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風END

今回は風が一刀を見送った場合の話。


ザッザッザッ


一刀は一人、森の中を歩いていた。

そんな彼の後ろ、宴の会場は闘いを終えた三国の皆が共に飲み、共に歌い、共に賑わっていた。


「……みんな怒るだろうな、勝手に一人で消えたりしたら。…でもやっぱり面と向かって別れは言えない、辛すぎる……だから、ゴメンなみんな……」


ザッザッザッ






サラサラサラ……


歩き続けた一刀は小川のほとりに出た。


「…これでいいんだよな。華琳を中心に天下は統一され、民の皆もきっと平和に暮らしていける、みんなに笑顔がもどる。きっと俺はこの為に此処に来たんだ、俺の役目は終わった……だから、……これでいい…「いいわけないじゃないですか」!!」


サク、サク、サク、


その声に驚き、振り向いた一刀の前に一人の少女が木陰から出て来た。


「…風……」

「どうしてそんな事を言うんですか?お兄さんが此処に来たのは本当にその為だけなんですか?華琳様や風達に出会ったのはついでだったんですか?…いくら平和になったからって……」


「このままお兄さんが居なくなって…グスッ……それで…それで良かったと…ううっ…喜ぶ人が…笑う人がいると……」


「グスッグスッ…本気で思っているんですか?……ふ、風は…グスッ…風は嫌です。…グスッ…風はお兄さんがいなければ嫌なんです!!」


風は一刀に駆け寄ってしがみ付いた、絶対に離さないと…何処にも行かさないと…

たとえ運命が相手であろうとも渡さないというかの様に……


「ううう…うええ……グス、グス、…うえええええ~~」

「風……俺は…」

「ダメです!ダメです!…ううう、…嫌です~~~!!」


風は一刀にしがみついたままイヤイヤと首を振り続けた。


「風、俺だって…俺だって…」


一刀も風を抱きしめて頭を優しく撫でた。


「お兄さんは無責任です、お兄さんは…お兄さんは…うええ~、うえええ~~ん。…お、お兄さんはもうすぐお父さんになるんですよ…それなのに、風を…。風達を置いて行くんですか?」

「そうか、俺も父親か……。可愛い子供だろうな」

「当然じゃないですか…風達の、風とお兄さんの子供ですよ、可愛くないわけがないですよ……グス」

「そう…だよな…男の子かな?…女の子…かな?」

「きっと女の子ですよ、…お、お兄さんは…ううっ…女の子が大好きですから…」

「はははっ…さ…すがに自分の子供に手は…ださな…いよ…」


風の腕の中で一刀はゆっくりと淡い光に包まれていく。


「お城の庭で…グス、風が赤ちゃんを抱っこして…」

「ああ…」

「その風を…グス、お兄さんが抱っこして…」

「…ああ……」


一刀は目をつむりながらその光景を思い浮かべていると、ゆっくり、ゆっくりとその姿が薄れていく。


「…うう、うええ、そ、そのまま三人でお昼寝して…グス、」

「ああ…いい…な、三…人いっしょで…幸せだ……」


薄れていく一刀の瞳から涙が流れ、その一滴が風の頬に零れ落ちる。


「ううう、うう、うえええ~~~ん」

「…名前…かん…が…えない…とな、幸せな樹で…幸樹さきはどうかな?」

「ふふっ、す…素敵です…きっと、グスッきっとみんなを…樹の枝のように…包み込んで幸せに、幸せな気分にしてくれますよ…グスッ…」

「ああ…きっ…と、きっと…みん…な…を…きっと……き…………


一刀は風の腕の中で光の粒となって消え去り、風の一刀を抱きしめていたはずの手はそのまま自分の腕を掴んでいた。


「うううう~~、うええ~、お、おに、お兄さん~~、う、うええええ~~~…か、ずと……一刀さん~、一刀さ~~ん。ううう、うええええ~~~んっ、うええっ、うわああ~~~~~んっ!嫌です、嫌です、こんなの…一刀さんが居ないなんて…寂しいです、こんなの嫌です~、ううう」


