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無印風・桂花END

(`・ω・)今回は無印風のラストシーンで行きます。


淡い光を放ち始める鏡。

その光はこの物語の突端に放たれた光。

白色の光に包まれながら、俺はこの世界との別離を悟る。


自分という存在を形作る想念。

その想念が薄れていく事を感じながら、それでも俺は心の中に愛しき人を思い描く。


桂花――――――。

出会った時から喧嘩腰で怒鳴ってばかりいた少女。

それでも時には助言をしてくれたり、心配してくれた俺には大事な女の子。


そんな彼女との別離わかれがもう、目の前にある。


俺の体、俺の意識、俺の存在が薄れて行く。

その事実に恐れている時、俺の脳裏を占めていたのはただ一人の愛しき少女。


このまま消えるなんて冗談じゃない!

離れたくない。

彼女と別れるなんて、そんなのゴメンだ!!


消えていく心を必死に押し止めながら、俺はこの手を差し伸べる。

駆けて来る。

両手を差し伸べ俺の元に駆けて来る愛しき存在に向かって―――――。


「待ちなさいよ、この駄目男っ!」



薄れる意識を覚醒させる何時もの罵倒。

だがその罵倒は俺の心を愛しさで熱くさせる。


「けい……ふぁ……っ!」


俺をこの世界から削除しようとする真っ黒な白い光。

体を包むその光をかき分ける様に俺は彼女に向かって手を差し伸べる、この手を掴めと。


「けい…ふぁっ……」


薄れ行く声――――――。

もはや半透明になっている自分の体には恐怖は感じない。

何故ならばその恐怖を上回る感情があるから。


目の前の少女がただ愛しい。

その想いだけが俺を消し去ろうとする無常な力に打ち勝っている。


消えてたまるか!

離れてたまるか!

別れてたまるか!


だがそんな想いを嘲笑うかの様に俺の脳裏から記憶が削り取られて行く。

まるで時が逆戻りして行くかの様に。


嫌だ!

桂花の記憶が消え去るなんて絶対に嫌だ!


例え俺の体が、存在自体が無かった物になるとしてもこの想いだけは、桂花を愛したという想いを、自惚れだとしても桂花が俺に向けてくれた想いは何物にも耐え難い宝なのだから……!


たとえそれが物語の一コマだとしても、ノベライズの一ページだったとしても俺のこの気持ちは、感情は、想いは、紛れも無い本物なのだから。


「け…いふぁっ!」


何者にも勝るその想いを込めて、愛しい少女の名を全力で叫んだ。



「待ちなさいよ、この駄目男っ!」


何がどうなっているのか良く解らない。

ただ、消えて行くあの男の姿が私の心をどうしようもなく掻き毟り、走り続ける私の足があの男の下へと運んで行く。


頭の中に浮かんで来るのは今までの思い出。

アイツを詰り、殴り、蹴り飛ばし、そして再び詰る。

そんな中で生まれたささやかな感情。

ありえないと思っていた愛するという想い。


「何処に、何処に行くつもりよこの馬鹿っ!」


「け……い…ふぁ…」


「あんたにはまだ仕事が残ってるのよ、街の拡張、警備隊の訓練、まだ、まだ…山の様に……私に全部押し付けて……、自分だけ逃げるつもりっ!」


消えて行く―――――。

アイツの姿が薄れて行く度に私に心からもわだかまりが消えて行く。


気付いていた。

自分の想いに、アイツへの愛しい想いに。

ただ意地を張っていただけ。


私の愛する人は華琳様ただ一人。

男なんで存在する価値も無い醜い獣。

アイツもそんな獣の内の一匹にすぎない。

そう言い聞かせて嘘を吐き続けていた。


そう、馬鹿なのは私自身だ。

今になって、最後のこの時にもなって未だに素直になろうとしない私自身。


そんな私にアイツは……、

消えて行こうとしている彼はそんな私に手を差し伸べてくれている。


愛しさが込み上げて来る―――――。


もう、意地を張る必要なんて何処にも無い。


「嫌だぁっ!…居なく……、居なくなっちゃ嫌だ!……一刀ぉっ!!」


もう抑える必要の無い想いと共に私は必死で彼に両手を差し伸べる。





「そう思い通りになると思うなよっ!」


(桂花と一刀に襲い掛かろうとする左慈の前に絶を振りかざした華琳が立ち塞がる)


「くっ!人形の分際でこの期に及んでまだ邪魔をする気か!?」


(左慈の行く手を遮る華琳、春蘭、秋蘭)


「当然でしょ」

「仲間を護るのに何の理由が必要か?」

「北郷と桂花を護るというのが些か不服だがこれも華琳様の為ならば」


「ふっ、滑稽だな。自分の物だと豪語していた二人が二人ともお前を選ばなかったというのに…、そんな奴等の為に闘おうというのか?」


「当然だと言った筈よ。例え私を選ばなかったとしても私が愛した男、私が愛した軍師。そんな二人が手を取り合おうとしてるのよ、ならばそれを護らずして何が君主か!何が覇王か!何が曹孟徳かっ!!」

