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DXD  「絶望に抗う戦士達」 03 0-1 「楽園への使徒(パラダイス・アポストス)」


___・・・ガタンゴトンッ・・・ガタンゴトンッ・・・ガタンゴトンッ・・・___

エメラルド「___へえ、こんな物で監視してる奴がいるなんてな。いったいどこの誰の仕業だろう」


手の平に転がる虫を、しげしげと見ながらエメラルドは気楽な様子で言った。


現在、エメラルドは{魔王軍拠点 秘密通路}をトロッコに乗って進んでいた。石レンガと丸石で造られた長い通路を進んでいく。


エメラルド「___まあ、別にどうでもいいか。・・・それよりも、やっぱりこれは止めとかないとまずいよなあ」

彼がこの秘密通路を通っている理由___それは数分前、敵施設から脱出しようとした者達の持っていたタブレット端末に載っていた[ある情報]を見たためだ。


真偽事態は個人的には正直どうでもいいが、敵拠点うえには仲間がいる。このままだと全滅する可能性も無くはないし・・・それに近道にもなるので、ついでに片付けることにした。


エメラルドは薄暗い通路を、トロッコのスピードを僅かに上げた。


エメラルド「・・・それにしても、間に合うといいけど。なにせあと10分あるかないかだし・・・」














精密機器の光が不気味に点滅する、その部屋。


その部屋の主人は、映らなくなった画面を苦い顔でモニターを睨んだ。


???「___まさか気づかれるとはな・・・・・。しかし、既に仕込みは完了した。奴らにとっての地獄は、ここからだ・・・・・・・・」


私念の怨嗟の声が部屋に満ち、ドス黒い気配が辺りを支配した。


_______すべては、自分を切り捨てた憎きボスへの復讐を遂げるため・・・それはついに動き出す。
















ズババババババンッッ!!! 切り裂く斬撃が激しい輪舞曲を奏でる___


椛兵長「あーもう、こいつらしぶとい・・・」

不機嫌そうに大鎌を振るう椛兵長。旋風の如く振るわれる大鎌が、襲い来る肉片?を次々と切り刻んでいく。


しかし___それで終わらなかった。切り刻まれた肉片?はボトボトと石の床に落ちるが、一つ一つがまるで生きているかのように蠢き、再び襲い掛かってくる。しかもその中には、複数が融合し村人の背丈まで大きくなる個体もいた。

椛兵長(___ま、こんなの相手にもならないんだけど・・・)

飛びかかるものから、片っ端に切り刻んでいく椛兵長。


___次第に、肉片?の攻撃が和らいでいく・・・。

全てを、全滅させたわけではない。何十回、何百回も切り刻まれ続け、流石に学習したようだ。飛び散った肉片?同士が次々と融合していく。


椛兵長は、若干呆れ気味になりながら大鎌に付着した肉片?を消滅させる。ジュワッ!!を溶けるように消滅する音が辺りに響く。流石にこれくらいミンチにすれば耐えられないだろう。


___と、幾つも肉片?が融合していくにつれ次第に変化が起き始めた。


集合していく肉片?の色が次第に変化しだした。醜い赤色から、水面に浮くアオコのような緑色へと変色していく。


そして、___それはついにその正体を現した。












・{DXD北側遠見台}・


次郎「は~。しっかし暇だな・・・。」

{第8偵察部隊}に所属する次狼じろうは大きなあくびをしながら、丸石の屋根の上で日向ぼっこを満喫していた。


と、そこに{第8偵察部隊どうりょう}であり、同じく午後からの見張り当番である一郎いちろうが不機嫌な表情でこちらを見上げた。


一郎「___次郎、そろそろ降りて来たらどうですか。不謹慎ですよ・・・。」


次郎「そう堅いこと言うなよ、最近戦闘ばっかで忙しかったんだしよ。こういう時ぐらいのんびりしたって、バチは当たらないだろ?」

そう言いながら、再びあくびをする次郎。その様子を見ながら、一郎は呆れたようにため息を漏らした。


現在、{DXD防衛軍}はボスを含めた隊長クラスが総出で任務に当たっている。敵が襲撃を仕掛けてくるなら、まさに格好の機会とも言えるだろう。


その危機をいち早く伝える任務に付いているというのに・・・。などと考えていると、それを察したのか次郎が屋根から降りてきた。


次郎「悪かったって、そう怒るなよ・・・。___にしても、なんだか気味が悪いくらい静かだな・・・」

先ほどのとぼけた雰囲気とはうって変わり、真剣な表情で眼下に広がる平野を見る次郎。


一郎は「・・・確かに、何かおかしいですね。いつもならヒツジやウシの群れがいてもおかしくないのに・・・」

一郎は肩に掛けていたAK―47のスコープを覗いた。だがいくら探しても、羊はおろかニワトリの一匹もいない。

この周囲はトライバル達や{DXD防衛軍われわれ}が定期的に巡回しているため、いつもなら自然スポーンしたモブが群れをなして暮らしている。

ではなぜ今はいないのだろうか___?



