「うおw」が口癖の冷笑系チー牛が異世界転生したら無双系冷笑チー牛主人公になった件w
皆さんは冷笑系と言う言葉をご存知だろうか。
ここ数年でSNSを中心に爆発的に広まった言葉であり、熱く語ったり真剣に活動する人に対して斜に構え、「どうせ無駄」「意識高い系」などと言って馬鹿にするのを冷笑系と呼ばれている。
「うわぁ、もうあと半年しかないのにこんな点数か・・・・・・もっと頑張らねえと」
「うおw。そんなに頑張る必要ある?w」
模試テストの結果を見ながら渋い顔をするクラスメイトのたかしに対し、冷笑を決め込むこの人物こそ冷笑ばかりする高校生の冷 笑太郎だ。
「うおw」が口癖で他人の努力を馬鹿にする冷笑系の権化のようなクズ人間だ。
「調子のんじゃねえよ笑太郎。いいからこれ教えろ」
「うおw。しゃあねえな。どうせお前には理解出来ないだろうけどなw」
「さんきゅー!」
しかし彼のクラスメイトは馬鹿にしてくる笑太郎にも教えを乞い、笑太郎のさらなる追撃にも一切触れず感謝だけを伝えた。
「おいたかし! お前昨日の掃除帰っただろ! 冷が代わりにやってたんだぞ、なんで勝手に帰った!?」
教室の扉が開き、担任であり体育教師である熱血先生が入って来て早々たかしを怒鳴りつける。
「え、いや、それは・・・・・・」
「うおwそんな血管浮かせてまで怒るもんじゃないだろw先生、こいつがなんか無駄に大学受験頑張ってるんで俺が代わったんですよw」
「おお、そうだったのか。友達を応援出来るお前は熱い男だ。冷」
「うおw別に沢山頑張って落ちてくれた方が馬鹿にできるから代わっただけだしw」
「お前はその口癖と人を馬鹿にすることを辞めて、整形でもすれば最高にイケメンだな!」
「教師の発言とは思えねえな・・・・・・」
熱血先生の言葉にたかしが顔を引き攣らせながらそう言った。
「おい笑太郎! 明日の持久走! 今度は絶対負けねえからな!」
教室の後ろのドアが開き、隣のクラスのサッカー部キャプテンは笑太郎に対抗心を燃やしていた。
「うおwどうせ10点なんだしこれ以上頑張る意味ないだろw」
「点数の問題じゃねえ! 全国TOP3常連のキャプテンである俺が、帰宅部のお前に負ける訳にはいかねえんだよ! 明日はぜってー勝つ!」
そう言い残してキャプテンはこの教室を去った。
「うおw」
そして笑太郎は去っていくキャプテンに対して特大冷笑をかました。
「そんじゃそろそろ帰るかーありがとな笑太郎!」
「うおwこれくらいで感謝とかwまじ頭悪いなw」
「さよならー熱血せんせい〜」
「おう! 気をつけて帰れよ!」
そうしてたかしと笑太郎は一緒に学校を出て2人は帰路に着いた。
2人の家は高校から徒歩10分程の距離で、いつも一緒に帰ることが多かった。
「うおwサッカー部が必死に走ってるwあいつもいるじゃんwどうせ勝てないのに頑張っちゃってるw」
「おーほんとだな。やっぱキャプテンだけあって周りより速いな〜」
学校の広いグラウンドを馬鹿の1つ覚えのように一生懸命走るサッカー部の中に、先程のキャプテンの姿も見えた。
「あっ、そういえばお前に貸してたあの本見た? どうだった!?」
たかしが急に笑太郎に貸していた本を思い出し、期待の眼差しで感想を求めた。
たかしは大のラノベ好きで、周りの人と語り合える環境が欲しかったのだ。
「うおw気になりすぎだろw陰キャの妄想って感じwまぁ一応最後まで見たいから続きくれw」
「おっけー!」
笑太郎のお願いをたかしは快く受け入れた。
そして2人の帰り道も残り僅か、目の前の信号を渡ったらすぐそこだ。
2人で仲良く赤信号を待ちながら、なんとなく視線をふらふらとさせていたたかしが唐突に衝撃的なことを言った。
「なぁ、あの車なんか変じゃね? 煽り運転やつ?」
そう言ってたかしが笑太郎の肩を叩き、指を刺した方向には確かにふらふらと蛇行運転をしている車がこちらの交差点に近づいてきていた。
「まじでああいう奴って何がしたいんだろうな〜。あんなのが楽しいのかな? おっ、行くぞ」
青信号になり俺達が渡り出す。
