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DXD   「絶望に抗う戦士達」 02 「忍び寄る影」

予定よりも話が多く、いったん分割します。

ミーティングが終了し、朝食の後片付けをしていると。


???「隊長、部屋にいないと思ったらここにいたのか」


会議室に1人・・・と1匹の子犬が入ってきた。


彼の名前は剣崎けんざき。自分の部隊、{第8偵察部隊}のメンバーだ。傍らには彼の相棒の秋丸あきまるが尻尾を振っておすわりしている。


田中「後片付けが終わったら、そっちに行くつもりだったんだよ」


田中は使用済みの食器を台車に載せ終わると、石の机を布巾ふきんできれいに磨いていく。


秋丸「あんっ!」(・∀・)


秋丸はこちらに寄ってくると、尻尾をぱたぱたと振りながら挨拶するように鳴いた。


田中「秋丸もおはよう。朝ごはんはしっかり食べたか?」

田中が秋丸の頭をなでてやると、うれしそうに目を細めた。


剣崎「ああ。ちゃんと食ってたぜ。そういえば隊長、今回の作戦って隊長クラスだけでやるんだってな?」


田中「そうらしいな。気を引き締めないと・・・」


すべての後片付けが終了し、田中と剣崎と秋丸は台車を押しながら厨房に向かった。


剣崎「まあ、あんたらの実力なら余裕だろ」


田中「そうは言っても、警戒は怠らないほうがいいだろ。何が起こるかわからないし」


剣崎「そうだけどよ、隊長はほんっと慎重派だよなあ」

剣崎は、ケラケラ笑いながら田中の後を付いていく。


と、不意に剣崎が立ち止まった。それに合わせて、田中も立ち止まる。


田中「どうした?」


剣崎「いや、そういえば変な噂が流れてたなと思ってな・・・」


田中「変な噂?」


田中が怪訝そうに聞くと、剣崎は腕組みをしながら話し始めた。


剣崎「ああ、なんでも基地付近で不審な人影が目撃されてるって話だ。まあ、それだけならいいんだが、その場所ってのが{封印指定機密区}なんだよ」


田中「{封印指定機密区}?」

田中は剣崎に聞き直した。


{封印指定機密区}とは、これまでの戦闘や探索で危険と判断された物が保管される施設だ。この防衛軍でも最高クラスの厳重な警備が敷かれている場所のはずだ。

たとえば、かつてゲリラの基地を強襲した際に採取されたゾンビウイルスであったり。これは機密事項だが、死亡した「クローンブロさん」の細胞サンプルなど、様々な物が保管、封印管理されているという。


その付近で、不審な人影となると・・・。


田中「それって、まずくないか?」


剣崎「ああ、だから警戒レベルが引き上げられたらしいぜ。しかし、あの場所は入れる奴は限られているはずなんだがな・・・?」


田中「・・・・・・・・・・・・」

田中は、なんだか不吉な予感を感じていた。偵察部隊からの「湖の怪物」の報告、「封印指定機密区の不審な人影」の噂。関係ないと言われれば、その通りなのだが・・・。


剣崎「・・・。ま、大丈夫だろうぜ。 今の所噂程度なんだし、心配することないさっ!」

考え込む田中を察して、剣崎は田中肩をポンポンと叩く。なんだかんだ言って、心配してくれる剣崎は本当に頼りになる存在だ。


田中「・・・。そうだな、今わからないことを思い詰めても仕方ないか」

田中は少し笑みを浮かべて、再び厨房に向かって歩き出した。


と、二手に分かれた通路で剣崎が支給された腕時計を見て声を上げた。


「あっ!しまった。そろそろ、「ソレン兵妖精三人娘[妖精の光](フェ―ヤ・スヴェ―ト)のコンサートが始まっちまうっ!!?」

剣崎は慌てた様子で走り出し、その後を秋丸も追いかけていった。


田中「・・・。あれ?剣崎ってアイドル好きだったのか・・・?」

部下の知らなかった趣味を一つ知って、戸惑う田中であった。











さて、食器を厨房にで引き取ってもらった後訪れたのは、大型兵器管理区の{第8格納庫}であった。



・大型機体管理区{第8格納庫}・

さて、ここへ来た理由はと言うと____


 エアリーゼ [ようやくきましたか。作戦の内容はすでにインプットしております。予想よりも4分42秒も誤差が生じてしまいました。もうすこしは早くこちらにこれないのですかあなたは・・・・・]


・・・、いきなり文句から始まる辺り、{エアリーゼ}らしいといえば、そうなのだろう。


自分の目の前にある機体{エアリーゼ}。全長12メートル、総重量45トン。背中に2枚の大型のウイングを備えた青色の二足機動兵器だ。

シルエットはシンプルで、可動域に優れ柔軟な機動性を有している。頭部は後ろに伸びる一本角と、V字のアイラインセンサーカメラが特徴的だ。シルエットは西洋甲冑に似た風貌をしている。背中の大型ウイングで長時間飛行することができ、さらにウイングは防御シールドにも応用できるのだ。

武装は、腕部に内蔵された「ビームショット」さらにそれを変質させ、「ビームソード」形態にもすることがすることもできる。腹部には「拡散式ビームカノン砲」が最大の武器で、他にも防衛軍で使用運用されている二足歩行兵器の装備を使用可能だ。


先程の声は、{エアリーゼ}のAIのものであるんだが、まあこうやっていつもいじってくる困った奴だ。・・・こうなったのは、自分のせいなのだが、その話はまた別の機会にしよう。


 エアリーゼ [わたしの説明をお粗末にしないでください。これだからあなたという人は・・・・・・・]


その間も、自分への文句を言い続けるエアリーゼであったが、そろそろこちらも本題に移らないと時間に遅れてしまう。

なので、早々に済ませたいのでエアリーゼのコックピットに乗り移った。そして、一言。


田中「エアリーゼ、今回の作戦もよろしく頼むな」

そう告げると、{エアリーゼ}は______

 

 エアリーゼ [な、なにを当たり前のことを言ってるんですか。当然ですっ!]