「うわあああ~~~~~~ん!!」


倒れ伏して泣きじゃくる風を離れた木陰から見守る二人がいた。

それは一刀がこの世界に降りた時に初めて出会った三人の内の二人、星と稟だった。



「…行ってやらないのか、稟?」

「私が行って何が出来るというんですか?私に出来る事と言ったらここで見守って一人で泣かせてあげるくらいのものです、それに…」

「それに?」

「あの人が消えて悲しいのは風だけではないんですよ?」


そう言って稟は寂しげに微笑んだ。


「!! す、すまん、考えが足りなかった」

「いえ、いいんですよ」

「…なあ稟、もし…もしあの時。一刀殿を一緒に連れて行ったら、結果は変わっていたのだろうか?」

「さあ、どうでしょう?あの人の事ですから結局無理をしてたでしょうね」


稟はそう言うが星は考えてみた、もし一緒に旅をしていたら、もし一緒に桃香と出会っていたら。

もし桃香の下で共に闘っていたらと…別の形の平和がきっと其処にあったのではないかと。


(一刀殿、あなたは本当にひどい人だ。風達だけじゃなく私達まで置いて行くなんて)


そう言って稟は自分のお腹をなでた。


「うわあああ~~~~ん!」


空には彼女達を見守るように月が輝いていた。









~そして時は流れて~




キャッキャッキャッ


バシャバシャバシャッ



夏の日差しの中、風が優しげに見守る中、三人の子供達が小川の中で水浴びをして遊んでいる。


その子供達は一刀が残して行った子供でもある。


「おかあさん~~♪」


風の娘、幸樹さき


「ふうかかさま~~♪」


桂花との娘、鞘花さやか


「ふうかあさま~~♪」


稟との娘、白葉はくは


「はいはい~~、風はここですよ~~♪」


今日は城の近くの小川で風と稟ちゃん、そして桂花ちゃんの三人の子供が水遊びを楽しんでいる。

結局あの後、華琳様を始めとした武官、文官全員の妊娠が発覚した。


お兄さんが居なくなって皆が悲しみに暮れたが生まれてくる子供達の為にも早く立ち直らなければならなかった。


幸いにも生まれて来た子供達は皆可愛くて悲しみが癒えるのにあまり時間はかからなかった。


「えいっえーいっ♪」


バシャッバシャッ

と幸樹が鞘花に水をかける。


「きゃあ♪このお、やったな~~、えいっ!」


バシャッバシャッ

と鞘花はお返しにと反撃するが、勢い余って白葉にかかってしまう。


「ぷわあっ!なんでわたしにかけるんですか、えいっ!」


バシャッバシャッ


「きゃあっ!やりましたね~~、おかえしです♪」


バシャッバシャッ


子供達はみんな笑顔で遊んでいる、幸せそうに…。


その姿を眺めながら微笑んでいる風の後ろから足音が聞こえて来る。



サク、サク、サク、


これもみんな、お兄さんが居たから、


サク、サク、サク、


お兄さんが頑張ったから、


サク、サク、サク、


だから風達だけじゃなく、お兄さんも幸せになる権利があったんです、


サク、サク、サク、


だから、だから、だから。


サク、サク、サク、


「風は信じていました、待っていました、この日が来るのを」


「だからだな、信じていてくれたから…だから俺は…」


「帰って来られたんだ!」


「はい、お帰りなさいお兄さん!」


「ただいま!風」


そして風は勢いよく一刀の胸の中に飛び込んで行く。


その光景を見ている三人の子供達。


「ん、あれえ?ねえ、さきちゃん。あのひとだあれ?」


「おかあさんをだいてる、だれだろう?」


「あっ!! あのきらきらしたしろいふく。も、もしかしてとうさま?」


「「ええ~~~っ!?」」


「はい、そうですよ~!みんなのお父さんですよ~~♪」


「えっ!? …お、お父さんって、三人も子供が居るのか?」


お父さんと呼ばれた一刀は目の前に居る三人が子供と聞いて驚くが…


「何を言ってるんですか、そんな訳無いでしょう」


「だ、だよな…」


「勿論、三人どころか全員子供を産んでますよ、ちなみに華琳様は双子でした♪」


「は、はは、はははは…」


その現実に乾いた笑いを浮かべる。


そして一刀に向かって……


タタタタタタタッ


「ととさま~~!」


鞘花が駆け寄って来る。


「おとうさ~~ん!」


幸樹が駆け寄って来る。


「とうさま~~!」


白葉が駆け寄って来る。


そして、胸の中に飛び込んで来る子供達。

城に帰ればまだ、沢山の子供達が居るのだろう。


ガバアッ


「「「うええ~~~~ん!」」」


抱きついて来た子供達を優しく抱きしめ、一人ずつ頭を撫でてやる。


「今までゴメンな、これからはお父さんも一緒だからな」


「さあ、お城に帰りましょう、『子供達』が待ってますよ」


「ああ帰ろう、俺の、俺の帰るべき場所に!」




そして始まる新しい物語。



~終劇~


(`・ω・)子供達の真名の付け方が難しい。

桂花ENDでは子供は鞘花一人でしたが、この話では全員妊娠していたと言う設定です。


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