「貴様は我等を人形だと言ったな?ならば貴様に我等の様な想いはあるか?気概はあるか?無いであろう。ならば貴様こそが人形よ!」

「この先、一歩たりとも進ませはせんぞ!言っておくが華琳様の御命令だからだぞ、決してあの二人の為では無いからな!……本当だぞっ!」

「ああ、意地を張る姉者は可愛いなぁ」


「くくくく、人形。この俺が人形か……、いいだろう!ならばその人形の最後の意地、見せてくれるっ!」


「逝くわよ!春蘭、秋蘭」

「「御意っ!!」」

「「「我等が力、今此処に魅せんっ!!」」」



後ろから聞こえるのは二人が永遠の忠誠を誓った愛すべき君主。

そして二人と共に主を支え続けた仲間達。

彼女達は二人を護ろうと闘っている。

だからこそ少女は振り向かずに走り続ける。

彼女達の想いに答える為に。


「け…い……ふぁ…」


体の半分以上が消えている少年も少女に手を伸ばす。

失われている体を取り戻すかの様に。


二人の間には永遠ともいえる距離があるようにも見えるが二人のその手は磁石のS極とN極の様に互いに引かれ合い、その距離を0へと近付けて行く。


「桂花ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「一刀ーーーーーーーーーーーっ!!」


そして遂に体と心の距離は0となり、離れ離れになろうとしていた二人の絆は……


強く、硬く結ばれた。






            -◇◆◇-



「一刀…、一刀ってば!」

「ん……、あれ、桂花…?」

「あれ、じゃ無いわよ。まったく、心配させて」

「所で此処は何処なんだ?」

「私に聞かれても分かる訳無いでしょ。こんな景色、見た事なんて無いんだから」

「見た事が無い?」


そう言われて辺りを見回して見れば俺にとっては懐かしき景色だった。


「これって……聖フランチェスカじゃないかっ!!」

「せい…ふらん、ちぇすか?何それ?」

「此処は俺が元いた世界、俺が通っていた学校だよ」

「学校って、一刀が政策に出していたあの大きな私塾の事?」

「ああ、此処が聖フランチェスカって事は…、帰って来たという事なのか……」

「という事は此処は天の世界なのね」

「そういう事になるんだろうが、何なんだこの違和感は?」


見た目は確かに聖フランチェスカに間違いは無い。

だが何かが違う、匂いと言うか、気配と言うか。


「違和感って、此処は一刀の居た世界じゃないの?」

「旨く言えないんだけど、何かが違う気がするんだ」

「そう言えばあの妖怪みたいな化け物、新しい外史を作れるみたいな事を言ってた気が…」

《どわ~~~~~~~れが、一度見たら毎晩毎晩悪夢にうなされそうな怪物ですって~~~~っ!?》

「きゃあああああっ!」

「うわあああああっ!」


何処からとも無く野太いアナゴさんボイスが聞こえて来た様な気がしたが辺りを見回しても誰も居ない。


「き、気のせいよね…?」

「ああ、そ、そういう事にしとこう。その方が幸せだ」

「それにしても……。そうか、そういう事か!」

「何か解ったの?」

「ああ、此処は俺が居た元の世界じゃ無い。俺が…いや、俺達が歩む事になる新しい外史世界だ!」

「新しい、外史世界?」

「そう、俺と桂花が共に歩んで行く世界。幸せになる為に」

「一刀と一緒に…幸せに……。でも此処には華琳様は、皆は居ないのよね」

「大丈夫だ桂花!」

「一刀…」

「貂蝉の言う事を信じよう。俺達が今居るこの世界がある様に華琳達が居る世界がきっとある。あの外史だって続いている筈だ、俺たちがそう信じている限り。例えもう会えなくても俺達の想いがある限り華琳達の物語も続いていく」

「一刀…、そうね私も信じるわ。華琳様の物語を」

「信じよう、そして俺達は俺達の物語を歩んで行こう。俺達二人で何時までも。それが華琳達への手向けになるのだから」


そう、分かたれてしまった道。

もう交わらない物語。

だが、信じあっていれば絆だけは失われない。

この絆がある限り俺達は何時までも曹魏の仲間だ。


だからこそ、笑って生きて行ける。


今までの物語は終端を迎え、そして今からが新生した物語の突端を迎える。


「さあ桂花、歩んで行こう、紡いで行こう。俺達の新しい物語を」

「………うんっ!歩いて行こう、一刀!」


愛しい彼女は差し出したその手を輝く様な笑顔で握って来た。

眩い、太陽の様な笑顔で…………。


~Fin~


(`・ω・)と、言うわけでストックとネタが切れました、新しいネタが生まれたらまた会いましょう。


(・ω・)ノシ<バイバーイ

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