さっきまでの音声とは違い、少し慌てた様子のエアリーゼ。これが世に聞く「ツンデレ」というものなのだろうか?











・拠点強襲作戦開始時間・

ギア「全員揃ったな。では、これより強襲作戦を開始する!」

ギアは無線で各部隊員に連絡する。


ボス「全員、出撃する!」田中「了解しました!」


先行して拠点強襲を行うボス、田中は{ダイアモンド・フォートレス}と{エアリーゼ}それぞれのコックピットの中から返事をした。


翔「いつでもいけますよ!」霧島大佐「気を引き締めるて行きましょう!」晃毅軍曹「腕がなるな。出撃だ!」エメラルド「行くか・・・」ダブル「さて、仕事だ。」椛兵長「いっぱい魂、狩れるかなー♪」

他、降下部隊もスタンバイ完了のようだ。


ギア「ミッション、スタート!!」


強襲機「グレイト・ファング」が滑走路から離脱する。これより作戦が始まる。











その様子を、密かに監視する者がいることにも気づかずに・・・・・・・・。











強襲機「グレイト・ファング」の大型機体格納庫。


田中は、エアリーゼの各種武装の再確認をしていた。ふと、モニター横を見ると、ボスの機体{ダイアモンド・フォートレス}がそびえ立っていた。


拠点強襲用二足歩行兵器 {ダイアモンド・フォートレス}

全長14メートル、全備重量78トン。シルエットは大型で、防御特化型の機体だ。両肩の大型のスラスターユニットと、各部に設けられた姿勢制御ブースターアーマーが特徴的な機体だ。頭部は兜飾りのような無線受信用V字アンテナ。ツーアイのカメラセンサーなど{エアリーゼ}とは全く異なり、どちらかと言えば鎧武者を思わせる風貌だ。これに関しては、いずれ説明するが、今言えるのは作られた世界が違うということだけ言っておこう。

武装は、頭部内蔵式「対人用60mm機関砲」「大型ビームバスターソード{レクイエム}」、今回は装備していないが「超大型シールド{オリハルコン・ウォール}」そして、今回の作戦の要である、「多弾頭ミサイル搭載・粒子拡散大型バズーカ砲{ヴァルサリア}」である。この武器は、様々な弾頭を使用し状況によって多数の弾頭を切り替える「マルチリロード・システム」を備えている。中でも、{ジャッジメント}という弾頭は理論上核クラスの威力を誇る兵器だ。


その圧倒的な破壊力から、敵からは{DXD防衛軍}の象徴として認識されているようだ。その機体が基地に強襲すれば、必ず標的は{ダイアモンド・フォートレス}に向けられるはずだ。


また他にも、これの量産型や砲撃型、偵察型に重兵装型などさまざまな種類の兵器も存在している。

これらはボスが幻想郷に訪れる前に手に入れていたものだそうだ。


田中「なにがなんでも、ボスを死守しなくきゃな・・・」


いよいよ、作戦が始まる。








強襲機「グレイト・ファング」DD兵無線 

「ボス、田中兵長。間もなく降下ポイントです。機体降下準備をお願いします」


先行の{エアリーゼ}から先に降下のため、ハッチ前にて待機する。そして、目標ポイントに到着した。


格納庫のハッチが開いた。


DD兵無線「田中兵長、スタンバイエリア移動して下さい」


田中「{エアリーゼ}、出撃します!」

大型ウイングを展開、格納庫から出撃した。


DD兵無線「続いてボス。スタンバイエリアへ移動して下さい」


ボス「{ダイアモンド・フォートレス}、出るぞ!」

両肩のスラスターに点火、地上に向けて降下する。


2機の機体が地上に降下していき、そして無事地上に着陸する。

と、ここでボスから通信が入った。


ボス 無線「敵の陽動がこちらの任務だ。あまりやりすぎるなよ」


田中 無線「了解です!」


2機の機体が敵拠点へと向かって加速する。















???「くくくっ、ついにこの時が来たな・・・」


その声は、どこから話しているのかはわからない。だが、その声からは隠しきれない程の怨嗟の感情が混ざっている。辺りには数多の精密機械から漏れ出すライトの光が、不気味に蠢いているかのように明滅を繰り返しているのであった。


???「これは非常に良いタイミングだ。さて、{あれ}の試作実験を手伝ってもらおう。「ボス」」










・魔王軍基地・


田中 無線「ボス、敵拠点視界に入りました!」


{エアリーゼ}と{ダイアモンド・フォートレス}は、敵拠点の2キロ付近まで接近していた。


敵拠点の方では、すでにこちらの接近に気づいていたらしくけたたましい警報が鳴り響いていた。


と、突然要塞の外壁の一部が粘着ピストンと連動し、横方向に展開した。その中から現れたのは、TNTキャノンの砲台だった!