しかし左の奥から迫るその車は全く勢いを落とさない。
「お、おいあれまずくね!?」
それを見たたかしは慌てふためく。
丁度よくその蛇行運転をしている車に近い左側の横断歩道を渡っている女子高生がいたのだ。
しかもその車に気づいていない。
「おいあれ居眠り運転じゃねえか! た、助けにっ!」
「うおw遅いお前が頑張るより俺が行った方がいいだろw」
笑太郎は慌てて走り出したたかしを冷笑しながら颯爽と抜き、車が女子高生とぶつかる寸前に女子高生を押し飛ばした。
ドゴオオオオオン!!! 鈍い音が響いた。
女子高生は助かった。
しかし笑太郎は女子高生と入れ替わるようにその場にいたため衝突を免れずスピードが乗った車に吹き飛ばされた。
原因は居眠り運転だった。
「しょうたろおうう!! おい! しっかりしふぉ! 頼む! 頼む! 生きろ! 死ぬな!」
笑太郎は血で掠れた視界の先でたかしが自分を覗き込み必死に泣いて叫ぶのを聞いた。
「う、おwなんで、そんな必死なんだよw」
「はっ!! きゅ、救急車呼んだから! 死ぬなよ! 意識保て! 寝るな絶対に!」
たかしは笑太郎の意識が途切れないように必死に声をかけ続ける。
現場を見ていた周りの大人達が集まり始まってくるが、既に笑太郎の体がだんだん冷たくなっていった。
「う・・・・・・おw」
最後の最後まで冷笑を絶やさないまま、その日笑太郎は死んだ。
「っ!?」
筈だったのに、目を覚ました。
しかし体は動かない。
声も出ない。
何も出来ない。
そして笑太郎を覗き込むのは2人の人物。
以下にも田舎に住んでそうな男女だった。
不快にならない地毛の金髪に、ヨーロッパ系の美男と美女だった。
笑太郎とは一切無縁な存在のような人種だ。
「あぅあー!」
そしてようやく笑太郎は気付いた。
自身の視界の中に収まる小さな腕に手。
そしていつも通り冷笑をかまそうとすると、赤ちゃんのような声。
そして病院ならせめて両親かたかし、又はクラスメイト辺りがいるはずなのに、ここにいるのは知らない美男美女。
ここまで来れば笑太郎も気付いた。
今自分自身に起きているのは、たかしから借りていたラノベのような展開だと!
「わぁ貴方見て! 笑ったわ! 可愛い!」
「ああ見てるよ! 本当に可愛いな! レイショーは!」
笑太郎につけられた新しい名前はレイショーだった。
笑太郎はその名前を酷く気に入り、この名前をくれた新たな両親である父カールと母ソフィに感謝を示した。
「ほぅら! どうだ!」
そして1つ決めたことがある。
赤ちゃんの間は冷笑が出来ず、笑ってしまう。
しかしそれはレイショーのプライドが許さない。
だから彼は決めたのだ。
冷笑が出来る歳になるまで、一切表情を変えずに暮らしてやると!
そして月日は流れ、レイショーは7歳になった。
「ほらレイショー、早く来い! 向こうで走りに行くぞ!」
「うおw」
「お前はそれ好きだな〜」
レイショーは返事代わりに1発冷笑をかましてカールの後を付いていく。
もう既にレイショーはカールよりも体力が多く走るのも速くなっていたが、それを隠して必死に走る父の後ろを済ました顔で付いていく。
なぜなら冷笑するために!
「おはようございます!」
「はいおはよう。今日も速いね。レイショー君も頑張ってて偉いね!」
「うおwこの程度頑張ってるとかwそんな訳なさすぎるw」
「余計なこと言ってんな! 体力なくなるぞ!」
そしてランニングが終わった後は剣の修行だ。
ここはヴァルグレイ王国という国にある田舎の村で、冒険者ギルドが無い為、冒険者も滅多に来ない。
その為、この世界に蔓延る魔物という脅威に対して村人達で自衛をしなければならない。
という事もあって絶対という訳では無いが、この村に産まれた殆どの男の子はカールから剣を習う事が多かった。
「よし、行くぞ」
カールはこの村唯一の元冒険者で、7段階中の上から4番目であるCランクだった。
冒険者としてはCランクが1番多いらしく、一般的な強さだが、この村ではカールが1番強かった。
「ふっ!」
カールとレイショーが向かい合い、先に動き出したのはカールだった!