一郎「いやな感じがしますね。隊長・・・大丈夫でしょうか?」

一郎は不安な顔で広がる草原を見渡した。











最高戦力不在の{DXD防衛軍}本部___


そこにもまた、迫りくる脅威があった。


???「{DXD防衛軍}本部ヲ視認」


???「全部隊ニ通達___「{DXD防衛軍}ノ完全破壊命令}ヲ実行セヨ」


赤い二つの残光の軍勢が{DXD防衛軍}に迫る_____











{DXD防衛軍}が各地で行動している最中、施設より数十キロ離れた草原に異変が起こった。


その場の空間がまるで渦潮のように歪み、辺りにあるものをその渦の中へと飲み込んでいく。木や草、花々や動物。自然スポーンしたモンスターもその流れに逆らうことも叶わず飲み込まれていった。


___しかしこの渦は何も飲み込んでばかりではなかった。


あらかた吸い込んだ渦は己が消える僅かな間、その内側のものを吐き出した。そこにあったのは・・・異形の魔物の死骸。


この世界のものではない、渦の先にある世界から吐き出された死体の数々が、荒れた大地を穢してゆく。


その大地に、一人の男が迷い込む。


渦の中から落ちてきた男はそのまま地面へと倒れた。その体を覆うコートはボロボロで、髪は血に汚れ、きれいな金髪を台無しにしてしまっている。


すでにこの世のものではないかと思われたが___しばらくして薄く目を開き、むくりと上半身を起こした。

この世界にまた一人迷い込んできた者___「抹槍龍騎まつそうりゅうき」は辺りを見渡した。


抹槍「・・・ここは、どこだ・・・?」











田中「___流石にこれだけ離れれば大丈夫だろう」

{エアリ―ゼ}のコックピットで、携帯型の飲料水を一口飲む。


___敵拠点襲撃から30分ほど経過した現在、ボスと田中は追撃してきた敵部隊を掃討し終えていた。


場所は敵拠点から西に5キロほど離れた湖近く。辺りには、マツの林が広がり薄い霧が立ち込めている。


機体の下には、倒したモンスターのドロップ品があちこちに散乱している。{エアリーゼ}や「ダイアモンド・フォートレス}にはアイテム回収機能などは備わっていないため、そのうち消滅するだろう。

降りて回収することも出来るが・・・まだ敵拠点制圧が済んでいないため、今回は無視している。


田中「・・・それにしても、なんか不気味なところだな」

マツの林は基本、木と木の間隔が広いため日の光で辺りが照らされている。だが、この霧の影響で日光が十分に届かず、辺りは薄暗くなっていた。


 エアリーゼ[付近に生命体反応なし。戦闘によって逃走した可能性がありますが・・・妙ですね]

戦闘中静かだった{エアリーゼ}が訝しむ(音声としては変わらないが、なんとなくそう聞こえる)音声で呟いた。


田中「ん?何か気になることがあるのか、{エアリーゼ}」


 エアリーゼ[ここ一帯をサーチしたのですが、草ブロックが土ブロックに変わった形跡が見受けられません]

モニターに、いくつかの地面の写真が映し出される。


田中「・・・?それがどうかしたのか」

{エアリーゼ}の説明に田中は、眉をひそめた。


 エアリーゼ[___つまりですね、ここ一帯に草ブロックを食べて土ブロックにする動物がいないことが推測されます。理解しましたか?]

{エアリーゼ}は、呆れたような音声で返答する。


田中「___あ、そういうことか。・・・となると、もしかして大佐さんが言っていた「湖の怪物」の仕業か?」

今朝のミーティングの際、霧島大佐が言っていた「湖の怪物」の目撃情報。ここ一帯に動物のいた痕跡がないとすると、そいつに捕食たべられたということなどだろうか___?


と、その時{ダイアモンド・フォートレス}に搭乗しているボスから通信が入った。


ボス 無線「ここ一帯の敵は殲滅し終えたな。一旦他のメンバーと合流を___」

残党の処理も終わり、敵拠点制圧へと戻ろうと言いかけた___その時だった。


{ダイアモンド・フォートレス}と{エアリーゼ}のセンサーが飛行する物体を索敵した。


ボス 無線「・・・! この反応、ヘリか!?」

{ダイアモンド・フォートレス}カメラがその方向へと向けられた。


田中も{エアリーゼ}のカメラをその方角に向ける。拡大された映像の先には、二機の軍用ヘリコプターが編隊飛行していた。


 エアリーゼ[前方、1キロの低空___小型の軍用ヘリを確認、数は二機確認しました]


田中「あれか!ボス、どうしますか?所属が判らない以上、下手に出るのは・・・」

下手に接近すれば敵と思われ攻撃されるだろう。田中は、ボスの判断を待った。


ボスはまず、{エアリーゼ}に周囲の確認を命じた。

ボス 無線「{エアリーゼ}、ヘリの進行方向にトライバル達、または{DXD防衛軍}に関連する施設等はあるか?」


 エアリーゼ[検索開始・・・。完了しました___記録を確認しましたが、範囲内にはボスの提示された施設等はありません]

