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(げっ、またか……最近はよく人間をみるようになったなあ。まあ、しかたないか。多分あの人間って俺を探しているんだろうなあ……)


 オーガに転生した彼はまたも視線の先、森の先に人間の姿を確認する。そして、彼らが自分の元に来る前にその存在から逃げようとする。まあ、彼にとっては人間は戦いたくない相手だ。人間という存在の恐ろしさを元々そういう存在であったがゆえに彼は理解している。また、元々同族であるという意識もそうだ。同族殺しというのはあまり好まれないものである。また、彼の生活していた社会もまた理由の一つ。彼のいた場所では人殺しは重罪である。まあ、兵士の類がいないというわけではないし、殺人の事件も絶えない世の中ではあったが、しかしやはり倫理的に殺人とはよろしくないものであるというのが常だった。それをこの世界にも引き継いでいる。

 まあ、彼としても、悪人まで殺さないとは言わない。この世界ではおそらくだが、盗賊などの悪人もいるだろう。人殺し、強姦魔、詐欺師、そういった悪逆を尽くしてきた相手にオーガである彼が慈悲を見せるのも変な話だ。もっとも彼には人の見分けなんてつかないので基本的には見逃すしかないのだが。一応盗賊の類は『あ、こいつら盗賊だな』と思ったならば潰す可能性もあるだろう。彼の場合殺さずに足を折る、腕を折るくらいで済ませる可能性も無きにしも非ずだが。


(はあ、俺は悪いオーガじゃなくていいオーガなんだけど……いや、いいオーガって何さ? まあ、俺がいるだけで例えば森の獣の数が減るとかそういうこともありうるかもしれないしなあ。大食漢ってほどではないけど、それなりに食べるしなこの体)


 オーガは森の中ではっきりとその姿が見て取れるほどに大きい。人間のサイズよりもはるかに大きく、身体能力も熊に対し多少一方的になれるほどの強さがある。当然ながらそれだけの肉体を維持するために必要なエネルギーは大きい。幸いなことに植物類を取らなくてもいいようだが、肉はしっかりととならければかなりひもじい思いをすることになるだろう。彼の場合、何の植物が食べられるかもわからないのであくまでこれは食べられそうだと転生する前の知識を元に選別し収穫するくらいである。


(こっちとしては殺されたくないからなあ…………居場所がばれている以上、ここから逃げてどこか別の場所に行くことも考えるべきか? ずっとここにいるといつか絶対見つかって捕まるよな……いや、捕まるって言うかぶっ殺されるんだけど。この世界の人間ってどれくらい強いんだろう。一応冒険者っぽいのは見かけるけど、戦ってるところには遭遇してない……危なくなっているのは見かけて助けたけど、それくらいだし。いろんな異世界ファンタジー物で考えるなら、ピンキリ……もちろんオーガを倒せる冒険者もいるだろう。オーガ……熊を容易に倒せるあの強さがオーガの強さ、それがわかっているなら出現しているって時点でそれなりの冒険者を投入してくるよな。うん、逃げる準備をしておこう)


 ある程度の情報収集や偵察は必要かもしれない。しかし、すでにオーガの存在自体は判明しているのだから、後はオーガを倒せる冒険者を派遣するだけだろう。拘束期間の問題や報酬の問題もあるのだからあまり長期になるような依頼は出せないかもしれないが、それでもやはり彼にとって危険なことには変わりがない。そういうことで、彼はどこかに逃げるための準備を考慮した。







「逃げましたね」

「逃げたな」

「……向かってこないオーガってのは初めてだな。そういうオーガもいるのか?」

「どうでしょう……少なくとも僕は知りません」


 冒険者たちは自分たちを発見しただろうオーガが逃げるのを見届けている。彼らはオーガ討伐の経験のある冒険者だ。そんな彼らは一応オーガのことに関する情報を持っている。オーガはそれ自体が強く、どうしても中々倒しにくい存在だ。通常はその討伐経験のある冒険者に任せるのがほとんど。もちろん新人、新しいオーガ討伐冒険者を増やす必要もあるため全く同じ冒険者だけが討伐をするわけではない。また、合同で人数を増やして討伐することもある。しかし、やはり経験者による討伐が一番安定するのである。それゆえに同じ冒険者が討伐することが多いため、その討伐のノウハウ、情報があるのである。

 そしてそんな彼らでもオーガが逃げるという情報は知らない。いや、全くそういうことがないとは言わない。しかしオーガの思考能力では相手の実力を把握して逃走する、ということはしない。それだけの能力がない。一度戦い、それで勝ち目がないとオーガが判断してからようやくオーガは逃走する。冒険者の姿を見たから逃走するということは本来あり得ない。なぜならそれはつまりオーガが冒険者のことを脅威とみなしているということになるのだから。


「どう思う?」

「……誰かに使われている可能性。いわゆるテイマーの類、または無理やり魔法で従えている可能性もありますね。しかし……それならまだいいんですが」

「どういうこったよ?」

「頭がいい個体である可能性もあります。正直言うとそれが一番怖いですね」

「なんでだよ?」


 オーガの頭がいいからなんだというのか、そう思うところであるようだ。


「オーガの脅威はその身体能力です。普通の冒険者では敵わない、倒しようがない、まともに勝てる冒険者なんてそれこそ上位の一握りでしょう。ですが僕たちでも一応倒すことはできます。もちろんそれはまともに相対しない、罠を張り魔法を使い遠距離から攻撃する、そういった手段を用いてです。相手の頭が悪く、ただ猪突猛進に突っ込んでくるくらいしかないからこそ、そういう手段が使えます。ですが……頭がいい場合、罠に気づくかもしれません。魔法を使ってくる相手を優先的に狙うかも。投石や投擲を攻撃手段として使ってくる危険もある。今まで何とか倒せていたのが倒せない危険性が高い」

「……なるほど?」

「わかってなさそうだな……まあ、お前は考えて動くタイプでもないしな。それで、どうすればいい?」

「ひとまず情報を集めましょう。オーガの追跡です」

「追跡か……巣、もしくは操る存在の元にあんな強いてくれるといいんだが」


 彼らはどうやら逃げたオーガを追うようだ。もちろんオーガの身体能力を考えると簡単に済む話でもない。しかし、追跡するしかない。隠れ潜み、オーガの行動を、生活を観察する。それが彼らの仕事に必要なことだ。


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