「はっ!」
カールが慣れた手つきで胴を狙って木剣を横薙ぎに振るう!
レイショーはそれを確認し1歩後ろに引いて躱す!
「まだまだあ!」
カールは習い始めたばかりの子供を相手にしている雰囲気ではなく、至極真剣に攻めている。
元冒険者の父と剣を握り始めて数ヶ月の子供、普通に考えれば話にならない。
しかし、レイショーは違った。
「うおw」
連撃を躱し、受け流し、防御しながら、熱くなっている父に対して冷笑をする余裕さえある。
それどころかその合間に反撃を繰り出す!
「ッッ!?」
ギリギリのところでカールが受け流すも体勢を崩す。
ここまでかと思ったが、レイショーの追撃は無かった。
「くっ・・・・・・はぁ俺の負けだ。強いなレイショー」
そう、たった数ヶ月でレイショーはカールを越したのだった。
それも冷笑してチャンスを攻めなくとも、絶対に負けないという自信を持つほど余裕がある。
度を越した剣の才能だ。
圧倒的だった。
言葉を話し始めたのも早く、そしてどこかこの世の全てに対して冷めたように見ているように両親は感じていた。
「今日はもう終わろうか」
「・・・・・・」
レイショーは基本的に冷笑出来るときしか話さないため、両親も少し困っていた。
「レイショー、魔法の練習してみるか?」
「レイちゃんならすぐにマスター出来るよ! 1回だけでもやってみよう!?」
「うおw熱すぎw」
カールと、特にソフィからの熱い要望もありレイショーは魔法の練習も始めることになった。
それに当たって、たまたまこの村の隣に来ていた冒険者パーティーの魔法使いの冒険者に頼み込んだところ、あっさりと許可を貰った。
「ガルドさん、ありがとうございます。とても助かります」
「いえいえ、それに教えるのは僕じゃないですし、感謝なら彼女に」
カールが頭下げる相手はガルドという、今回教えてもらう魔法使いの所属しているパーティーのリーダーの優男だった。
パーティーの全員が20歳前半という若々しいパーティーであり、そしてこの歳で全員がBランクに到達している、王都で今話題の新進気鋭のパーティーだ。
「リーナさん、よろしくお願いしますね」
「任せなさい!」
魔法使いの名はリーナと言う。
他には弓使いでケモ耳と尻尾の生えた獣人のカナ。
槍を持っているオラオラ系のイカしたにいちゃんをグレンという。
カ彼らはガルド、リーナ、カナ、グレンの4人でパーティーを組んでいた。
「それじゃあ始めるわよ」
そう言ってリーナは慣れたように詠唱を言い始めた。
この世界の魔法は、詠唱を唱え魔法名を言うことで発動される。
「蒼き氷よ、我が手に宿れ。鋭き槍となりて敵を貫け!
氷結旋槍!!」
リーナの杖の先から1本の氷の槍が出現し、木に目掛けて一気に射出され太い幹を簡単に貫通させた。
「どう? あんたもこれくらい練習したら簡単に出来るよう、に・・・・・・」
リーナが胸を張り自慢げにしながらレイショーの方を見ると言葉に詰まった。
リーナだけでなく、それを見ていたカールはソフィ、ガルド達全員が固まった。
「うおw努力とか嫌いなんでw」
リーナが振り向いたとほぼ同時にレイショーは氷の槍を生成しており、同じく木に向けて射出していた。
違うことと言えば、その数とスピードだ。
レイショーは5本同時に生成し、そのスピードはリーナの倍以上もあった。
そして何より異常なことが・・・・・・。
「あんた、詠唱してないわよね・・・・・・? 私聞こえなかったわよ?」
そう、無詠唱だった。
この中で唯一の魔法使いであるリーナは驚きのあまり目を離せなかった。
「うおwこんなの出す為だけに無駄に唱えてるとか無駄なんでw」
レイショーの馬鹿にした言葉が届かないほど今起きたことは前代未聞だった。
それからもリーナが見せていく魔法の全てレイショーは無詠唱でやってのけた。
全員の口が塞がらなかった。
「うおw余裕すぎw」
初めてだと言うのに魔力も一切尽きない。
あまりに理解不能な現状に誰もが思考停止していた。
という事で、レイショーはもう魔法を使えることになったので彼らは用済みとなり、また違う場所へと冒険に行った。
「お前は天才だ!」
「流石うちの子ね! まさか魔法も使えるなんて! 頑張れば王都で騎士にでもなれるんじゃない!?」
「うおw頑張るとかいいしwこの村で母さん達手伝う方が楽だしw」
「まぁなんていい子なの!? うん! 好きなだけここに居ていいわよ!!」
カールもソフィも極度な親バカだったが、レイショーはそれが心地よかった。
「きゃー!!」
ある日レイショーが村を散歩していると森の方から悲鳴が聞こえた。
頑張らない程度で急いで行くと、魔物に襲われていた女の子と男の子がいた。
年齢はレイショーと一緒くらいで、女の子の方は腰が抜けて動けないのか、男の子は庇うように前に出てナイフを構えていた。
「レナ! そこにいてろ!」
「リューク!」
リュークと呼ばれた男の子は狼と対峙していた。
先に狼が動き出し、一気に距離を詰める!