エアリーゼは、淡々と答えた。それを聞いていた田中も、安堵の表情を浮かべた。


それを聞いたボスは、少し思案しているのか、すぐには返答が返って来なかった・・・。{ダイアモンド・フォートレス}のカメラアイは、ヘリの進行方向に固定されていた。


数秒後、ボスは決断した声が帰ってくた。


ボス 無線「・・・あのヘリを追跡する。{エアリーゼ}を[索敵回避機能(サイレント]に設定しろ」

{ダイアモンド・フォートレス}はヘリに気づかれないよう、静かに動き出す。


 エアリーゼ[了解しました。[索敵回避機能(サイレント]のインストールします]


田中「は、はい。わかりました!」

それに合わせて、田中も{エアリーゼ}を発進させた。


そして___田中とボスは、謎のヘリの追跡を開始した。










田中 無線「ボス、なぜあのヘリを追うんですか?」

所属不明のヘリの追跡中、田中がヘリを追う理由を聞いてきた。


ボス「・・・「毒を食らわば皿まで」ということだ」


田中 無線「・・・?ボス、それはどういう___」

そのボスの言葉を、田中はすぐには理解出来なかった。言葉の意味合い事態は知ってはいるが、なぜそれをここでそれを言ったのか・・・その理由が思い当たらないようだ。


そんな田中の反応にボスは{ダイアモンド・フォートレス}を一旦{自動操縦モード}に切り替え、胸ポケットから煙草を入れたケースを取り出す。それから一つ取り出すと、義手に仕込まれたライターで火をつけた。


ふう___と、吐いた煙が機内に消える。


そして、ボスは話し始めた。


ボス「___おそらくだが、今回の作戦の情報を流した者がいる。」

その言葉に田中は、驚愕の声を上げる。


田中「・・・なっ!?ボ、ボスそれはいったい____」

声を強める田中に「落ち着け」と、一言だけ言い放つ。一喝されたと思ったのか、田中は口を閉ざした。


静かになったコックピットの中で、ボスはため息をつき、話の続きを始める。


ボス「なにも、お前達や部下を疑っているわけではない」

おそらく、田中が一番恐れていることを先に否定しておく。再び話が止まっては、長くなる一方だ。


ボス「___だが、これまでの戦闘のやり方・・・。どうも納得が出来ないことがある」


田中 無線「・・・もしかして、敵拠点に設置されていたTNTキャノンのことですか?」

先程のこともあり、田中は探るような声で言った。


ボス「それもある、だがそれだけじゃない。一つ目は、こちらが拠点に接近したときにはすでに警報がなっていたこと。二つ目はTNTキャノンや対空用のディスペンサーが使用可能状態にあったこと。三つ目は既に迎撃体勢が整っていたことだ。あたかも、敵が我々の動きを知っていたかのようにな」


無線の先から、息を呑む田中の気配を感じる。ボスはそのまま話を続けた。


ボス「迎撃してきたゾンビ兵やスケルトン兵も、こちらにわざとおびき出されているようだった。そうでなければ、辻褄が合わない」

ジジッ___煙草の紙の部分がわずかに灰になる。


問題は、[誰か、どのような手段をもって、どの期間で]この作戦の詳細なデータを盗み出したか___ということだ。





現在、{DXD防衛軍}の総員人数は約1200名ほど在籍している。


ギアと共に来た兵士が約300名。


霧島大佐直轄兵士が約600名。


軍曹を中心とする部隊兵約¥250名。


その他、少数兵で編成している部隊(田中率いる第{8偵察部隊}や、翔の通称{モンスター部隊}など)や、民間人で設立した自警団約50名となっている。


ちなみに、椛兵長やダブル、エメラルドなどの部隊は含まれていない。


椛兵長の所属する、「ソヴィエト社会主義共和国連邦」は、同盟国家。ダブルは傭兵組織「ベルナギルド」に所属しているため数には入れていない。

ちなみに___エメラルドは本部に人数を報告していないため、不明である。(少なくとも20名は確認されているが、いつの間にか居なくなっていたりするためだ)それを編成いれると2000名を超えるだろう・・・。


とはいっても、すべての人員が本部にいるわけではいない。遠方の農村のの警護、自然スポーンするモンスターの討伐部隊、幻想郷の住人の捜索など___、約六割は各地に散っている。


今回の作戦の計画案は、2週間前にギアから提案された。


先の戦闘で、組織維持のための資金と食料及び備品などの確保などを推奨するレポートを提示された。それ自体は全く問題ない案件ということもあり、その後数日作戦案を組み上げていった。


その間、このことを知っていたのはボスとギアのふたりだけのはずだ___


隊長クラスや兵士に作戦内容これらを伝達したのは、それから10日後のこと。これで情報が漏れたとすれば、敵側に与えた時間は最低1、2日程度。それではここまでの準備が出来るとは思えない・・・。


___おそらく、作戦内容ミッションの内容を傍受ジャックしていた存在ハッカーがいる。


ボス(・・・だが、それにしても敵兵士の扱いがあまりにも雑に使われている。ここまで調べていたのなら他にも戦略はあったはず、となると・・・)