田中 無線「な、何っ!?」


ボス 無線「来るぞ、散開!」


刹那、敵拠点からTNTキャノンが次々と発射された。2機は右左に回避、{エアリーゼ}が腕部の「ビームショット」を連射し、TNTキャノンを2機、さらに外壁の一部を破壊する。


敵拠点の門が開き、大量の魔王軍兵士が溢れ出してきた。どうやらこの拠点は、ゾンビとスケルトンのモンスターで構成されているらしい。すぐさま、スケルトン兵の矢の雨が降り注ぐ。


ボス 無線「まさか、TNTキャノンがあるとは・・・。このままでは強襲部隊に支障をきたすな。先にあれを破壊する」

機関砲でゾンビの兵士をなぎ払いつつ、大型バズーカ{ヴァルサリア}に徹甲弾を装填する。


ドゴーンッ! と、発射音轟いたあと、内壁ごとTNTキャノンが3機爆発四散した。


魔王軍ゾンビ兵「オノレ!」


魔王軍スケルトン兵「DXD、抹殺セヨ!」


敵の志気はさらに上がった。残るTNTは3機。残りを破壊すべく、田中は{エアリーゼ}を飛翔させた。


と、今度は屋上部分の外壁が左右に展開し、ディスペンサーから花火式対空ミサイルが発射された。


田中「こんなものまであるのかっ!?」


 エアリーゼ [慌てていないで、さっさと撃墜してください]


ビームショットで対空ミサイルを撃ち落とし、エアリーゼの「拡散式ビームカノン砲」を撃ち放った。


基地にビームの嵐が降り注ぎ、残りのTNTキャノンをまとめて破壊した。


ボス 無線「よし、ここまでだ。敵を引きつけつつ、湖に後退する」


田中 無線「了解です。ボス!」


二機は、湖の方向へ後退した。










・強襲機「グレイト・ファング」部隊員用、降下ハッチ・


2人の戦闘を、部屋の窓から見ていた面々。


晃毅軍曹「流石だな。こういう作戦は、ボスの機体はうってつけだ」

窓から2機の戦闘を見ている晃毅。


ダブル「・・・、それにしてもあいつらどこからTNTキャノンなんて手に入れたんだ?」

いぶかしそうな表情を浮かべるダブル。


大佐「たしかに、これは調べる必要がありそうですね」

ダブルの意見に賛同する大佐をよそに、翔、椛、エメラルドは出撃前の装備確認をしていた。


翔「気の溜まりも十分集ったな・・・」

目をつむり、気を高めている翔。


椛兵長「うふふ・・・♪」

相棒の鎌を丁寧に磨きながら、楽しそうに笑っている椛。


エメラルド「・・・・・・・・・」

別の窓から外の景色を眺めるエメラルド。


と、内部無線が部屋に響いた。


DD兵無線「ボス、田中兵長の陽動で敵兵力が分散しました。これより降下体制に入ります」


その言葉に、室内の雰囲気が一瞬で変わった。


それまでのほんわかとした雰囲気はなくなり、ピリッとした空気が部屋に流れた。


降下口の前にまず立ったのは、晃毅軍曹だった。


晃毅軍曹「俺が前門の制圧に向かう。ほかは任せた」

晃毅から、すざましいほどの気配が溢れ出す。彼はエンドラの力を扱うことが出来るのだ。


霧島大佐「その後は、俺の{万物の風を操る程度の能力}で全員を降下をサポートする」

最後尾に並び、作戦内容の復唱をした。


翔「了解! 頼りにしてますよ、大佐」


ダブル「武器、食料庫の制圧は俺が片付けておく」


エメラルド「敵の司令官コマンダーは、そちらに任せますよ大佐」

と、その発言に狼耳をピクッ、とさせたのは椛であった。


椛兵長「ええーっ? 魂回収したいから、私が仕留めたいんだけど・・・」

頬をプクッ、とふくらませる椛兵長。


霧島大佐「まあ、それは早い者勝ちということで。さてそろそろですね・・・」


部屋の角のランプが点灯し、降下ハッチが開き始めた。


DD兵無線「では軍曹、出撃どうぞ。ご武運を!」


晃毅軍曹「じゃ、行って来る!」

開いた降下ハッチから勢い良く飛び出した晃毅。と同時に、エンドラの能力{エンド・ウィンド}を発動。瞬間、全身を紫色のオーラを全身にまとい、正門へと真っ直ぐに突っ込んで行った。


その直後に椛兵長が飛び出し、それに続いてダブルとエメラルド、翔と最後尾に大佐が降下した。










冷たい風が肌を流れるように、過ぎ去っていく。


下の敵拠点は、先程の奇襲で未だ体制を立て直しておらず、突然過ぎ去った強襲機への攻撃もままならない状態のようだ。北側の正門にいる魔王軍兵は、再び{DXD防衛軍}の機体が現れないか前方を警戒していた。


その直後、基地全体にすざましい衝撃が響き渡った!


