲撃した犯人にされかねないだろう?」

「……怪しくても、揉みつぶせるでしょうからね」

「そりゃ面倒な話だな」

「…………できるだけ不意打ちできる時を狙います。護衛が馬車を襲った時を」

「……それは馬車の方はどうなんだ」

「その時に、僕も少し……不意を打ちます」

「アーシュが? でもアーシュ、弱いでしょ」

「……まあ、普通に襲うって意味合いじゃないです。その時は合図を出すので、耳を塞いでくれますか?」

「……耳を塞ぐ?」

「なんで?」

「……ちょっと、簡単にですが実演します」


 そう言ってアーシュはドラゴンの出す唸り声を出す。いきなりアーシュの口から出たその声、音に三人は驚く。


「今のは控えめですが、もっと大きな声で出すこともできます……それこそ、遠くまで響くような、大音量で」

「なるほど……」

「凄いわね……」

「変なことできるんだな」

「おい」

「ちょっと」

「ん? なんか悪いこと言ったか?」

「あんまり気にしなくていいですから。まあ、そういうことなのでこれを使って驚かすつもりです」


 先にもやったやり取りを繰り返すのをおかしく思いつつも、アーシュは問題ないと伝える。これならば確かに何とかできるのだろうと三人も納得し、戦闘への参加は許可しないがその不意打ちは認めることとなった。まあ、その不意打ちで驚かせた後近づいて襲わなければいけない。それにアーシュがついてこないわけはないのだが、それでも戦闘にはできるだけ参加せず、危険は回避するようにと指示は出している。

 そういうことで方針が決まった。

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