未だ姿の見えない敵の存在に、ボスの表情は険しくなる・・・。


田中 無線「・・・あの、ボス?」

___と、ここで口を閉ざしていた田中の不安そうな声が耳に入り、はっと我に返る。


ボス「・・・どうした」

通信画面を音声通信シグナルから、映像通信ライブに切り替える。そこには、不安に満ちた目で画面を見る田中の姿があった___


___田中をここまで不安にさせているのは、俺が仲間を疑っているかもしれないからだ。


田中は___組織の中でも人一倍仲間を大切に思っている。・・・昔、少しの間組織のことを任せ、遠征に行ったのだが・・・。かなり神経をつかっていたのか、戻ったときはかなり疲弊しているありさまだった。本人は何も言わないが___おそらく過去に何があったのだろう。


仲間や家族を失ったものは、たくさんいる。___しかし・・・田中の場合は、少し違う気がした。


そう考えている間、田中は黙っていたが___ようやく口を開いた。

田中 無線「あ・・・す、すみません。しばらく通信がなかったもので___」

そう言って、会話を続けようとした・・・、その時、突然{エアリーゼ}の警告音アラームが二人の会話に割り込んだ。


 エアリーゼ[___ボス、田中マイスター、会話中失礼します。緊急事態です先行するヘリの姿勢制御が不安定になっています]


田中 無線「___えっ!?」 ボス「___!」二人は同時にそれを見上げた。


{ダイアモンド・フォートレス}のカメラが映す先___先程よりも濃くなった霧に軍用ヘリのシルエットがぼんやりと浮かび上がる。


{エアリーゼ}の言う通り、前方を飛ぶヘリが左右に大きくふらついている。後方のヘリはそれに対応しようと、速度を落とそうとしているが・・・どういうわけかそちらも上手く行っていないような___そんな危険な操縦をしているように感じる。


いったい、あの機体で何が起きているのか。そう考えた・・・その時だった___


___ジジジジッガグンッッ・・・・!!


突然機体が激しく揺れ、操縦が効かなくなった。いきなりのことで、姿勢制御プログラムが不安定になり、機体が前に倒れるように加速し続けてしまう。


ボス「___まずいっ!体勢を立て直さなければ・・・・・っ!」

どうにか体勢を戻そうと、操縦レバーを操作するが一向に改善しない。・・・むしろ、悪化している___


田中 無線「___ボスッ!?だいじょ・・ですか_____。ボ__・・・___!!」

通信にも障害が発生している世で、田中との通信が途切れてしまう。


ボス(これは___、まさか機体が操縦不安定化ジャミングされている・・・!?)


しかし___{ダイアモンド・フォートレス}を含め、{DXD防衛軍}の戦闘兵器には対・機能不安定化防止プログラム[ A・Z・Kシステム]アンチ・ジャミング・キャンセラーが搭載せれている。


それを打ち破るほどの兵器が幻想郷このせかいに存在するのか・・・?


___そう自身の中で考察している間も、未だ制御システムは不安定のまま。計器類の狂ったように警告音を発し続け、モニターにはいくつものエラーが浮かび上がる。


ボス「・・・っ、せめて緊急停止さえできれば___!」

どうにか機体を立て直そうと操縦レバーを動かすが、機体はなおもいうことをきかない。・・・むしろ、操作しようすればするほどコントロールが効かなくなっている___そこで、気がついた。


ボス「・・・そうか、これは___そういう仕組み(システム)ということかっ!」

つまり___正常に操作しようとすればするほど機能を狂わせるシステム。それこそがこの異常の正体だ。


___それがこの異常の原因とすると・・・いったいどうやってそれを侵入させたのか?


そう考えていた直後、モニターに[前方警告]の文字が浮かび上がる。モニターの先にが___岩肌の露出した崖壁に迫っていた。未だ払拭されない疑念が頭に残り、周囲の状況確認を疎かにしてしまった。


「まずいっ!」そう叫び回避しようとするが、間に合わない。岩壁に激突する、そう覚悟した___その時だ。


田中 無線「_____ボスッッ!!」

無線機から田中の声が聞こえた直後、モニターに{エアリーゼ}の碗部が{ダイアモンド・フォートレスを抱えこむように接触してきたのだ。次の瞬間___


ガリリリリリッッ_____ドオオオオンッ!!! 凄まじい衝撃と音が機内響き渡る。体が大きく揺すぶられ、一瞬平衡感覚が喪失し・・・気を失ってしまった。










田中「___ボス、ボスッ!応答してください・・・ボスッ!!」

{エアリーゼ}の機内に叫び声が響き渡る。


突然{ダイアモンド・フォートレス}との通信が取れなくなり、さらに機体の挙動もおかしいことに気づいた。岸壁に接近しても一向に減速しない状況に、田中はかなり危険な賭けに出た。


猛スピードで前進する機体に半ば強引に接近し、激突寸前でどうにか軌道を逸らすことができた。岩肌をガリガリ削り、土ブロックを大量に吹き飛ばしながら、どうにか機体を停止させることができた田中であったが・・・。

未だボスとの通信が繋がらないことに、焦りと不安が混ぜこぜな、とても気持ち悪い気分でいた。


いつまでたっても返答のない状況に、業を煮やした田中は{エアリーゼ}コックピットの開閉スイッチを押した。


ハッチが開き、外の空気が機内に入ってくる。さらに霧が濃く立ち込めているにもかからわず、なぜか湿気を感じなかったが___そんなことはどうでも良かった。


{エアリーゼ}から降りると直ぐ様{ダイアモンド・フォートレス}へと走る。二機の激突の衝撃で、辺りはひどい有様になっていた。地面は大きくえぐれ、底には石が覗いて見えた。飛び降りればハート2つ分くらいはダメージを負うだろう。