魔王軍ゾンビ兵「ナ、ナンダ!?」


魔王軍スケルトン兵「敵襲カッ!!?」

突然の出来事に、状況を理解できない魔王軍ゾンビ兵。


震源は、彼等がいる正門の見張り台からのようだ。頂上部分の外壁が崩れ、大きな風穴の空いた壁からは煙がもくもくと吹き出している。


と、その穴から1人の人影が現れた。


晃毅軍曹「___ふう、さて暴れるとするか」

そんな言葉が聞こえた刹那、片側にいた兵士が吹き飛んだ。


魔王軍ゾンビ兵「ギャアアーーーッ!」魔王軍スケルトン兵「敵ダ!殺セ、ブッ殺セ!!」魔王軍スケルトン兵「侵入者ダッ。迎撃シロ!」


守備兵のスケルトン兵の矢が次々侵入者へと放たれる。しかし、放たれた矢の大半は、晃毅軍曹の周りに点々と浮かぶ紫色のオーラ[エンド・グラヴィティー]に弾かれ、たちまち消滅した。

エンドラの魔力と自身の魔法を組み合わせた防御魔法で、使用制限はあるものの、彼の戦闘スタイルとは相性のいい魔法だ。

もっとも、すべての矢を防ぐことは出来ない。敵兵の矢が当たらない理由は、簡単な話だ。

敵の攻撃が全く晃毅に追いついていないからだ。


晃毅軍曹に矢が当たる寸前、両手に装着した装備「高次元軌道移動補助装備」を起動した。

エンドラの能力を使えば、矢程度の攻撃を防ぐことぐらいなんともない。が、あれは彼自身を侵食する副作用を伴うため、長時間使用することは出来ないのだ。


手の甲取り付けられたクリスタルが輝き、光のワイヤーが石レンガの側面に張り付く。瞬間、晃毅軍曹の体を引き寄せ、続いて逆側のワイヤーを張りまた別の壁へと飛び移る。それを何度も繰り返すことにより、3次元の移動が可能なのだ。


もっとも、ダブルなどはこれの簡略版のようなものではあるがそれを生身の体でで行っているのだが・・・。それを除いても、この程度の兵士では彼の動きには対応できないのであった。


そして、晃毅軍曹の戦闘スタイルはここからである。


周囲に、球体タイプの魔法弾幕を形成。それを的確に、そして精密に敵に着弾させていく。


晃毅軍曹「魔弾の嵐[トルメンタ]!」


魔王軍スケルトン兵「ギャアアーーーッ!!?」魔王軍ゾンビ兵「ウゴアアアッ!」魔王軍ゾンビ兵「ガハッ、ォ、オノレ・・・」


しばらくして、付近の兵士を一掃した晃毅軍曹は、他のメンバーと合流するため歩き出した。

と、瀕死の状態ではあるが未だ戦意のある魔王軍兵に気づいた。


魔王軍兵「オ、オノレ・・・。貴様ハ行カセンゾ・・・!」


満身創痍で襲い掛かってくる敵を、晃毅軍曹は冷たい目で見ながら、短剣で喉元をバッサリと斬り捨てた。


魔王軍ゾンビ兵「・・・っ、・・・・・・・・・・・・!!・・・・・・____」


最後の断末魔も声に出すことなく、その場に崩れ落ちる兵士。


その横を、晃毅軍曹は無言で通り過ぎていった。













大佐「間もなく着地地点だ。行くぞっ!!」

風を操りながら、XM29の二丁撃ちで敵に威嚇射撃をする。と、ここで予定のコースを外れているメンバーをに気がついた。


大佐「椛兵長っ!?そっちじゃないです!」

どうやら、風の調整ミスではなく、彼女自身がパラシュートを操作して軌道変えてるらしい。

さらにこちらの操作範囲も外れてしまい、もう軌道修正をすることも出来なかった。


大佐(まずい、あの辺りは敵反応が尋常じゃない場所だ!)

だが既に大佐も着地地点に到着寸前である今、自分の軌道も変えられない。要塞東側中庭に着地した大佐は、椛兵長が不時着したと思われる南側への移動ルートを検索した。


自身の頭に埋め込まれた電子チップにアクセス。降下の際にインプットした要塞見取り図から最短ルートを割り出す。

大佐(ここから300メートル先の2階通路が、もっとも最短で目標地点付近に近づけるな!)

検索終了、ルートは決まった。大佐は銃を構え直しす。


すぐさま行動に移った。既に敵は配置に着いていたようで、通路の窓からスケルトン兵達が次々と矢を放ってきた。


魔王軍スケルトン兵「魔王軍二歯向カウ者メ!」魔王軍スケルトン兵「ココカラ先ニハ行カセンゾ!!」魔王軍スケルトン兵「死ネ、死ネッッ!!!」


大佐「それは予想済みだっ!」

XM29のオプション武装の20ミリエアバーストグレネードランチャーを1発、窓に打ち込む。数秒後、その階が爆炎に包まれ、爆発音とともに複数の骨の残骸が辺りに散らばって消えた。


と、今度は2体のゾンビ兵が大佐の前に立ち塞がる。


魔王軍ゾンビ兵01「ココカラ先ハ、行カセンゾ!」

ここでおもむろに、大佐はXM29を真上に放り投げた。


魔王軍ゾンビ兵02「ココガ、貴様ノ死場所ニナ___ 」

2体目のゾンビ兵が言い終える前に、大佐の背中に掛けていたXM109の25ミリライフル弾が頭を吹き飛ばした。頭をなくしたゾンビ兵の体がその場に崩れ落ちる。弾丸は石レンガの壁をたやすく貫通し、大きな風穴がポッカリと空いた。


魔王軍ゾンビ兵01「ナッッ、コイツ!!? オノレ・・・!!」

激昂したゾンビ兵が、石のスコップを振り上げ殴り掛かる。


大佐はXM109を肩にかけ直した。それを隙と勘違いしたゾンビ兵は、石スコップを振り下ろした・・・その時___


真上に投げたXM29が、大佐の元に落ちてきた。それを掴むと、2つの銃口をゾンビ兵のこめかみに定めた。


ダダアアァァッッン!!


