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妄想設定作品集三  作者: 蒼和考雪
maou girl
118/190

21 殲滅

「粋がった割に」


 トリエンテアがその腕を振るう。発生する衝撃波、トリエンテアの魔法が魔族を襲う。


「ぐっ!」

「大した強さではないのね」

「舐めるなっ!」


 魔法の打ち合いで魔族は明らかにトリエンテアに負けている。持っている魔力の量、そもそも魔法への適性、才能、資質、トリエンテアの才はかつて魔王に選ばれるほどのものであり、現在において魔王出ない恐らく下の方だと思われる魔族と比べるべくもないほどの力量である。トリエンテアはそもそも幾人もの勇者を撃退してきた魔王であり、彼女に勝てたのは本当に最後に現れた、魔王として世界を支配するまでもう少しと言ったくらいの時に現れた勇者のみ。トリエンテアを魔王とした魔王の意思を払うことのできるほどに強力な勇者だった相手だけだ。

 もちろん魔王であった頃と今のトリエンテアでは魔王であった頃の方がはるかに強いわけであり、それを基準に考えるのは難しいのだが、しかしやはり魔王にも選ば選ばれない下っ端の魔族相手に負けるようなことはない。それこそ現在において魔王となった魔族相手でもなければそう簡単にまけることはないだろう。もちろん多少のブランクはあるし、トリエンテアよりも経験を積み実力をあげた相手ならば話は違うが、恐らくトリエンテアの目の前にいる魔族は確実にトリエンテアよりも若い相手だろう。トリエンテアは見た目こそ少女であるが、その実年齢は少女ではない。そもそも人間との争いの合った時代において戦いを経験してきた魔族であり、現代にて裏工作をするしかない魔族よりも明らかに戦闘経験は多い。


「ふっ!」

「がはっ!?」


 魔法の力だけがトリエンテアの強さではない。魔法による強化などもできるが、そもそもトリエンテア自体は魔族である。その肉体的強さも彼女の重ねてきた時間の重みもあり、かなり強いだろう。魔法に寄るよ強化も目の前の魔族よりも確実に強い。つまり総合的にトリエンテアはこの時代におけるほとんどすべての魔族に勝る強さを持っている。仮に彼女に勝てるとすれば、かなりの経験を積んだ実力ある魔族、彼女よりも才が圧倒的に高い魔族、そして異世界から来た勇者、それらくらいのものである。


「…………力でも勝てるわけがない。私も魔族。人間のように脆弱な肉体じゃない。見た目で侮りでもしたの?」

「くっ……まさかこのような強さを持つとはな……ふっ、だがそんなことを言って、俺を殺せるほどの実力もないみたいだな。はははっ、人間を襲っている魔物達が人間を食い殺せばそちらと共闘になる。お前が多少強かろうと勝ち目はないぞ!」

「………………その程度で」


 とん、と地を蹴ってトリエンテアは魔族の前に出る。それは本当に一瞬、わずかな時間。その時間でそれだけの速度で移動できるなどと誰も思わない。


「ごぱあっ!?」

「どうにかなるとでも?」


 先ほどよりも強いトリエンテアの一撃。トリエンテアの実力はここにいる魔族よりもはるかに上。はっきり言えば、魔族をあっさりと殺すことができるくらいには強いのである。


「言っておくけど、私の方が強い。それも少し強い程度じゃなくて、とても強いと言った方がいい」

「な…………」

「魔王について、ある程度話を聞きだしたいから少し生かしておこうかな、と思った程度に過ぎない。殺そうと思えばいつでも殺せる」

「ぐはっ……ぐ、ぐ…………」


 魔族は頭を地面に叩きつけられ、そこにトリエンテアが足で踏みつける。頭を上げることはできない。


「腕、動かすのをやめて置いたら? 当たったら縫い付ける」

「…………っ」


 トリエンテアは容赦がない。トリエンテアはかつて魔王であった少女である。必要ならばどこまでも冷酷になれる。まあ、今では雄成と過ごした時間があるためか、多少慈悲はあるし優しさもある。もっとも、敵に対してそれを見せることはないが。


「魔王について教えなさい」

「………………………………」

「ほら。早く」

「さ、最初にお前に行ったこと以上のことは俺も知らん。俺は大した立場ではない……」

「そう……………………じゃあ、死ね」


 ぐしゃり、と頭を潰される魔族。容赦なく頭を踏みつけたトリエンテアを見ている者がいたのであれば、その姿にどことなく魔王らしさ、貫禄のようなものが見えたかもしれない。もっともこの場において彼女のそんな姿を見る者はいなかった。雄成がトリエンテアのそんな姿を見ることがなかったのは、両者にとっていいことだったかもしれない。


「……雄成! …………は、大丈夫そう?」


 最初こそ雄成のことを心配したものの、その戦いの様子が様になっているのをトリエンテアは認識していた。それゆえにそこまでは心配しておらず、魔族を倒した今も雄成の手助けをせずそのまま見ているだけでも雄成が魔物をすべて倒してしまいそうだ。


「…………でも、助けてあげないと。大丈夫かもしれないけど、心配だから」


 自分に言い聞かせるようにして呟きながらトリエンテアは雄成に加勢する。そして雄成が戦い続けるよりも速く、圧倒的な強さでトリエンテアは魔物を倒す。そうしてこの場に現れた魔族と多くの魔物は殲滅されたのである。

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