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 そうしてオーガは冒険者たちの保護を受ける。別に冒険者たちよりも弱いというわけではないのだが、とりあえず保護と言う形だ。知恵あるオーガ、その存在に関して冒険者たちに連れられ、ギルドでその存在について認知されるとかなり大きな問題としてとりあげられる。きわめて身体能力の高いオーガが知恵を持つ、武器を扱い罠を熟知しもしかしたら魔法を使ってくるかもしれないそんなオーガが現れれば危険も危険。それゆえに現時点で殺すべき、と言ってくる者もいた。もちろんそれは連れてきた冒険者も考えたわけであるが、同時に知恵あるオーガは味方とすることができる可能性もある。

 オーガはそれこそそれなり以上の冒険者が魔法や罠を駆使しなければ倒せないくらいに身体能力が高く強い。知恵があるオーガが人間の脅威を理解し、生かしてもらう代わりに自分の力を人間に貸して手助けしてくれるようになれば、そのオーガの力は様々なことに利用できるだろう。人間では十人以上必要なことがオーガ一人で出来てしまう。それは大いに役立つことと言えるだろう。ゆえにオーガの扱いは慎重になる。果たして知恵あるオーガが人間の味方となってくれるのかどうか。

 そういった話し合いにおいて、重要となる要素がもう一つ今回は存在した。オーガを庇った魔法使いの才を持つオッドアイの少女。その魔法の能力もそうだが、オーガとある程度、簡単に大雑把に意思疎通ができるというのも重要な要素だろう。また、その少女とオーガの関係性も大きいものである。オーガは少女と仲がいい、つまり人間と仲がいい関係を築いているということになる。それがオーガの気まぐれか、単に非常食としての立ち位置なのか、またはオークなどの人を繁殖道具度して使う生物のように将来的に繁殖に用いるために育てているのか、はたまた何かもっと別の意図、魔法使いである少女を自分を守る戦力として利用するためか。様々な考え方が浮かぶが、少なくとも人間と良い関係を築けるという点ではオーガは希望があるといってもいい。

 そもそも、このオーガは二度も人間と戦い、襲われている。それでもなお人間に対して敵意を向けず、積極的に攻撃しようとはしていないのだからそこまで危惧することはないのかもしれない、というのがこのオーガと二度戦った冒険者三人の意見である。彼らとしても、無抵抗だったり敵意を向けてこようとしなかったり、ただ襲われるだけのオーガにこれ以上攻撃するのは迷うところがあるだろう。少女の扱いに関しても問題があり、もしオーガに何かあれば確実に恨まれる。少女の魔法は今はまだ未熟であるため、なにかするつもりがあるなら早いほうがいいが、これはこれで不安が大きい。少女がどのような行動に出るかもわからず、下手な行動はしづらいのが現状である。

 そういうことで、オーガは連れてきた冒険者三人の管理下に置き、都度情報をやり取りしオーガの評価をするということになった。オーガは労働力としても、戦力としてもかなり大きなものだ。冒険者三人と同じくらいの強さを持ち、またそのオーガに付き添う高い魔法使いの才を持つ少女。その二つを戦力として加えられるのであればもっと上の冒険者としての依頼を片付けることもできるだろう。もちろんオーガの管理に付きまとう面倒ごとはあるが、そもそもオーガを連れてきたのは彼らであるためその責任を取れ、と言うことでもある。ついでに、オーガが倒した亜竜の素材も回収されており、その収入が彼らには入っている。オーガはそれなりに食事を必要とするため、そういう点でもそういったお金が必要になる。オーガが自分で稼ぐことができるのは大きいことだろう。


 と、そんなことがあり、オーガは今冒険者三人と一緒に生活している。まあ、冒険者三人と一緒、というよりは少女と一緒の方が多い。冒険者三人の管理下にあるため、その扱いは複雑な状況だが、冒険者三人の仕事を手伝いながら、少女と生活をしているのが現状である。オーガがいる限りは少女がついてくるため戦力としては五人の冒険者グループ、それも一人はオーガであるためかなり大変な仕事でもできる。オーガに任せれば荷物の運搬も容易にできるわけであるし、いろいろな部分でその恩恵は大きいだろう。一方で馬車を使えないとか、オーガの存在ゆえに選べない仕事も多々ある物の、それくらいは別に彼らも気にしない。

 ただ、オーガとの意思相通が大変なのは問題である。そのため少女との意思疎通能力の上昇、人間の言葉や文字を使えるようになるために冒険者側でオーガに対する教育を行っている状態である。また、少女も同じ教育を受けている。彼女は人間社会で育ったとはいえ、閉鎖的な村で押し込められた状態でまともに育てられていないため、いくらか十分必要な教育を受けなければならない。


「オークン」

「ナンダ?」

「ゴハン!」

「ワカッタ」


 そういった教育を受け、現状では少女と片言に近い形であるが言葉を交わせるようになった。まだ完全に人間の言葉と言うわけではなく、少女とのやり取りで意味が通るような会話でしかないが、少女とはある程度話せるようになった。一応聞く分においては人間の言葉は覚えており、ある程度は理解できるようになっている。話す分ではオーガの生態的な問題か、少女と話しているような分しか話せていない。文字はある程度は覚えているが、今はまだ学習の途中である。

 少女はオーガのことをオーくんと呼ぶようになった。オーガのオー、だろう。オーガは元々転生する前の名前があるが、現状では誰かに名前を付けられたわけではない。ただ、オーガだからオーという名前にするのは少々安直なのでいずれは正式に正しく名前を付けたいとは思っている。まあ、少女にオーくんと呼ばれ続けるとそれがうまくいくかわからないが。

 ともかく、そういった感じでオーガの生活はかなり大きく変わったわけであるが……今のところこれと言った問題はない。まあ、オーガと言う存在であるためいろいろと恐怖の眼で見られたりはするが、冒険者の管理下に置かれることで人間社会で生活しやすくなったのは大きい。それはある意味今までの森の中での面倒な生活よりはかなりいいだろう。今はまだ武器を持たせてもらえない。防具も付けることはできていない。まあ、武器防具をつけると危険度が跳ね上がるので仕方がないが。そういった点でまだ完全ではないものの、人間とともに過ごすこととなったオーガ。これからも人間社会で活躍できるかは……周囲のオーガに対する扱いや、それ以外にもいろいろな要因が影響することだろう。


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