魔王軍ゾンビ兵01「ア・・・・、アア・・・・・・ッ!!?」

額に2つの風穴の空いたゾンビ兵は、そのまま動かなくなった。


辺りの敵を倒した大佐は、再び椛兵長の援軍へと向かう。


大佐はその後も迫り来る矢の雨を紙一重で回避しながら、敵を次々と撃ち抜いていく。フックショットで2階へと上がった時、ある違和感を感じた。


「____なんだ、誰かに見られている・・・?」













同じく、東側通路。そこは現在、大乱闘の舞台と化していた。


翔「おいどうしたっ!もっと来いよ!!」

拳を握り、CQCの構えをする翔の周りには打ちのめされた魔王軍兵士が転がっていた。


交戦から8分、すでに15体も倒されているこの状況に敵も警戒した。


翔「来ないのか?ならこっちから行くぞ!」

拳を両脇に構え、あっという間に敵の間合いに詰め寄った。胴に3発、叩き込み蹴り技をおまけとばかりに一蹴りしまた1人吹き飛ばした。


魔王軍ゾンビ兵(コノママジャ、勝テナイ・・・。オイ、ヤルゾ!)


魔王軍ゾンビ兵(オオ、分カッタ!)魔王軍ゾンビ兵(殺ッテヤル!)魔王軍ゾンビ兵(フッフッフッ、思イ上ガルナヨ人間!!)


2体の魔王軍ゾンビ兵士が翔へと突撃する。翔も応戦の体勢に入りかけた、その時だった___!


魔王軍兵「コノ瞬間ヲ待ッテイタ!」


背後にいた2体のゾンビの兵士が、翔の腕をがっしりと拘束ホールドする。当然、この程度の拘束くらい簡単に振りほどける翔だったが、その僅かにあった油断には気がついていなかった。


ガブッ!!!!


両腕を拘束していたゾンビ兵が翔の腕に噛み付いたのだ。


翔「痛えええええええっ!!?」


すざましい力で噛んでくるゾンビ兵。そこに、前方のゾンビ2体も襲いかかる。ガブッ!!ガブッ!!、と肩と足に噛み付くゾンビ兵達傷口からはゾンビウイルスが次々と体に流れ込んでいく。


魔王軍ゾンビ兵「フハハハ、貴様モゾンビ二ナッテシマエ!!」魔王軍ゾンビ兵「コレデオ終イダッ!!」


翔「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」








翔「残念、俺もうゾンビみたいなもんなんだよ」

翔は、にやりと笑みを浮かべる。









魔王軍ゾンビ兵「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・エ?・・・・・・・・・・・・・・・」」」」


翔「さて、遊ぶのも飽きたしそろそろけりつけるか・・・」

翔は、全身にパワーを収束させた。そして__________


翔「世地獣拳よじじゅうけん[十王無神]!!!」

辺りにとてつもない衝撃波が吹き上げ、まとわり付いていた兵士と外壁もろとも爆裂した。


魔王軍ゾンビ兵「「「「ギャアアーーーーーーーーーーッ!!!?」」」」


4体のゾンビ兵は遥か彼方に吹き飛ばされ、そのうち見えなくなった。


翔「ふう、終わった終わった。さて、他の援護にでも・・・・・・・・」




ピシッ!    ピキキッ・・・・!    バキッ・・・・・・・・・・・・・!!


翔「・・・・・? 何のお・・・・・うわああアアア!!?」

先程の大技に通路が耐えきれずあっという間に崩れ去った。


と、ここで援軍に来たと思われるスケルトンの集団が現場に到着した。この状況にを見た瞬間、敵の生存は皆無であろうと考えた、とその時__________


翔「・・・・・・・・・・・・・・勝手に殺すな」


ドカーーーーーー――ン!!!瓦礫の山が突然吹き飛び、中から無傷の翔が出てきた。


魔王軍スケルトン兵「・・・・・・・!?」


翔「さてと、次の相手になってもらおうか?お前ら」

すぐさま、第2ラウンドの鐘代わりの矢を放つ音が辺りに響き渡る。
















一方その頃、西側に降下したダブルはパラシュートを切り離し終わったところだった。


ダブル「さてと・・・、ここは何処だ?」


彼が降り立った場所は、周囲を高い壁に囲まれた屋根なしの円柱スタジアムのような場所だった。


周りの外壁は、他の場所よりも厚い仕様になっており、何より出口らしきものが見当たらない。唯一の通路らしき場所は頑丈そうな鉄の柵で塞がれている。


と、その時辺りに魔王軍兵士の声が響き渡った。


魔王軍猛獣使い「ふはははっ、ここに落ちてくるとはなんとも運の無い奴だ!!」


ダブル「・・・? どういう意味だ」

見上げると、壁の上に鞭を持ったゴブリンの兵士が立っていた。


魔王軍猛獣使い「ここは愚か者を処刑する場所だ。この俺様の支配下の猛獣共の餌になるがいいっ!!」

そう言いながら、猛獣使いは指を鳴らした。瞬間、鉄柵の仕掛けが起動し、ガシャガシャと大きな音を立てながら通路が開いた。


そして、その中から巨大な何かが近づいてくる。


ぐおおおおおっ!! ぐるううううおおおおおおおおおおっっっ!!!


