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路線上のアリア  作者: サ骨高島平
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プロローグ

- プロローグ -


やってしまった。


ある朝、いつものように目を覚ますと、私は土俵の上にいた。

つい三時間前に回線を切ってパソコンの電源を落とし、部屋の電気を消してベッドに入ったはずだ。

ベッドの上、もしくは下で目をさますのが日常のはずだ。よってこれは日常ではないのだろう。

しかしそんなことはすぐどうでもいい事になってしまった。

力士たちがものすごい剣幕で私を睨んでいる。

あろうことか、私は土俵の上に立っているにも関わらず廻しをつけていなかったのだ。

これでは晩のちゃんこ鍋の具にされてしまっても仕方がない。

私は慌てて土俵から降り、行司に深々とお辞儀をして国技館を去ろうとした。


しかしそれは許されることではなかった。

力士たちは未だものすごい剣幕で私を睨んでいる。

国技館から生きて出ることは不可能に近い。


私はこの暴虐無道な力士たちを倒さねばならぬと決意した。

まずパジャマを脱ぎ、廻しを締めねばならない。

しかしここで問題が生じる。廻しを締めるには私はあまりにも棒人間であった。

加えて付き人もいない。廻しを締める方法すらわからない。窮した。

普段であればグーグル先生が解決してくれる問題であるがここは国技館だ。

自分の頭で切り抜けねばならない。

賢い私はとっさに行司の懐刀を奪い、喉元に当てた。

そのまま行司の衣装を剥ぎ取り、それを着ることにしたのだ。

これで私は行司だ。土俵の上を支配する力を得る。


否、それ以上の力を。

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