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妄想設定作品集三  作者: 蒼和考雪
maou girl
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23 一幕

 トリエンテアと雄成は冒険者となっている。方針として決めた勇者と関わりそちらから雄成の異世界への帰還を目指す。その方針は別に構わないことだろう。しかし、問題があるとすればそもそもどうやって関わるのか、という点になる。別にトリエンテアも雄成も勇者とは関係がない。どこにいるかもわからないし、どうやって会いに行けばわからない。勇者が異世界召喚によってこの世界に来ることは解ったとしても、それくらいでどこで召喚されるか、召喚された勇者がどこにいるかなどはわからない。

 冒険者としての情報で勇者がどこでどうやって活躍したか、ということはわかるかもしれない。しかし、その情報を追ってもなかなか勇者に出会うことは難しいと思われるし、勇者としても魔族に自分の活動情報が洩れる危険を考えるとそういった情報は漏洩しないように注意を払うだろう。魔族がどのような形で活動しているかは不明で、どの程度の数が活動しているかはわからないが場合によっては冒険者ギルドで活動している魔族がいる可能性もある。そういった点を考えるとやはりどこで漏れるかわからないため身内にすら活動内容を隠す可能性だってあり得るだろう。そんな勇者を探すことは難しいと思われる。

 だが、それは探す場合。勇者を探すのには情報が少なくかなり苦労することは間違いないと思われるが、勇者の方が雄成やトリエンテアを求める場合は話が違うだろう。もちろん勇者に雄成達を探す理由などないわけであるが、ないのならばつくればいい。トリエンテアが元魔王であるということはある意味とっておきの情報になるがもちろんそれについて話す、漏らすということではなく、彼らが雄成たちを求める理由があればいい。それはトリエンテアの情報ではなく、雄成たちの実力や活動が勇者にとって大きな役割を果たすということで成すべきである。

 つまりは、勇者たちが行う対魔族の行動……各地で色々と悪事を行っている魔族の討伐である。


「ふっ! なんというか、わかりやすいな」

「元々魔族が人間を相手にできる活動なんてそれほど多くはない。人に化けて人の社会に潜入する魔族もいるかもしれないけど、そういうことができるのはそこまで多くない。だから殆どの魔族が人間に対して行うのは魔物を用いて社会機能を阻害するくらい」


 現在雄成たちは森の中にありえないくらい集まっている魔物達を討伐中である。近隣の村々に対し、魔物が襲ってきて田畑を荒らして使い物にならなくする。その解決が冒険者ギルドに依頼されていた。しかし、冒険者ギルド側もその村々の依頼の多さ、また田畑を荒らす魔物の数ゆえに手出しできないものとされ、貼られていても誰も手を出さないような依頼になっていた。

 その依頼をトリエンテアは受けた。そしてその様子を確認し、魔物の群れを見て、その魔物の群れを追い雄成とトリエンテアの方で襲ったわけである。


「魔族は?」

「……集めて入るけど、指示は常に出しているわけではないかもしれない。数を減らしていれば異変を感じて勝手に出てくると思う」

「そうか。なら、少し張り切るか!」

「雄成、強くなったのはいいけどあまり慢心はしないで」

「……わかってる!」


 坑道の一件以降、雄成の実力はこれまで異世界から召喚されてきた勇者のような強さと言っていいくらいのものになっている。いや、正確には単純にその性能、才質だけならば恐らくトリエンテアが負けた勇者以上だろう。これは雄成のいた世界が魔力が存在しない世界だったのが大きな影響をもたらしたと思われる。

 まあ、雄成が強くなった要因や理由についてはともかく、雄成がとても高い戦闘能力を有したのは確かにいいことである。しかし、あまりに強い過剰な実力は場合によっては性格や心の歪みをもたらす。またその強さを過信し無謀な行いや慢心した行動が増える危険性もある。今も森の中にいる多くの魔物に対して立ち向かい果敢に攻めようとする姿勢は今までの雄成からでは考えられないような行いである。雄成のいた世界はそういった争いのない世界であり、雄成自身そこまで積極的な戦闘を望むような性格でもなかった。雄成が得た戦闘能力がその行動力に影響を与えている可能性は低くはないだろう。ゆえにトリエンテアはその行動を嗜めた。

 雄成も自分の自信過剰な行いとそれに伴う行動がわからないわけではない。流石に指摘されれば反省する。

 二人が森の中で戦い、魔物の屍を作る。いくら相手の数が多いとはいえ、一度に戦う数はそこまで極端に多くはない。仮に二人を囲んだとしても魔物全体で二人を囲めるわけではなく、また魔物全体で襲えるわけでもない。どうしてもある程度の数に絞られる。また、同時に襲うという行動も難しいところはある。ゆえに雄成やトリエンテアが相手をするのは多くても同時に四、五体。ある程度の数は倒すことはできなくても薙ぎ払うことはできるしトリエンテアの魔法であれば一気にせん滅することもできる。いや、トリエンテアならばわざわざちまちまと少数と戦わず一気に全部を殲滅することもできるが……それをしないのは魔族の誘導の方が重要だからだ。


「貴様ら! よくも俺が苦労して集めた魔物をっ!!」

「来た」

「来たな」


 あっさりと魔物を倒していると魔族がその姿を現す。まあ、ある程度ならばともかくかなりの数の魔物を倒されると魔族としても計画が狂う、という話になるのだろう。その魔族を二人はあっさりと倒す。魔族と言ってもこういった活動を行っているのは下っ端でありその実力は高くない。トリエンテアを倒す勇者よりも戦闘能力だけでいえば高い雄成と、その雄成と戦えば現時点でならば勝てるトリエンテア、その二人がいる状態でその程度の魔族に負けるはずがない。

 そうして二人はまず一つ目の魔族事件を解決する。正確には二つ目であるが、勇者に目を付けられることを目的とする行動のうち、という考えでの行いとしては一つ目である。そしてその事件を解決し、次の事件が起きているかもしれないところに冒険者の情報を元に向かう。

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