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妄想設定作品集三  作者: 蒼和考雪
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09話 個人活動は難しい

「…………うーん」


 アーシュは冒険者としていろいろと活動を行っている。しかし、その内容に関して……成果は別に問題はないのだが成績としてはあまり芳しくない。

 どうしてそのような状況になっているかというと、単純な話。一般的に冒険者に求められるようなこと、冒険者が冒険者らしく活躍し大きな評価が得られる仕事、そういった仕事に関してアーシュが参加できていないということがある。

 アーシュの能力は基本的に斥候向きの能力である。まあ、斥候以外にもできないわけではない。基本的に情報を求めたりすることに関しては極めて能力が高いというわけになるのだが、逆に言えばそれ以上のことができないということでもある。戦闘への参加は厳しいし、戦場での活動も本人の戦闘能力が低いから厳しい。斥候としての能力は高くとも戦闘できないのであれば本当の意味での斥候の運用は難しい。情報収集は可能だが斥候として痕跡を残さずに活動するのはあまり得意ではないし、罠の類を仕掛けたりすることはできない。まあ、罠の看破に関しては音を利用した振動である程度の看破はできなくはないが、それも完璧ではない。臭いをごまかしたりもアーシュはあまり得意ではないだろう。

 アーシュの能力は音に偏る。ゆえにそれ以外の面では斥候としての能力は低い。そのため情報収集以上のことはほとんどできないのが仕事を選ぶ結果となる。とはいえ、それでも十分と言えば十分ではある。アーシュくらいの年代でそれほどできる人間は少ない。だが、同時に十分以上にはなれないということでもあった。


「どうにか手段を考えるしかないかな……」


 冒険者として活動せずとも、情報屋に情報を売ったりする仕事をしてもいいだろう。アーシュであればそれができる。まあ、何処まで信用されるかの問題はあるし、情報屋になるうえでアーシュはやはりその戦闘能力の低さが問題になる。決してダメとは言わないが、後ろ盾も個人の強さもないアーシュではある程度以上にのし上がることはできない。

 まあ、根本的な部分でアーシュがやりたいことはそういう法面ではない。実際冒険者をやっているのも単純にお金稼ぎの一環、でしかないともいえる。


「どこかで楽器でも勝手吟遊詩人でもやってみるかな?」


 アーシュはその音楽性、音に関わる能力を売りにしたい。もちろんそれを行う難易度の高さもある。そもそもそういった吟遊詩人は流れ者としての性質もあり、冒険者を兼任してやってもいいかもしれないが、やはり色々と面倒毎に関わることも少なくはない。そして楽器の存在の問題もある。この世界において音楽活動はあまり一般的な娯楽とはいいがたい。安物の、それこそただ音を出す程度の楽器程度ならまだ安く入手できるかもしれないが、本当に専門性のある楽器はそう安く入手できるものではない。そもそも楽器の調律などの知識はアーシュにはない。楽器だけ手に入れたところで知識が足りていないだろう。使うことができるかも怪しい。


「……やっぱり冒険者をして伝手を探すのが一番だと思うけど。その冒険者活動が半ば頓挫しているともいえるからなあ」


 そういった方向性に考えが向いたのがそもそも冒険者活動の頓挫が原因である。ゆえに根本的に問題の解決にはなっておらず、単に逃げに近い考えなわけである。


「……斥候か。まあ、厳密には斥候とはいいがたいけど、この能力を生かして……この能力を持つ人間求めてる相手に売り込むのが一番かな? やっぱり目の間で実際にこの力を見せるのが一番だと思うけど。問題は相手を選ばないとこっちが危ない点かな。そこもやっぱり情報収集して売り込むしかないけど」


 冒険者の中にはいろいろな活動を行っている人間がいる。アーシュのように現状これ以上先に進めないと頓挫している冒険者もいる。斥候の類が仲間にいない冒険者だって少なくはないだろう。そういった冒険者たちをアーシュは己の耳で彼らが話していることを聞き、自分を売り込む。彼らもそういった斥候の類を求めていることには間違いない。その能力を持っていること……もちろん情報取集系統の能力しかないが、その高さで有能性を示すしかないだろう。罠発見の能力は高くないとはいえ、戦闘さえなければアーシュの音を聞く能力による情報収集は破格の性能を誇ると言っていい。相手側が戦闘系、あるいはそれ以外でもアーシュに戦闘を求めないタイプであれば、それほど問題とはなり得ないものと思われる。


「……まあ、受け入れてくれるかはわからないけど」


 ここで問題となってくるのがやはりアーシュの年齢。実際冒険者としてアーシュは若すぎるという問題が一つある。それ以外にもアーシュは冒険者になったばかり、そして戦闘向きではない能力ということもありアーシュ自身戦闘系のかかわる依頼は避けている。それゆえにか、経験という点においてアーシュは足りていない。恐らく冒険者側としてそこを問題とする者もいるだろう。実際アーシュはその手の依頼から逃げているというのは間違っていないので指摘されれば否定できない。それ以前にアーシュは冒険者になったばかりで根本的な経験が足りていない。そういう点でもいきなり既に冒険者としてそれなりのパーティーに入るのは難しいとなる。


「まあ、やれるだけやってみよう。ダメならだめで別の手段を探せばいいし」


 取れる手段があるのだからひとまずやってみよう。そうアーシュは考えた。

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