暗い通路の中から現れたのは、ゆうに4メートルはある巨体の大熊っだった。

目は血走り、目の前にいる獲物を鋭く睨み付けている。体にはいくつもの傷跡があり、その口には人間の頭蓋骨を咥えていた。


魔王軍猛獣使い「こいつはこれまで、40人もの愚か者を葬った一番の獣よ。貴様なんぞ、こいつの爪で一瞬でひき肉にしてしまうは!!」

猛獣使いは下品に高笑いし、鞭を打ち鳴らした。


魔王軍猛獣使い「さあ、あいつをぶっ殺せ!!!」


ぐおおおおおおおおおっ!!!


大熊は口に咥えていた頭蓋骨を噛み砕き、ダブルへと襲いかかる。ライフル弾と同サイズの爪が振り下ろされた。


そこには、ダブルの死体は無く、地面にえぐれた爪痕があるだけであった。


ぐるうあああああっ!!ぐるるるうううああああああああああああっっっ!!!


獲物が姿を消し、怒り狂う大熊。と、その右肩を何かが当たる感触を感じた。それを目で追った瞬間、逆側の左肩から血しぶきが吹き上がる。


ダブル「なかなかのパワーだな。だが、俺の地元の熊には到底及ばないな!」

ダブルは、大熊の背後に着地しながら剣に付いた血を振り払う。


魔王軍猛獣使い「き、貴様何者だ!? なんだ今の身のこなしは・・・!」

猛獣使いは、愕然とした表情を浮かべる。


大熊の爪を回避した刹那、振り下ろした腕の死角に潜り込みだ。肩に足をかけ飛び上がる瞬間、斬り裂いたのだ。これまで捕らえた奴らに、こんな動きをする者は1人としていなかった。


ダブルは、不敵に笑みを浮かべる。

ダブル「俺は今まで、こんな猛獣けものを狩る仕事をして生きてきたんだぜ。それと、これだけのワケないだろ? 」

そう言ったその時、大熊の足元に魔法陣が現れた。そして、オレンジ色の雷が大熊を拘束した。


ぐがああああああああああっっ!?


ダブル「[拘束術 愚か者へのフーリッシュ・チェーン]。ここに来てから習得した魔法だ、なかなか使える魔法だろ?」


魔王軍猛獣使い「お、おのれ・・・っ!こうなれば、殺れ、奴を嬲り殺しにしろ!!」

猛獣使いが叫ぶと、塀の上に次々と魔王軍兵士が群がってきた。ざっと数えて、約25体程。だが、これまでのゾンビ兵とは違い、防具を身に着けておらずボロボロ状態のやつばかりだ。


ダブル「なんだ、こいつら?」

片手剣と盾を構えながら、怪訝な顔をするダブル。


魔王軍猛獣使い「ふはははっ! こいつらは、これまで捕らえた捕虜共の成れの果ての姿よ。{あの男}がもたらしたウイルスによって改造された、人造ゾンビ兵だ!!」


ダブル「{あの男}だと? おい、誰のことを言っているんだ!」

ダブルは、猛獣使いを睨みつける。


魔王軍猛獣使い「貴様に教える義理はない。それに、もう気にする必要もないは。貴様はここで死ぬのだからなッ!!!」

猛獣使いは、人造ゾンビ兵に攻撃指示をした。瞬間、塀に群がる人造ゾンビものどもダブルへ一斉に襲いかかる。ある者は爪を、ある者は牙を、ある者はその巨体でダブルを仕留めようと一斉に飛びかかった。


その時であった___



晃毅「冥府の裁きを[地獄からの運命インフェルノ・ロットゥー]!!」

瞬間、頭上から魔弾の弾幕が25体の人造ゾンビ兵を正確に撃ち抜いた。


魔王軍猛獣使い「な、何っ!? 上だと!!?」

猛獣使いが空を見上げると、{エンド・ウィンド}で空中に浮かぶ晃毅の姿がそこにはあった。


晃毅「大丈夫かダブル、向こうは終わったから一番近いお前の所に来たが・・・やっぱその必要はなかったか?」

晃毅はダブルの隣に着陸すると、塀の上に立つ猛獣使いを一瞥する。


ダブル「ああ、あの程度の奴らなら問題は無かったが。それより、もう正門の敵を片付けたのか」


2人はさも平然と会話しているが、猛獣使いにそれに構う余裕はなかった。


魔王軍猛獣使い(くそっ! 隠し玉の人造ゾンビ兵も赤子の手をひねるよりも簡単に処理しやがって・・・っっ!!どうする、このままだと、確実に殺される!!!)

と、その時、2人の後ろで動き出す影があった。


ぐおおおおおおおおおっ!!!


ダブルの[愚か者へのフーリッシュ・チェーン]に縛られていた大熊が開放されたのだ。


魔王軍猛獣使い「おおっ! やっと動けるようになったか。さあ、こいつらをさっさと始末しろ!!!」

当初の本命であった大熊の復活に、弱腰になりかけていた戦意を大きく回復した猛獣使い。手に持っていた鞭を大きく打ち鳴らし、再度大熊に攻撃指示をした。


ぐるうがああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!

