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妄想設定作品集三  作者: 蒼和考雪
maou girl
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12 実力

 トリエンテアの前に現れた二人の男性冒険者。普通ならば、ここまで露骨に目の前に現れられたのならば何らかの行動か対応をするのが普通である。しかし、トリエンテアはそのあたり普通ではない。話しかけてきた二人の冒険者を気にすることなくすり抜ける。そもそも二人はトリエンテアというよりはトリエンテアを連れている雄成に話しかけていたのだからそもそもトリエンテアが相手をするものでもない。そう思っていたのかは知らないが、トリエンテアは眼中になしと二人を無視し入口へと向かい。


「あ!?」

「お、おい! ちょっと待てよ!」


 ある程度すすみ、トリエンテアが振り返る。それに自分たちにようやく反応したのか、と男性二人は思った。


「雄成。遅い。早く冒険者証を見せに行く。後回しにするのは面倒」


 しかし、実際にトリエンテアから出てきた言葉は別に二人に対するものではなく、トリエンテアが二人を無視して進んでいくのに苦笑しつつ見ていたためその場にいるままだった雄成に対しての物だった。実際冒険者としての仕事をするかはともかく、お金もあるし身分証もできた以上まずは入口の門番に改めて身分証を見せ、そのうえで街中に入ったことを認めてもらうこと。そしてその後は当座の宿屋を決めること。そもそもからしてトリエンテアには冒険者二人は全く興味はなく、最初に見せたように眼中にない。


「っ! おい! 無視すんじゃねえよ!」


 そういって男の一人がトリエンテアの腕をつかもうとし……いつの間にか、トリエンテアは男から離れたところにいた。流石に腕をつかまれるのはトリエンテアとしても面倒なのでそこは無視せず対応した。そして、そこまで来てようやく男たちの相手をすることになる。


「………………何か用?」

「おう。ようやく俺たちの話を聞く気になったか。へへっ」

「俺たちに付き合えよ。いい気持ちにしてやるぜ?」


 典型的な、よくあるナンパ的なセリフである。まあ、ナンパというよりは、どこかバカっぽい誘いにすらなってない言葉だが。そんな誘いをかけて乗ってくる女がどこにいるのかと言うくらい頭の悪いセリフである。当然トリエンテアは全く男たちに興味はない。


「いや」

「はっ? 何? お前断ってんじゃねーよ!」

「いいから俺たちに付き合いがやれ!」

「……意味が分からない」


 男たちの言葉はトリエンテアにとって理解の外だ。そもそも理屈も何もなしで自分の意見だけを押しつけるような言葉なのだから意味が分からないのも当然といえるのだが。


「おらっ!」


 男たちがトリエンテアを捕えようと向かってくる。それをトリエンテアは大きく動いて避ける。そもそもトリエンテアから見て二人の動きは圧倒的に遅い。周りにいる三人の様子を見ている冒険者からもトリエンテアの素早い動きに驚き、感嘆している。トリエンテアはまだ冒険者に登録したばかりであるが、別に登録したばかりの冒険者が弱いというわけでもない。元々トリエンテアは魔王だった。今では大本の根本的な魔王となる要因で合った魔王の意思とのつながりが断たれ、かつての力よりは落ちているものの、元々魔王になる資質のあったトリエンテアの能力はこの世界において極めて高いと言える。そんなトリエンテアが女漁りをしている冒険者程度に捕まるはずがない。


「……これ、いいのか?」

「ええっと…………その…………」


 冒険者ギルドで行われている少女を巡る捕り物。もしこれが街の中で行われていれば確実に衛兵が呼ばれるような犯罪一歩手前……いや、さすがに犯罪行為であるだろう行いである。しかし、冒険者ギルド内における冒険者同士のちょっとした諍いとして考えるならば、まだ手を出していいレベルかどうか……と言ったところだろう。これが流石に冒険者ギルド内部で少女に手を出して盛り出したならば、さすがにそれは待ったとしてくるかもしれないが、今それを行おうとしている二人は逆に少女にあしらわれている。それでは止めようがないというか、ここで止めると彼らのメンツがないというか。

 少女側、トリエンテアにとっては止められていないことはいい迷惑である。もしこれがトリエンテアでなければ捕まって彼らに凌辱される危険もあり得るのではないかと思うくらいである。仮にそうなる場合、冒険者ギルド側ではあまり口を出せない。冒険者同士のやり取り、諍いは冒険者同士で決着をつけるべきであるからだ。下手にギルドが介入する方がこじれることも多い。そもそも、こういったことに対処できないのならば冒険者を目指すべきではないともいえる。それくらい冒険者と言う存在には荒事となる事柄が多いからだ。まあ、いきなりそういうことに巻き込まれそういう事情を通され襲われる少女側にとってはあれな話だが。


「くそっ! 捕まらねえ!」

「……あいつだ! あいつを捕まえるぞ!」

「何?」

「あいつと一緒だっただろ! 仲間だ! 人質にするぞ!」

「……! おう!」


 そういって二人はギルドの受付の方へ。そこにいる雄成の方へと向かった。


「おい、あれいいのか……?」

「ええっと…………」

「巻き込まれるかもしれないぞ?」

「ええっと…………」

「それしかいえないのか?」

「そ、そういうわけじゃないですけど……」


 妙に落ち着いてギルドの受付と話している雄成。実際のところ受付が巻き込まれる可能性は低いわけだが、そもそも冒険者同士の諍いとはいえこういうことが認められていいものかと雄成は疑問に思う。しかし、雄成はこれから捕まるところだというのに何を落ち着いているのか……と思うところである。


「………………」

「おおっ! 捕まる気になった…………!」

「ひっ!」


 雄成が落ち着ている最大の理由はトリエンテアに対する信頼があるからだ。トリエンテアは雄成に対し恩を持ち、その恩を返すため雄成の安全を優先する。いったいトリエンテアがどの程度何処まで恩返しをするつもりであるかは雄成にはわからないが、それでも自分がここで冒険者に危害を加えられるようなことにはならないだろうと思っていた。そうでないとそもそもトリエンテアを頼ることはできない。雄成の気持ちとしてはあまり少女の見た目をしているトリエンテアを頼るのは心情的に嫌なのだが、現状ではトリエンテアを頼らざるを得ない。よってこの程度で守ってくれない、対応してくれないのであれば……最初から頼りにしないほうがいいだろうという考えもある。まあ、それ以上に雄成にとっては現状に対しての現実味の薄さ、そもそもトリエンテアと二人の冒険者の行動に対して自分がその騒動の内にいるとは思っていないのもあるが。

 ともかく、トリエンテアは雄成を守るため行動し、二人の冒険者の前に立ちふさがる。しかし、そのトリエンテアはそれまでと雰囲気が違う。


「………………何をするつもりだった?」


 濃密な殺気、冒険者ギルド全体に広がるような、恐怖で凍えて立ち竦むような、恐ろしい殺気を二人に向けている。その余波で周囲の冒険者が怯え、中には思わず武器に手をかけていたり、トリエンテアから退くような行動をしている者もいる。実力者ほど、トリエンテアの殺気に対しとっさに行動してしまっていただろう。それくらいの殺気が冒険者ギルド内に広がっていた。

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