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「おい……どうすればいいんだよ?」

「ええっと……」


 オーガの目の前に手を伸ばして立ちふさがるようにしている少女。その存在に三人の冒険者は戸惑っている。相手がオーガであるなら戦いようはあるが、相手が少女だと戦いづらい。いや、同じ人間であるしあまり攻撃してこないオーガ以上に戦闘能力がなく、弱い存在。そのうえ年齢的にも幼い相手で戦いづらいことには間違いない。とはいえ、目の前のオーガを守るために行動しているとなると冒険者たちも少しはどうにかしなければならないと思うところだが……しかし、やはりただそれだけで害するというのは難しいだろう。


「そこをどけ。そのオーガは危険だ」

「どかない!」

「……一体なぜこんなことを?」

「そっちこそなんで傷つけるの! 私たちなにもしてないよ!」

「……確かにそうですが」


 オーガが誰かを害したという話は今のところない。襲い掛かったここにいる三人の冒険者には抵抗する形で害することにはなっているが、それも先に攻撃してきたのはオーガの方。そのうえ亜竜と戦っているところを……頼んではいないが助けられた形になり、相手が亜竜と戦い消耗しているところを襲った形、しかもオーガは抵抗こそするがその抵抗もあまり多くはなく、ほぼ一方的に近い攻撃だった。相手がオーガだからそうは思えない状況だが、どちらかというと悪者は冒険者の方に見えるだろう。弱者を一方的に嬲る存在として。


「もう、どこか行ってよ!」

「いや、そういうわけには…………」

「行かないなら…………」

「……っ、オッドアイ! 気を付けて下さい!」


 魔法使いの冒険者が叫ぶ。それと同時に少女が己の力を発揮する。


「その子供、魔法使いです!」

「吹っ飛んじゃえ!!」


 冒険者たちのいた場所で爆炎が巻き起こった。




「なんだよあれっ!」

「彼女、魔法使いですよ! しかもオッドアイの!」

「オッドアイ? 何かあるのか!?」

「はい! オッドアイの人は高い魔法使いの才能を持っているんです! まあ、魔法を学ばなければあまりその力を使える機会はないはずですが……」

「あの様子だと、あのオーガと何か関係があるのか……?」

「ともかく、どうするんだよっ!?」


 現状少女と戦うことになりかねない状況となっている冒険者たち。たしかに少女を倒し、オーガを殺せばいいだけなのだが……少女の様子からオーガを殺せば和解は無理、少女のその後の動向がどうなるかも不明。人間に恨みを持ち、他の人間を狙うかもしれない、町や村の破壊を行うかもしれない。オーガと一緒にいて何もしないのであればたしかにそちらの方が安全性は高く、下手なことをして余計に被害をまき散らすことになるとオーガを殺さないほうがよかった、と言うことになるかもしれない。ならば少女を殺せばいい話でもあるが、それこそ幼い同族で悪人でもなく魔物と暮らしているだけの善良な少女を殺すということになると、やりづらいことには間違いない。


「どうする? 殺すのか?」

「……流石にこれを殺すとこちらが悪者に見えますね」

「実際あっちにとってはこちらが悪者だからな」

「ああもう! オーガが抵抗しない時点でなんか変な感じはあったけどよお……」


 冒険者である彼らとしてもどうにもオーガとは戦いづらい感じであった。それでも魔物ゆえに倒さなければいけないわけだったのだが……この状況ではさすがに倒しづらい。だが倒さないわけにもいかない感じであるし、どうしたものか。

 いや、まあ倒すにはその前に少女をどうにかしなければならないのだが。少女の魔法の力はとても高く、豪風がまとまったような空気の攻撃や、爆発するように発生する炎の攻撃、爆砕する地面、様々な攻撃をしてくる。攻撃手段としては単調で一直線、ただぶち壊すだけの一撃ばかりだがその破壊力が高い。これをもし野放しにするのであれば確実に周囲への被害は免れない。

 ある意味一番正しい選択はこの場から離れることだと思われるのだが。そうすればオーガを攻撃したことで禍根を残す程度で済む。まあ、そこで終わらせるとそれが後々悪いことにつながりかねないのでやはり両者殺しておくのが一番いいだろうということになるのだが。本来なら何もしなければ何も起きなかった可能性が高い。それについていうと今更な話であるのだが。


「どうしましょうか…………って、あれ?」


 いつの間にか魔法攻撃はやんでいた。そして、少女はオーガの傍に駆け寄っている。


「行っちゃダメ!」


 オーガがいつの間にか立って、背を向けようと、その場から去ろうとしていたのを少女が止めていた。


「…………えっと」

「何が起きたんだ……?」

「どうすんだよ?」

「…………どうしましょう?」


 冒険者たちも現状に関してちょっと困っている。戦っている状況であれば、最終的に戦わなければいけないかもしれないが、それが唐突に切られたうえに、何かオーガと少女でちょっと観劇的な……ドラマチックと言えるかはわからないが、そんな感じの物語っぽいやり取りをやっている。そこに割って入るのも、何か困る感じがあるし、かといって放置するわけにもいかず……どうすればいいだろう、と困る羽目になった。



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