大熊は、2人へとものすごい勢いで突進していく。猛獣使いは勝利を確信した・・・・・・・・





その直後_____









毅晃「おいおい熊よ、ちょっと落ち着けよ・・・」

たった一言、それだけであった。


くうううううううん・・・・・・・・・・・。

晃毅が大熊を一睨みした瞬間、大熊は突然急ブレーキをかけた。そして、怯えるように晃毅を見つめると、その地面に巨体を仰向けにしお腹を見せた。これは、晃毅への恐怖と降伏を表すポーズである。


その様子を、ダブルは興味深そう見ていた。

ダブル「それもエンダードラゴンの力か? 全く、お前は敵にしたくないな」


晃毅「さて・・・、こいつもかたが着いたな。残りは、アイツだけか・・・」


その瞬間、猛獣使いの脳裏には過去の記憶が走馬灯のように駆け巡った。


ダブル「さっき、俺をひき肉にするとかほざいていたっけなお前」


晃毅「さてと、この状況。もうわかっているだろうが、最後に言っておいてやるか・・・」


魔王軍猛獣使い「ひっっっ!!!!?」

猛獣使いの表情は、絶望に染まる。


ダブル 毅晃「「お前の罪を数えながら、あの世で反省しろ」」


魔王軍猛獣使い「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!________」


最後には、辺りに断末魔のみが響き渡った。












魔王軍基地南側。現在ここは、荒くれ共の巣窟になっていた。


ここにいるのはゾンビ兵でもスケルトン兵でもなく、ならず者で構成された傭兵だった。


性格や気性が特に荒く、無差別殺人を繰り返した兵士の集まるこの場所に椛兵長はただ1人降り立った。


傭兵?「ふひひひ、女だ。女が落ちてきやがったぜ」傭兵?「こんな場所に来るなんて、こいつは本当に運がないな。ぐふふふふ・・・」傭兵?「さあて、どうやって遊んでやるとするか!」______


総勢約50体、全員が椛兵長を見下ろす。


と、その内の1人の男が椛兵長へと近づいた。ガリガリに痩せているが、貧相といった印象は浮かばない、野犬のような雰囲気の男だった。


痩せた傭兵?「へっへっへ、お嬢ちゃんよ。運がないなあ、ほんとに。こんなとこに落っこちてきちまうなんてよ」

椛兵長をあまり警戒していないのか、棍棒を肩に担ぎながらさらに近づいていく。そして、その肩に触れようとした、その時_____


椛兵長「元々、ここにいっぱいいるのはわかってたから。だって、思う存分・・・狩れるんだもん♪」

にっこりと、笑みを浮かべる椛兵長。


痩せた傭兵?「は・・・・・?今、なんて言っ______」


スパンッ!と、何かが切り落とされる音がした。


周りの群がっている傭兵達、その表情が一斉に凍りつく。その状況に、痩せた傭兵は理解できなかった___


と、不意に自身の腕に違和感を覚えた。そして_____


痩せた傭兵「ん・・・・?  ・・・・・・。うぎゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!?!!!??」


ごとりっ、と、両の手が地面に落ちる。その断面はとても滑らかな切り口で、再び手をくっつければ元に戻るかと思うほどだった。


___しかし、それは叶わない。なぜなら、切断された両手が煙のように消えてなくなってしまったからだ。


椛兵長「私、実は死神なんです。久しぶりに悪人じょうものの魂が狩れそうで、しかもこんなにいっぱいいるのは幸運ですね♪」

椛兵長は満面の笑みを、痩せた傭兵に向けた。その手には、自身の背丈ほどはある大鎌を手にしていた。形状はシンプルだが、大鎌から発せられる禍々しいオーラに傭兵達は背筋に冷たいものが流れるのを感じた。

___だが、それよりも傭兵たちの顔を凍りつかせたのは・・・・、


その表情がサディストの顔の浮かべる顔に変わっていることに、傭兵達は戦慄を覚えた。


そして、椛兵長は言った。

椛兵長「ここにいる全員、みんな死刑ね♪」



___そして、狩りは始まった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




ザンッッ!!うぎゃああああああああああ! ザシュッ!!あ、あああああっああアアァァァァァ!!!?ザジッズババッ!!!ぎええええええっっっ!!!シュンシュンッッ!!!!ズバーーーッッ!!ひっ、ひぎゃああああっっ!???!バラバラッぐちゃあ・・・ズババッババババア!!あ、あぎゃああああああああああああああああ!?!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ひええええっっ??!!あ、あああ・・・・スパンッスパンッ!!ズバシャーーーー―ーッッッ!!!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ________



























___数分後、50人は居たであろう傭兵達は醜い肉塊に変わり果てていた。


その中心で、汚れた魂を回収している椛兵長の顔は実に輝いていた。ツヤツヤとした肌で、次々と魂を回収していく。


椛兵長「ふふふ、今日はたくさん回収できたなあ。紫司令官に褒めてもらえる♪」

紫司令官とは、彼女の所属しているソレン東方軍の司令官のことだ。この世界とは別の幻想郷のであるらしく、現在は{DXD防衛軍}と同盟を締結している。


と、不意に椛兵長は辺りに違和感を覚え、辺りを見渡した。


辺りには戦闘で破壊された基地の残骸や、傭兵達の成れの果ての姿があるばかり____


椛兵長「・・・? あれ、なんで残ってるの!?」

死神の鎌で狩り獲られた者の肉体は、その体から魂を抜かれ存在を維持出来ず塵ののように消えて無くなるはず。それが未だあるということは、肉塊それらはまだ死んでいないということになる。


椛兵長がそのことに気がついた・・・、その刹那の出来事だった____!