{ダイアモンド・フォートレス}に近づくと、一瞬焦げ臭い匂いにひやりと汗が出てくる。見るからに火災などは起きていないようだが、急いだほうが良さそうだ。


ひざまずくように止まった{ダイアモンド・フォートレス}のコックピットへと駆け上がり、ハッチの開閉スイッチを押す。バシュッ!とエアロックが解除される音とともに、ハッチが開いた。


田中「・・・ボスッ!大丈夫ですかっ!?」

コックピットの中を覗き込むと、座席の上で気を失っているボスを発見した。直ぐ様側に駆け寄り、シートベルトを外しながら再び声を掛ける。


そうしている内に、「うう・・・」とうめき声を上げた後、手で顔を押さえながら身を起こした。


田中「ボス、どこか怪我を・・・!?」

携帯式医療キットを取り出そうとしたが、ボスが止めるよう手で制した。


ボス「・・・いや、大丈夫だ。それより、ヘリはどうなった」

座席から立ち上がり、コックピットの外に田中と共に外に出た。


田中「・・・それが、その___おそらくあれではないかと・・・・・・」

田中が指差す方向___黒煙が2つ上がっている光景に、ボスは険しい表情を浮かべた。


ボスのことに精一杯で気づかなかったが・・・おそらくあの二機も制御不能で墜落したのだろう。この様子では、乗っていたものは全員・・・___


ボス「___{エアリーゼ}、お前は機能に異常はないのか」

突然の大声に一瞬すくんでしまう田中。見ると、ボスが{エアリーゼ}に確認を取っているようだ。


 エアリーゼ[はい、エアリーゼ(わたし)の機能には問題ありません。___しかし、どうやら追加装備された機材に影響が出ています。現在の所、遠方への無線が使用不能です]


{エアリーゼ}の解答に眉を寄せ、「そうか・・・」とことばをもらしてさらに険しい顔つきになるボス。

・・・しかし、なぜ無線が使用できなくなってしまったのだろうか?


田中「・・・ボス、これからどうしますか?ここは一旦戻ったほうが良いと思うのですが」

田中としては、ボスの容態が心配ではあったが___


ボス「___いや、おそらくここまで来た時点で相手の罠に掛かっている。増援はむしろ被害を生むことになるだろう。{ダイアモンド・フォートレス}はこんな状態だ、ここからは徒歩で向かう」

そう言うと、ボスは機内からM16A1アサルトライフルを取り出してきた。


田中「なっ!?ボス、それは無茶です___!」

コックピットから飛び降りようとするボスを、田中は慌てて止めようとする。


田中「あなたは、{DXD防衛軍}の[総司令ビック・ボス]なんですよ!貴方に何かあったら___」


ボス「・・・では、このまま見過ごせというのか?」

ボスの鋭い眼光が田中に向けられる。

・・・わかってはいる、こうなっては自分にはどうしようもないことは___だから、田中は次に言う言葉を決めていた。


田中「___ここから先は、自分が行きます。{DXD防衛軍}[第8偵察部隊隊長]田中風技が行って参ります」

田中は一瞬笑みを浮かべ、ボスに敬礼をする。


そして___田中は{ダイアモンド・フォートレス}から飛び降りると、ボスの静止する声を無視し走り去った。










時間は数刻前に戻り___{魔王軍拠点 大広場}


数多の異形達が集結し・・・それはついに、椛兵長の目の前にその正体を現した。


椛兵長「___うわー、こんなのもいるんだ・・・」

数多の人間に寄生し操っていたものの正体___それは、巨大なスライムだった。


若干引き気味で言ったのは、その外見のせいだ。


シルエット事態は、一般的なスライムと変わらない・・・一部を除いては。まるで整備されていない池に浮くアオコのようなボディ。そして、その所々に浮かぶ白い塊が、より一層不気味さを感じさせた。


