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「なあなあ!」

「なんですか? 先日大物を狩ったばかりですからしばらく仕事はしませんよ?」

「ええー?」


 三人組の冒険者、そのうちの一人が何やら話を持ってきた。しかし、その話はあっさりとしばらく仕事をしないと切り捨てられる。まあ、実際彼らが最近大きな案件に挑み、その案件の魔物を退治し報酬を受け取ったばかりという事実がある。その前の失敗の汚名返上のようなものだが、あっさりと終わってしまって逆に彼らのほうがこれでいいのかと思ってしまうくらいである。まあ、それでも苦労したのは事実であるからしばらく休みたいと思うところではあるのだろう。


「ま、あんまり急いであれこれやる必要はないからな」

「ええ」

「そうかあ……じゃ、まあゆっくり休むか」


 話を聞いて、その話の内容を伝え調べたり挑んだりするつもりだった男はそう仲間の話を聞いてならば別にいいや、とあっさり話をするのを止める。しかし、何やら話そうとしていたところで止められると逆に話の内容が気になる、というところもあり、その仕事をするつもりは今の所どうするかはまだ先に決めるとして、すぐにやることはないがとりあえず話くらいは聞いておこう、ということで冒険者の一人が質問する。


「ところでいったい何を話すつもりだったんだ?」

「おー、それがなー。オーガの話が上がってきたらしいんだ」

「……オーガか」

「……オーガですか」


 苦い顔をする冒険者二人。この冒険者たちの失敗した案件がオーガ関連の者だからだ。いや、別にオーガ自体はその場所から離れることになったので完全な失敗ではない。しかし、逃げられ捕まえることも倒すことも、その行方を知ることもできていない。今の所オーガによる被害報告というのはあがってきていないのだが、そのオーガがもし何かするつもりになったのならば、確実に危険なことになっているだろうことはわかる。

 特にそのオーガは彼ら冒険者に襲われた。そのことから冒険者、つまりは人間に対し恨みを抱いている可能性がある。ただ逃げて逃げた先で過ごしている、と言うだけならばまだそこまで危険でも……森の中など人が基本的にいない場所で過ごしているのならばそれなりに安全とは思えるのだが、もし逃げて逃げて逃げまくった先で人里でにでも出ようものなら、その人里が壊滅的なことになってもおかしくない。まいてや本来オーガは知能のない凶暴で野蛮な生物。生きて動くものを見たなら死ぬまで、すべてを壊すまで破壊しつくす可能性もある。

 さらに言えば、彼らの見つけたオーガはかなり高い知性を有する、ということが推測できるものだった。もちろんどの程度の知性があるかは不明だが、知性を持ったオーガは危険であるというのは間違いないだろう。まあ、そのオーガによる被害報告は実際にはなかったはずだし、彼らが襲った時もやり返すのではなく躊躇なく逃げを選択した。そもそも拠点を作り住んでいたくらいで他の所に行こうともしていなかったようにも思えるくらいである。それでも危険なことには変わりないので倒すしかなかったが、知性があるのならばもしかしたら対話での解決が可能だったかもしれない……まあ、解決と言っても、最終的に毒でも持ってだまし討ちするくらいになった危険もあり得るが。オーガの身体能力は毒に対する耐性もある程度あって中々に面倒。なのでできればそういうことをして危険な状態になるよりは、と思い普通に倒すことを選択した。用意した罠が無駄になったので結構な損だったわけだが。


「それでオーガがなんだって?」

「んっと、確か……南の方でオーガが出たんだと」

「南、ですか…………」


 考え込む冒険者。ここから南、となるとオーガが逃げ込む先としてはありえなくない。まあ、南と言うだけだと範囲はかなり広い部分になってしまうので単にその中に含むというだけで、確実にそこに逃げ込んだとは限らないのだが。


「ああ。確かな、南の方に最近魔物とか獣がいないらしい場所があるんだって話だ」

「へえ。安全になった場所か」

「安全とは限りませんよ。生物がいないということは何か生物が住めない危険があるということかもしれません。それに、そこの縄張りにいた魔物や獣がいなくなれば別の場所からその縄張りを獲得しようと流れこんで来る可能性もあります。まあ、それが強いとは限りませんが……」

「俺にゃ難しい話は分からん。で、そこでな……なんだったけ? たしか針のような毛をした獅子がいた、という話らしい」

「針のような毛をした獅子……名前なんだっけ?」

「覚えてません。そもそもあまりギルドでも依頼に出ないものです。まあ、特徴がわかればそれでいいですし……それで、その針の獅子がどうしたんですか? オーガが関係ないように思えますが」


 話の内容だけを聞いているとオーガが関係している内容には思えない。


「いや、それがな。それが森に現れたという話なんだ」

「あれは確か結構強力な魔物のはずです……これは依頼が出るでしょうね」

「いや、それがな。その魔物、倒されたらしいんだ」

「倒されたならそれでいいんじゃないのか?」

「いや、それがな。その魔物、オーガに倒されたらしいんだ」

「オーガに?」

「魔物の同士討ちですか……まあ、よくあることだと思いますが」


 魔物でも、同種で争うこともある。縄張り内に侵入した別の魔物と争うこともある。ましてやオーガならば遭遇した時点で生きているそれと争うことは普通にままあることだ。


「そりゃあよくあるけどよ。その二体が戦って、オーガが勝った」

「オーガは強くて面倒な相手だからな」

「針の獅子は強さでいえばあまり強くはないですからね……針の毛があって倒すのが面倒な上、獅子の強さを持つので厄介ではあるんですが。それで…………いえ、ちょっと待ってください。そもそもそれは何処の情報ですか? 詳しい内容にすぎるとおもうのですが」

「そうなんだよ。それな、目の前で見ていたやつがいるだ」

「目の前で……巻き込まれたかかわいそうに」

「生きているだけ儲けものです」

「それで、オーガに見つかって、逃げようとしたが逃げれなかった……んだが、オーガがその獅子を抱えてどっかいった、っていう話だ。つまりオーガはまだ生きてるんだよ。それを退治するのはどうか、と思ってな」

「そうか……ま、後でな」

「……………………」


 冒険者のうちはその内容を聞いて考える。オーガに見つかった、という点についてだ。オーガは生きている相手ならばすでに何かを倒していようと、それを目の前にして襲い掛からないわけがない。であれば、そのオーガは何か理由があってその時見つけた人間に襲い掛からなかった……それはなぜか? 考えても仕方がない所だが、前に彼は知性を持つオーガに出会っている。もし、そのオーガがその話に合ったオーガならば……と、どこか連想して考えてしまっている。そうであるかはまだわからないが、そうであるならば……どうすればいいだろう。そう、彼は悩むところであった。



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