散らばっていた肉片が、椛兵長に一斉に襲いかかった!!

















魔王軍基地から1キロほど離れた場所。そこの草ブロックが突如崩れ落ち、大きな空洞が空いた。


そしてその中から、5人組の男達が出てきた。


ゲリラ所属研究員所長「クソッ! まさかこうもたやすく侵入を許すとは・・・」

憤慨する所長。


ゲリラ所属研究員「しかし、これは良いデータが取れるでしょう」


ゲリラ所属研究員「あの{DXD防衛軍}、さぞかし驚くでしょうね・・・。クククッ、あの施設のあと30分もすれば___」

不気味な笑みを浮かべる研究員。手元のタブレットを見ながら、各戦闘のデータを確認する。


彼らは魔王軍と手を組んだゲリラ達だ。魔王軍拠点このしせつで人間を使ったある実験をしていたのだが、先程の襲撃を察して秘密通路で脱出したのだった。


ゲリラ戦闘員「おい、そろそろいくぞ! モタモタするなっ!!」


ゲリラ戦闘員「襲撃してきた連中が気づく前に、こんな所さっさとおさらばだするんだからな」

戦闘員の2人がイライラした様子で急かしていた・・・、その時である___


エメラルド「ふうん。なんだか、変わった場所から出てきたな。お前達・・・」


研究員・戦闘員「・・・・・・・・・・っ!!?」


突然、どこからか声が聞こえたと思えば、いつの間にか目の前にドクロの顔をした男が立っていた。


エメラルド「そういえば、さっきあと30分がどうとか言ってたな。いったい何のことだ?」

首をかしげながら、質問するエメラルド。


ゲリラ所属研究員「・・・!? い、いったい何のことだ・・・?」


ゲリラ戦闘員「貴様、まさかDXD防衛軍の兵士か!!」


ゲリラ戦闘員「見られたからには、生きて帰すわけにはいかんぞ!」

戦闘員2人はそれぞれアサルトライフルの銃口をエメラルドに向ける。だが、エメラルドはさほど気にする素振りも見せず話を続けた。


エメラルド「まあ、あんた達が何者なんかは俺自身どうでもいいことだ。ただ、ちょっと確かめておきたいことがあってな」


エメラルドは__ふう、とため息をつきながら辺りを見渡す。まるで、目の前にいる彼らは眼中にないといった様子だった。


ゲリラ所属研究員所長「___なら、我々は失礼させてもらおうか?」

所長はエメラルドに攻撃の意志がないと思い、その場を去ろうとした___


エメラルド「誰が逃がしてやるなんて言ったっけ? 俺はそんなこと一言も言ってないんだが」

一言だった。その一言で場の空気は一変した___


ゲリラ戦闘員「死ねええええっ!!!」


ゲリラ戦闘員「くたばれえええっ!!!」


ダダダダダダッダダダダダッダダダッッッ!!!!


唸りを上げるアサルトライフルの銃声。オークの木が、生い茂る草が、次々と撃ち抜かれバラバラになる。

そして、1マガジン打ち尽くしたあとに残っているのは・・・・・


蜂の巣のようにえぐれた地面だけだった__________


ゲリラ戦闘員「・・・!!? い、いないだとっ!?いったいどk_____」

ガブッッ! ドサ・・・・・、と戦闘員が言い終える前にそんな音が聞こえた。


所長は、恐る恐る後ろを振り返った。そこにあったのは___ 息絶えた者達と、その中心で剣を肩に担ぐエメラルドの姿が目に焼き付いた。


ゲリラ所属研究員所長「あ、ああ・・・・・?」

所長には何が起きたか、理解できなかった。自分が背を向けたのはたかだか30秒程度、その間に4人も殺害することなどできようもない・・・。出来るはずがないっ!!?


そう思わずにはいられなかった。それに、エメラルドの持つ剣には一滴も血がついていないのはおかしい。いったい、どんな細工トリックと使ったというのだろうか___?


エメラルド「ま、あんたが考えてもわかるはずもないよ。その辺にしておきな・・・」

エメラルドは閉じていた目を開いた。と、その瞳が蒼く光っているのに気がつい________









ガブッ_______!

意識が無くなる寸前、目の前に{何か}がいたのだけわかった________





















ガブッガツガツガブッッ・・・。

獣の頭蓋骨が食事あとしまつをしている間、エメラルドは近くに落ちていた研究員の遺品のタブレットを見ていた。


エメラルド「ふうん、あいつらこんなことをする気か・・・」

その辺にタブレットを放り捨てるエメラルド。碧い光を宿した目で辺りを再び見渡したあと、研究員が出てきた穴へと歩き出した。


・・・と、ふとエメラルドは歩みを止めると、なぜか後ろを振り返り____


エメラルド「そこで見てるやつ、このことはみんなには言うなよ」









____________バキャッ‼________________________________________________________________


次回予告(訂正版)

順調に敵拠点を攻略していくDXD防衛軍。しかし、それを影から見つめる者とは・・・。

椛兵長に迫る驚異。ボスと田中にも敵の魔の手が忍び寄る。

次回に続く・・・・・・・・・・。

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