___ブルルルルルッ!


得体の知れないスライムは、体を震わせ咆哮のような音を轟かす。

さらに各部の側面が大きく突出し、その体の形を変化させていく。そして、両碗が巨大化した巨人のような姿になったのだ。


全長20ブロック(一ブロック50センチと計算として___約10メートル)の大きさまで膨れ上がったスライムを、椛兵長は冷たい視線で見上げた。


椛兵長「・・・いくらたくさん集まって、体を大きく見せたところで___その程度で私に勝てると思っているの?」

手にした大鎌を一回転させ、地面を蹴ってスライムに接近する。


スライムは右腕を大きく振り上げ、椛兵長へと振り落とす。打ち付けられた衝撃で石の床にひび割れたクレーターが出来上がるが、その中に椛兵長の姿はない。


ザシュッ! とスライムの腕が肘の部分が切り落とされる。腕を切り裂いた椛兵長はそのままスライムに肉迫し、すれ違いざまに右足首を両断した。


傷口から、血のように小さなスライムを大量に噴き出す。椛兵長はさらに追撃を仕掛けようとした___その刹那。


スライムの背中から数多の触手が生え、椛兵長に襲いかかる。しれを回避しようしたその時、左足に違和感を感じたのもつかの間、倒れるように体勢を崩してしまう。


椛兵長「・・・っ!?こ、これは___」

左足を見れば、先程吹き出した小型のスライムが足にベッタリとへばり付いていた。それに一瞬気を取られてしまい、スライムの触手が迫る。


なんとか触手から逃れようと、左足にへばり付くスライムに大鎌を突き立て消滅させる。自由になった椛兵長は、迫り来る触手を大鎌で次々切り払うと一旦後方に下がる。


間一髪のところで触手から逃れた椛兵長であったが・・・次の瞬間、ボコッ!!と地面が大きく割れ、中から切り裂いたはずのスライム右腕が現れた。


椛兵長「・・・えっ!?」

いきなりのことで、対応が遅れた椛兵長はそのままスライムの右手に捕まってしまう。すざましい力で椛兵長を握り締め上げる。そのあまりのパワーに、椛兵長はうめき声を上げてしまう。


椛兵長(・・・切り落とした時、クレーターの亀裂に潜り込んだ?)

霞む目でスライムを見ると、切り落とした腕と腕がつなぎ合わさるように融合している。今までとは比べものにならないほどの再生力だ。


椛兵長を締め上げる力がさらに強まる。


椛兵長「・・・ううぅっ!」

握り締め上げる腕の力がさらに強まり___ついに手にした大鎌を落としてしまう。


___シャラアアアンッ!!


石の床に深々と突き刺さる大鎌。それを見たスライムは顔にあたる部位を歪め、ニヤリとあざ笑うような模様を形作った。


ボコッ!と床に埋まっていた部分を完全に外に出したスライムは、椛兵長を捕食しようと口のように開いた穴の中へと近づける。

なんとか脱出しようともがくが、ヌメッとしたジェル状のスライムが全身に絡みつき、思うように動けない・・・。


捕食たべられる_____っ!そう覚悟した、その時だ。


________ボシュッ、・・・・・・ボズンッッ!!!


ひじの部分に何かがめり込んだ音がしたかと思えば、次の瞬間、眼の前でスライムの腕が弾け飛んだ。


腕が吹き飛んだスライムは大きくのけぞり、ズドオオオンッ!!後方に派手に倒れ込んだ。


衝撃で手の中から放り出された椛兵長を、後ろから優しく抱きしめられ___いわゆる「お姫様抱っこ」の状態で受け止められた。


霧島大佐「___大丈夫ですか、椛兵長?」

XM109を肩に背負い、XM29をベルトに連結された専用大型ホルスターに下げた霧島大佐が言う。


そのまま石の床に着地し抱えていた椛兵長を下ろした。椛兵長は倒れ伏したスライムを横目に、不思議そうに霧島大佐を見上げた。


椛兵長「___霧島さん、どうしてここに?」

そう聞く椛兵長に、霧島大佐はそのおでこに軽くデコピンをした。


パシッ。と叩かれた椛兵長は「あうっ!」と声を上げ、叩かれたおでこを両手で押さえた。女の子座りでうずくまる椛兵長を、子供を叱る親のような顔でみる霧島大佐。


霧島大佐「どうしてここに・・・じゃないですよっ!椛兵長が予定のコースを外れているのに気づいて、慌てて駆けつけたんです。しかも、やっと付いてみたら大きなスライムに捕まってるし___」


霧島大佐のお説教が始まろうとした最中、ズズズズズンッ!___と後ろから石を踏み割る轟音と衝撃で起きた風が二人を包む。


___ブルルルルル・・・ブルルルルルルルルルッッ!!


転倒していたスライムが再び起き上がった。ちぎれ飛んだ腕も既に再生したようで、ものすごく怒っているようだった。


霧島大佐はそれを見て、「はあ・・・」とため息をつくと近くに刺さっていた大鎌を引き抜いた。


霧島大佐「・・・続きは後にしましょうか。まずは___あのデカブツを片付けるとしますか」

そして、大鎌を椛兵長に差し出した。


椛兵長「・・・はーい。わかりました・・・」

怒られて若干機嫌が悪い様子だが、素直に差し出された大鎌を受け取った。


戻ってきた大鎌をくるんっ、と一回転させ、改めて目の前のスライムに目を向けた椛兵長。専用大型ホルスターにしまっていたXM29を構える霧島大佐。


椛兵長が、霧島大佐を横目で見る。


椛兵長「___で、どうするつもりなんですか?言っておきますが、あのスライム?、みたいなのに私の攻撃あんまり効果ないんですけど・・・」

再びスライムに視線を合わせたが、先ほど吹き飛んだ腕も完全に修復し終えていた。


言ったことは事実だ。椛兵長わたしの能力と、このスライムの能力は相性が悪い。

そして、それは霧島大佐も同じだ。彼の{万物の風を操る程度の能力}は支援向きの能力であり、基本的には銃での戦闘がメインだ。


しかし___霧島大佐には他にも能力がある、こういった未知の敵に対応できる能力が。


霧島大佐「椛兵長、ここに来るまでに貴方とあのスライムの戦闘をすこし見ました。確かにあの修復能力は油断できません。___しかし、それが無限にできるとは思えません」

スライムを睨むように見る霧島大佐。


しかし、それだけではないことに椛兵長は気づいた。霧島大佐が見つめるモノ___スライムの体のあちこちに散らばった・・・あの白いつぶつぶである。


椛兵長「・・・まさか、あれが何か関係してるっていうの?」


霧島大佐「わかりません。しかし、アイツの腕に榴弾を撃ち込んだ際あの白い球体が逃げるように体の中を移動したのを見ました___」












霧島大佐が椛兵長の救援のため、施設内を走っていたときである。


椛兵長が降下したと思われる地点で地響きにも似た衝撃音が聞こえ、霧島大佐は底に向かった。通路を駆け抜け石レンガの壁を登り、襲いかかってくる魔王軍兵をあしらいつつ先を進んだ。