「うおおおお!!」
リュークは雄叫びを上げながら全力でナイフを狼に突き刺す!
キャイン! と狼が鳴いたが、同時にリュークも飛びかかられて首を噛みつかれそうになったところで腕を前に出して噛みつかさせる!
「ぐああああ!! うっ! ああッッ!」
必死に痛みに耐えながらもがくリュークだが、彼より体格の大きい狼を退かすことは出来なかった。
「早く逃げろお! 俺が食われる前に!」
リュークの声が震えていたが、必死に絞り出して掠れていた。
「うおwそれ無駄死にすぎw」
「「!?」」
唐突な冷笑が聞こえたと思ったらリュークの上から狼が吹っ飛んでいった。
「お、お前は!?」
「うおwそんな真面目な顔でこっち見んなwレイショーだしw」
「レイショー、レイショー・・・・・・」
アホみたいな名前をレナとリュークは真剣な顔で何度も呟いた。
リュークはレイショーの拳に血がびっしりと着いていたのを見た。
「レイショー、助かっ、!! まだ来てる! それもこんなに!」
リュークが感謝を示そうとしていると、奥からゾロゾロとさらに多くの狼が現れた。
「も、もう無理だ・・・・・俺が時間を稼ぐから。レイショー、レナを連れて逃げてくれっ!」
リュークは噛みつかれて傷ついた腕でナイフを握り、立ち向かおうとする。
「リューク! 無茶だよ!」
レナはリュークの死を覚悟して涙を溢れさせながら必死に彼を止めようとしていた。
そしてレイショーは、それを見てとても満足そうに冷笑した。
「うおうおうおうおうおwwwww熱くなりすぎてうおw」
もはや意味の分からないことを言いながらとても楽しそうにリュークの前に出る。
「なっ!? レイショー!? 何やってんだ!」
「うおすぎてうおw本当に無駄死に過ぎてうおwお前が全力出すより俺が適当にやった方が早くてうおw」
もはや語尾が「うおw」になってしまったレイショーは腕を前に突き出した。
「うおw」
そう言ってレイショーは数十本、いや数百本の槍を生成した。
それは氷や火、土や雷など様々な属性で生成されており、そしてそれは一斉に掃射された!
「・・・・・・す、すっげぇ」
その光景を見ていたリュークは目を輝かやかせ、レナはあまりの色とりどりの魔法がぶつかりあって花火のようになっていた光景の虜になっていた。
「あ、ありがとうレイショー・・・・・・めっちゃ助かった!」
「うん! 本当にカッコよかったよ!!」
「うおwそんな真正面から感謝伝えるなしw」
レイショーは内心少し照れながら返事をした。
「なぁレイショー、俺にもそれ教えてくれよ!」
「あーずるい! 私も私も!! 頑張れば出来るようになるかなぁ?」
リュークのお願いにレナもはいはい!と手を挙げた。
「うおwこんなん誰でも出来るしwどうせ暇だから教えてやるしw」
「よっしゃあー!」
「やったー!」
こうしてレイショーは異世界で初めての友達が出来た。
その後数十年間、その生涯が幕を閉じるまで一度もレイショーは村を出なかったと言う。
彼が生きている間、ヴァルグレイ王国の田舎の村に無詠唱魔法の使い手がいると言う噂が流れたが、すぐに眉唾物だと忘れ去られることとなった。
しかしレイショーは死ぬ最後の日まで、冷笑をしながら楽しく人生を真っ当出来たであろう。
「うおw」
これが彼の最期の言葉だった。
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