そして到着した霧島大佐が見たのは___ブロック20個分の大きさはある巨人のような姿をしたスライムだった。


一瞬その姿に唖然としてしたが___地面から生えた腕に捕まる椛兵長を見た瞬間、霧島大佐は即座に戦闘モードに意識を切り替えた。


肩に背負っていたXM109に榴弾の装填されたカートリッチ(弾倉)を装填し、狙撃と、その後の救出に最適なポイントを索敵する。


あまり時間がない___そう考えた霧島大佐は、近くの崩れかけた通路に駆け上がり、狙撃体勢に入った。狙いは、椛兵長を捕えるスライムの右腕の関節に当たる部分。___チャンスは一度きりだ。


スライムが椛兵長を捕食しようと顔に近づける。霧島大佐は、引き金を引いた。


___バズンッ!XM109から榴弾が放たれ、正確に無比にスライムの右腕関節部分に埋め込まれた。そして数秒後、関節部分で榴弾が爆発し本体と右腕が弾けるように離れた。


その衝撃に驚いたのか、右腕のほうも掴んでいた椛兵長を離した。霧島大佐もその瞬間飛び出したのだが___よこめでスライムを見た時、おかしな光景を目の当たりにした。


弾け飛んだスライムの右腕。その断面に白い球体が半分はみ出していたのだが___次の瞬間、それを守るかのように内側に取り込んだのだ。その球体はそのまま血のように体の中を移動し、その代わりと言うように肩にあった球体が右腕へと移動していった。


___霧島大佐は、それを見逃さなかった。












椛兵長「___それが、あのスライムの能力に関係していると?」

訝しげな表情で霧島大佐をちら見する椛兵長。


霧島大佐は、それを肯定するようにうなずく。


霧島大佐「あれだけの質量を細密に制御しようとすると、普通のスライムではまず不可能です。となると、それらのコントロールをする{コア}があるはずです」

それがあれとすると、傷ついたコアを移動させ代わりに入れ替えたことににも説明がつく。___と付け加えた。


二人は憤怒に怒り狂うスライムと対峙する。霧島大佐の推測が正しければ、スライムの{コア}が14つあることになる。

それをどうやって破壊するか・・・問題はそこだ。


霧島大佐「・・・そろそろ来ると思うんですけど、すこし探りをいれておきますか!」

最初に動いたのは、霧島大佐だ。


両手に持つXM29を構え、スライムに接近する。スライムはそれを迎撃するため、左足を上げ霧島大佐を踏み潰そうとした。しかし、それを邪魔する者もいる。


椛兵長が霧島大佐からタイミングを僅かにずらし、スライムの左側に回り込む。真横まで来ると一気に加速し、軸足となる右腕首に一閃。軸足を切り取られたスライムは重力に逆らえず、スライムの体は床へと倒れ込む。


霧島大佐がまず狙ったのは、その切り落とされた右足にある白い球体だ。


手元の二丁ライフルが同時に火を噴く。三点バーストで撃たれた6発の弾丸は、スライムの中に浮かぶ球体に命中___する寸前で周囲のスライムによって全て止められてしまう。


しかし___霧島大佐に落胆や動揺の様子はなく、あるのは・・・計画がうまく行ったことを喜ぶ笑みだった。


その直後___三つの影が飛び出した。


翔「世地獣拳 [一天飛波いってんとっぱ ]!!!」

翔の格闘拳が邪魔なスライムを吹き飛ばし___


晃毅軍曹「撃ち貫け、鋼夜の槍 「アセロノチェ・ランサ]!」

晃毅軍曹の貫通型魔法弾幕が、正確無比に白い球体を撃ち抜いた。


___グギュヂュウウウウウウウッッ!?!!


白い球体はは、気味の悪い音___というより、断末魔に近い鳴き声は発し床に落ちた。ビャチャリと音を立てた球体は徐々にその形を変え、例えるならば白色のシルバーフィッシュに近い姿になり、体をくねらせビチビチをのたうち回る。


その上空から、ダブルの片手剣がまっすぐ突き立てられ、シルバーフィッシュモドキは息絶えた。


ダブル「___なんとか間に合ったみたいだな」

片手剣を引き抜いたダブルが、霧島大佐へ目を向ける。


霧島大佐「ええ。タイミングバッチリでしたよ」

霧島大佐は笑顔でそれに答えた。

それとともに、霧島大佐はスライムを見つつ、「やはりそうだったか・・・」とつぶやく。


スライムの切り落とした足が再生しない。傷口から液体のスライムをドボドボと血のように垂れ流しながら、苦悶にも取れる音を上げている。


やはり、あのシルバーフィッシュモドキが各部位の制御をしているようだ。


ここまで派手に爆音を立てていれば他のメンバーも駆けつけて来るだろう。そう考察していた霧島大佐は、彼らがここに来るのを予測して行動していたのだ。

これでこちらは五人となり、戦術の幅がこれで大きく広がった。あとはこのスライム(ばけもの)をどう倒すかだ。


霧島大佐は全員に呼びかける。

霧島大佐「どうやらあの白い球体がスライムの弱点のようです。各部位を切り落としつつ一つずつ潰していきます!」

手持ち武器をXM109に持ち替えた霧島大佐は、各メンバーに指示を出す。


霧島大佐「椛兵長は各部位の{コア}の剥離と分断をお願いします。晃毅軍曹は椛兵長の援護カバーを、翔さんは切り離されたスライムを吹き飛ばしてください。ダブルさんと私は全体のフォローに回りつつ、{コア}を破壊します」


椛兵長「いままでやられた分、後悔させてやります・・・」翔「任せとけ!」晃毅軍曹「わかった・・・でもスキがあったら俺も狙っていくからな」ダブル「了解した、拘束術の準備をしておく」

それぞれが戦闘態勢をとった___その時だ。


___ブルルルルルルルルルルルルルッッッ!!!


__突如、スライムがけたたましい咆哮を叫びだし、体の形状を変体させ始めた。手足が胴体に吸収され一旦ブロック状になり、次の瞬間三つのトカゲのような頭が首長竜のように生えた。胴体もトカゲのような形状に変化していき巨木のような尾が施設の壁に叩きつけられ無残に破壊された。


翔「・・・なっ、なんだあいつ。巨人の次はドラゴンになった!?」晃毅軍曹「へえ、こんなこともできるんだな・・・」

翔は驚愕の表情でスライムを眺め、晃毅軍曹もまた面白いモノを見る目で今なお変化しているスライムを観察していた。


ダブル「___頭が三つの蛇・・・まるで「ヒドラ」だな」

ダブルの、うわ言のように呟いた名前に、霧島大佐は眉をひそめた。


霧島大佐「・・・「ヒドラ」?」


ダブル「・・・前に生活いたところで聞いたことがある。「タソガレノモリ」なる世界___炎に包まれた大地に君臨する三首の竜だ。話だけ聞いただけで見たことも行ったこともないが、こんな感じのモンスターだったな」

ダブルの話を聞きつつ、霧島大佐は再度戦術を組み立て直す。


変体したスライム(今後、このスライムのことを「ヒドラスライム」と呼称する)の{コア}の位置は、それぞれの頭に三つ、首に三つ。胴体に二つ、足にそれぞれ一つずつ配置され計四つ。最後に尻尾に一つで合計十三個。

___それだけならまだいい。問題は、なぜスライム(こいつ)はこのタイミングで姿を変えた、ということだ。


霧島大佐(___やはり、何かがおかしい・・・)


ここに来るまでに、何者かの視線を感じることが数度あった。はじめは魔王軍の兵士とも考えたが、この異形のスライムを見た時、言葉には言い表せない不吉な予感が頭をよぎり。


そして___今のこの状況下でその悪寒がはっきりと感じた。これは、何者かが裏にいると・・・


霧島大佐「___全員、一旦後退してください。これは罠です!」

霧島は叫ぶ。このままでは危険だと、瞬時にはじきだされた思考が訴えかけてくる。


突然の後退を言われ、全員が戸惑い霧島大佐へと視線を走らせる。晃毅軍曹が「いったいどうし___」と言いかけたその瞬間____


ヒドラスライムの三つ首竜の口から大量の酸のブレスが吐き出された___!
























薄暗い通路に一人の足音がこだまする。歩く足音はどこかぎこちなく、たどたどしい。かつての実験の失敗による後遺症は未だ彼をさいなんでいた。


???「___もうすぐだ、もうすぐ復讐を果たせる・・・」

足音の主は年を取り、本来ならばすでに死を迎えているはずの身だった。___だったはず、だ。


老人は動きの鈍い足を引きずるようにして、やっと目的の場所へとたどり着く。


部屋の一部はガラスでできており、その向こうは湖底が広がっている。老人はガラスの前まで歩み寄ると、まるで我が子を見るような目でガラスの奥を見つめる。

ガラスを三回、規則正しく叩き、愛しい我が子に合図をする。___こちらへおいでと。


ガラスの面積では到底収まりきらない巨大なナニカが老人の前に現れた。老人は羽織っていた外套を脱ぎ、愛子に告げる。これからおこなうことを。その汚れた研究服の群れポケットには、ボロボロのワッペンがぶらさがっている・・・かつて仲間の証として「ボス」から渡されたワッペンが___


老人「___さあ行こう。 [楽園への使徒パラダイス・アポストス] 、復讐を果たすとしよう・・・」


スライムが化けた三首竜のブレスが椛兵長達を襲う。果たしてその運命は___

一方、ボスと別れた田中は一人墜落したヘリへと走る。


そして___残されたボスは二人の部下からとある、選択をせまられる。

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